有名大学も次々にハマる悪質論文誌「ハゲタカジャーナル」の罠

LIMO / 2019年7月19日 20時30分

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有名大学も次々にハマる悪質論文誌「ハゲタカジャーナル」の罠

ビジネス、今日のひとネタ

「ハゲタカジャーナル」と呼ばれる、カネさえ払えばなんでも論文を掲載する悪質な学術誌をご存じでしょうか?

正式な査読や編集が施されていない論文が掲載されるため、科学の発展を妨げるものとして、その悪徳ぶりがさまざまなメディアで話題になっています。日本のいわゆる有名大学でも、こうした粗悪な論文誌に数十本、ときには100本以上の論文を寄稿している大学さえあり、見過ごせないレベルの問題になっているようなのです。

ハゲタカジャーナルとは?

ハゲタカジャーナルとは、研究者によって投稿された論文の原稿が、正式な査読や編集がほとんど施されることなくそのまま掲載されてしまうような、形だけの学術誌のことです。

別名を「捕食学術誌」ともいい、ハゲタカジャーナルを出版する出版社のことを「捕食出版社」と呼んだりもします。

こうした学術誌を出版している出版社は、論文を掲載する際に執筆者が支払う論文掲載料によって利益を得ています。論文掲載料は研究費から支払われることが多いため、研究者は自腹を切りません。そして、正式な査読や編集過程を経ないため、カネさえ払えば論文は簡単に掲載されます。

そのため、研究者は手軽に自身の「論文発表件数」を稼ぐことができ、出版社にしても出版の際にかかる手間や費用が大きくないので利益率も高いのです。一見すると「Win-Win」の関係ではあります。

厳しい研究の世界

科学の世界は、結果主義です。多くの研究者は「研究成果を挙げて研究費を得なければならない」という重圧に、日々さらされています。

「Publish or Perish」というフレーズをご存じでしょうか。「論文を発表しない研究者は消える」という意味で、論文を発表して成果を挙げなければ生きていけない科学業界の厳しさが、このフレーズに現れています。

このように苛烈な生存競争の下で生き残っていくには、やはり論文を発表し続けるしかありません。そうなったとき、手軽に論文を発表することができるハゲタカジャーナルは、やはり都合が良いのです。

なんでハゲタカジャーナルがダメなの?

では、ハゲタカジャーナルはどうしてダメなのでしょうか。それを知るためには、研究者や論文の本来の姿を知らなければなりません。

科学とは、研究結果の積み重ねによって進歩していきます。そのためには、それぞれの研究結果が正確である必要があります。誤った研究結果が正しいとされてしまっては、科学は正しい方向に進歩していきません。

その研究結果をまとめて発表するものが論文です。論文を公表しないことには、研究結果が知られることはありません。当然、研究結果の積み重ねに貢献することもないのです。

そして、科学の正しい発展のために、誤った論文が発表されてしまうことを防ぐ仕組みが、「査読」というものです。査読過程を経ることによって、論文における誤りの有無や内容の適否が判断されるのです、

ハゲタカジャーナルがどうしてよくないのかは、もう明白ですね。査読を経ることなく研究論文をハゲタカジャーナルに掲載することは、誤った研究や本来は公表する価値のない研究を公表してしまうことになります。それを許してしまうと、科学の信頼性や健全性、再現性を根底から覆してしまうことになるのです。

ハゲタカジャーナルをまとめたリスト、その名も「Beall’s List」

「公表していないメールアドレスに論文掲載の勧誘メールが届いた」
「頻繁に論文を送れというメールが送られてくる。精査しないといけない」
「これが噂のハゲタカジャーナルなのか・・・?」

このような声が、研究者とみられる人たちから上がっています。一見まともそうな出版社から、まともそうなジャーナルへの論文の投稿を勧誘するメールが研究者に届きます。しかし、実際には、これらの多くは捕食出版社からの営業活動なのです。ここでうっかり捕食出版社の発行物に論文を投稿してしまったら、自分の研究者としての信頼を失ってしまうことになります。

そういったときに、まともな出版社と捕食出版社とを見分けるために活用できるツールとして、「Beall’s List」というものがあります。Beall’s Listとは、「ハゲタカ」とみられる捕食出版社のブラックリストです。

聞いたことのない名前の出版社から論文投稿の勧誘メールが届いた際は、多くのまじめな科学者は、このBeall’s Listを確認するようにしているはずです。

ハゲタカに食われた日本の大学

日本の研究者でも、ハゲタカジャーナルに論文を投稿してしまうことが数多くあります。

2018年には、中国の出版社によって管理されている、ハゲタカジャーナルとみられるインターネットの学術雑誌に日本関係の論文が5076本も投稿されていたと、毎日新聞が報じています。うち3972本が大学や研究機関に所属する研究者が投稿したものであり、有名大学からも数多くの論文が掲載されています。

ランキングによると、1位が九州大学で147本、2位が東京大学で132本、3位が大阪大学で107本の論文が掲載されているそうです。

各大学も注意喚起

先ほども述べた通り、ハゲタカジャーナルと呼ばれる学術誌に論文を投稿することは、研究者自身の信頼を損なうだけでなく、科学の健全性を根底から覆しかねない行為です。そのため、熊本大学や京都大学をはじめとする国内の大学も注意喚起を行っています。

すべての研究者が信頼のおける学術誌に論文を掲載することで、科学の発展に貢献してくれることを願うばかりですが、一部の研究者や一般の方々は、ハゲタカジャーナルの存在をよくわかっていなかったり、存在は知っていても注意することなく論文を投稿してしまったりすることがあります。

このような実態を知り、正しい科学の発展や、より正確な情報が提供される世の中のために、さらなる注意喚起を行っていくべきでしょう。

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