「ミルク育児っていけないこと!?」愛情=苦労することへの疑問
LIMO / 2019年7月22日 10時45分
「ミルク育児っていけないこと!?」愛情=苦労することへの疑問
「道を選ぶということは、必ずしも歩きやすい安全な道を選ぶってことじゃないんだぞ」。これは漫画ドラえもんの「右か左か人生コース」というエピソードに出てくる名言です。
確かに楽で安全な道ばかり選んでしまうと、最終的に大きなしわ寄せがきてしまいます。あえて困難でしんどい道を選ぶことは大切。しかし、子育てに関しては、どうでしょうか…?
■楽をするのはいけないこと?
先日、筆者の古くからの友人が出産しました。長年不妊治療をした末の待望の女の子。彼女が幸せそうに出産報告をしてくれたとき、我がことのように嬉しくなったのを覚えています。赤ちゃんが3ヶ月になったころ、友人が子ども連れで我が家に遊びにきてくれました。かわいい赤ちゃんを抱っこさせてもらいながら、近況報告や思い出話に花を咲かせていると、赤ちゃんのミルクの話になったのです。
すると、今まで笑顔で話していた彼女の顔がみるみる暗くなり、こう呟きました。「私、楽してるんだって」。話を詳しく聞いてみるとこういうことでした。友人は、どうしても母乳が出なかったため、赤ちゃんにミルクを飲ませています。そのことを何気なく別の友人に話すと、「え?ミルクなの?楽しちゃって」と切り捨てられたのだとか。
その友人は、母乳育児推奨の病院で出産。母乳が出るまでひたすら赤ちゃんに吸わせたり、辛いおっぱいマッサージを頑張ったり、食べ物に気を使ったり…と非常に苦労したのだとか。
「おっぱいをあげながら、何度も泣いたけど、赤ちゃんには母乳が一番だと思ったから頑張った。ミルクなんてあげようって、思わなかった!」とまで言われた彼女は、ミルクで育てていることに罪悪感を覚えてしまいました。「何でよ!ミルクだって大変よ。外出するときの荷物が増えたり、調乳や哺乳瓶の消毒に手間がかかったり。それはそれで苦労があるよ」と筆者は憤慨しつつ、ふと「楽すること、の何がいけないのだろう…?」と思ったのです。
■愛情=どれだけ苦労したか、ではない
24時間365日稼働しなければならない子育て期間。どうしても疲労やストレスは溜まってしまいます。
母親だって人間、心に余裕がなくなってしまうと、最愛の子どもの存在が、しんどくなってしまう瞬間もあるのです。
いかにそんな瞬間を無くすか、ストレスや疲労を蓄積させずに子育てするか…。そのときに重要なのが「どこで手を抜き、どこで頑張るか」ということ。しかし、なぜか「子育てで手を抜くことは許されない」と信じ込み、世のお母さんを監視している人たちがいるのです。
レトルトの離乳食を購入したら「手作りしないで市販のものを使って楽をして!」。夫や両親に育児を協力してもらった「ひとりでできることを人任せにするなんて楽をして」。二言目には「楽をして!」とお母さんたちを糾弾する。
なぜ「楽をする」ことがいけないのでしょう?子育てで重要なことは、「子どもを無事に元気に育てること」であって、「お母さんがしんどい思いをすること」ではないはずです。昔に比べると、今は子育てがずいぶんしやすい環境になってきた、昔の人はもっとしんどい思いをして子どもを元気に育ててきた…。それは確かに事実なのでしょう。でも、それは子育てに関してだけではないはずです。私たちを取り巻く生活環境全てが、昔と比べて随分便利になったはず。
それなのに、なぜか子育てに関して「昔の方が大変だったんだから」という人が多いこと。昔のお母さんの方が大変だったんだから、今のお母さんも苦労するべき、昔のお母さんの方が苦労したんだから、今のお母さんは子育ての愚痴を言うべきではない。というのは、少々乱暴過ぎないでしょうか?
確かに、他の人に迷惑をかけたり、しんどい思いをさせたりしてまで自分が楽してしまうのはいただけません。
しかし、お母さんがストレスや疲労を蓄積させない子育てをすること、それは「楽をして」ではなく「工夫をして」いるのではないでしょうか?
自分が笑顔で子育てするために、疲労を蓄積させてしまい、親子ともに共倒れになってしまわないように、工夫できるところは工夫して、頼れるところは頼る。これは決して間違ってはいないと思うのです。そして、冒頭に紹介した筆者の友人のように、世の中には「やむにやまれぬ事情」がある人もいる、ということを知っておいてほしいと切に願います。
■楽をしたっていいじゃない
子育ては母親の仕事である、というのなら、仕事を効率化するのはなんら問題ないはず。むしろ、「できるお母さんね」と褒めてもらってもいいくらい。子どもが笑顔で元気でいるなら、自分が惜しみない愛情を我が子に与えられているのなら、楽をすること上等。
そう、長い子育て期間のほんの一部を切り取って「楽をしている」「手を抜いている」なんて言う人の声に心を痛める必要はないのです。
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