メガネスーパー復活劇、価格破壊で疲弊した事業のV字回復を「ストック思考」で解読
LIMO / 2019年7月29日 20時20分
メガネスーパー復活劇、価格破壊で疲弊した事業のV字回復を「ストック思考」で解読
成長し続けるビジネスの仕組みである「ストックビジネス」についてお伝えしていく本シリーズ。今回は不振に陥った物販ビジネスを劇的に復活させた事例を紹介します。
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先日、品川で税理士事務所を20年やっているベテラン税理士さんと会ったとき、こんな話が出ました。
「顧問をやっていた物販のお客さんは全部だめになりました。今はほとんどがストックビジネスのお客様です」
アパートマンション投資の大家さんとのコネクションで拡大してきた有名な先生ですが、それにしてもそこまではっきり言われると驚きます。
「モノが売れなくなりコト消費へ」と言われてはきましたが、物販業はいよいよ厳しい時代に入っているようです。そこで今回は、売れなくなった物販事業をV字回復させたメガネスーパーの事例から、ストックビジネスのエッセンスを読み解いていきます。
ストック思考で疲弊した事業をV字回復!
皆さんもメガネスーパーの名前はご存知だと思いますが、最盛期には540店舗380億円の規模を誇った業界大手の一角です。しかし、まさに売れなくなる時代がやって来ます。
10年ほど前から「JINS(ジンズ)」や「Zoff(ゾフ)」等のSPA(製造小売業)型の企業が、商品企画から生産、販売まで自社で管理することでコストを大幅に低減し、急成長しました。別料金が一般的だった眼鏡フレームとレンズをセットで1万円以下という圧倒的な安値で売り、若者を中心に顧客の心をつかんだのです。
それに対し、メガネスーパーなどの量販店は守勢に回ります。2008年4月期に営業赤字に転落し、11年4月期には債務超過に陥りました。抜本的な再建に向けて2013年に星﨑尚彦社長が就任し、V字回復を果たすのですが、その手法はまさにモノ消費からコト消費への転換であり、その着眼点にはストックビジネス構築へのヒントが隠されています。
カギとなる「再定義」とはどういうことか?
価格破壊が起きたメガネ業界の再建を任されたとしたら、あなたはどう考えますか?
その時の世の流れが1万円以下への価格破壊なら、苦しいことはわかっていてもつい同じ土俵に入っていくと思います。ただしそれでは延命程度で、いずれ耐えられなくなる可能性が高い。同じような悩みを抱えている経営者はたくさんいると思います。債務超過で限られた時間の中での経営判断・・・悩みます。
ここでのカギは「再定義」です。長期的にも市場が拡大する中高年の市場とそこへのアプローチの方法は何か? それを考えていくわけです。
ここではストックビジネスの構築の手順に沿って、メガネスーパーのケースを考えてみましょう。
1.「長期的視点」で成長分野を見つける
2. メガネ店の「本質的価値」を明確にする
3. お客様が求める「継続的価値」にフォーカスする
4. その「継続的価値」を提供するための新たなアプローチ法を作る
5.「ストック思考」を使い、今の商品サービスを一言で言える新たなコンセプトに変える
これで、ストックビジネスを生み出す最小ユニットが完成するので、ここからはチューニングです。
6. リピートする仕組みを入れる
7.「アイドル」(使っていない、または非効率な無駄なもの)を使い効率を上げる
このプロセスを通して、既存の自社の強みを「再定義」することになります。
では、実際のメガネスーパーの復活劇はどういったものだったのでしょうか。
まず企業コンセプトを眼鏡販売店から「アイケアカンパニー」に変えました。メガネの販売店から「お客様のアイケア(目の健康)を担保する場所」に変えたのは、ターゲットを中高年以上に絞り込み、長期的視点でお客様の求める継続的価値にフォーカスしています。「有料で行う、1時間かける充実した検眼」とう独自のサービスも、こうしたコンセプトの変更から生まれました。
一度自信をなくした社員を奮い立たせるという経営者にとって避けて通れない課題も、こうしたわかりやすい新コンセプトを示すことで動き出しました。会社というのものが経営者の考え一つでこうも変わるのかという好例だと思います。
メガネスーパーの復活をストック思考で整理すると?
一連の流れをストック思考で説明してみましょう。
眼鏡の小売店というフローモデルを、ストックビジネスに変えなければ継続的な事業拡大はできません。そこで病気になると通院し、治ると行かなくなる病院に対して、必ず定期的に行く人間ドックや定期健診の価値の違いは何かと考えてみてください。
年齢が高くなると気になりだし、ずーっと続く需要は何でしょう? そう「健康寿命」です「健康寿命」なら何歳になっても求め続けられます。
私はこう考えます、アイケアカンパニー宣言によって目の健康寿命を気遣うことに対して何ができるかという発想が生まれたのです。その宣言によってコンセプトが変われば視点が変わります。そうして生まれた「有料で行う、1時間かける充実した検眼」はまさに人間ドック、つまり高齢者になればなるほど増大する「健康不安というニーズ」を捉えることができます。
そして顧客としての継続率を上げるために接触頻度を高めています。お店で行う「目の疲れを癒すマッサージ」や「老人ホーム等の施設訪問での無料サービス」がまさにそうですね。平日と土日の忙しさの差を考えれば、平日に施設訪問を行えば未稼働のリソース部分である平日のアイドル(未稼働なもの)を活かすことにもなります。
つまりストックビジネスを構築するセオリーである「長期的視点」「コンセプトのリノベーション」「接触頻度で切れない糸」「アイドルを活かす」というように、落日の物販業の経営改善と難しく考えずに手順を踏んでストック思考を使えば、あなたでもすぐ応用できます。
そのほかにも保険の活用などストックビジネスになる要素のオンパレードですが、本記事ではここまでとします。なお、この件については、ストックビジネスアカデミーの「事例解読レポート※」でそれを実行する背景などを詳細に説明しており、読むだけで企業が抱える課題が見えてくる内容になっています。
筆者が携わるストックビジネスアカデミー(https://otaketakahiro.com/jissen)は、そこに集う仲間とお互いに気づきを与え合う経営者コミュニティーです。そこでは会員に思考のヒントを送り届けるために、毎月ストック思考をフル活用して事例解読をしています。ご興味のある方は一度覗いてみてください。
※事例解読レポートはストックビジネスアカデミーの会員限定コンテンツです。
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