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放火による火災は他人事でないことを示す統計

LIMO / 2019年7月26日 20時45分

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放火による火災は他人事でないことを示す統計

京アニの大惨事に祈りを…

京都アニメーションで起きた放火殺人事件、平成期以降で最悪の大惨事

既にご存知の通り、7月18日に京都アニメーション第1スタジオで発生した放火殺人事件は、死者34名、負傷者34名を出す大惨事となりました。これは、放火事件としては平成期以降最多の死者数となります。また、負傷者数には重篤者も少なくないようで、死者はさらに増加する可能性があります。

改めて、亡くなられた方々のご冥福をお祈りし、負傷された方々の1日も早い回復をお祈り申し上げます。

なお、放火犯人と見られる容疑者(既に逮捕)も全身火傷の重体であり、集中治療を施されている模様です。このような悲惨な事件を起こした犯人を許すことは到底できませんが、放火の動機や経緯などを解明するために、そして、34人もの命を奪った罪の裁きを受けさせるためにも、治療の成功が待たれます。

亡くなられた34人のためにも、真相究明が最優先だと考えます。

平成28年まで20年間にわたり火災発生原因の第1位は「放火」

ところで、今回のような大量殺戮事件は例外としても、放火による火災は決して他人事ではありません。それどころか、いつ身の回りで起きても不思議ではない状況なのです。まずは日本国内の火災状況を見てみましょう。

総務省消防庁が発行する「平成30年版 消防白書」によれば、火災の全件数は平成19年以降概ね減少傾向を辿っています。平成19年に54,582件だった火災は、平成28年には36,831件と約3分の2へ減少しました。残念ながら、平成29年は39,373件(前年比+6.9%増)へ増えてしまいましたが、この10年間での火災件数減少の流れに変わりはありません。

この要因として、防火意識の高まりに加え、喫煙者の減少、火災報知機や消火器の普及、建物の耐火構造の進化などが挙げられます。

その中で注目したいのが喫煙者の減少です。実は、一昔前まで、火災の発生原因の第1位は断トツで「たばこ」でした。特に、いわゆる“寝たばこ”が原因で多くの火災を引き起こしてきた経緯があります。しかし、喫煙者の減少等に伴い、平成9年から平成28年までの20年間、「たばこ」は発生原因の1位ではありませんでした。

そして、その「たばこ」に代わって20年間1位だったのが「放火」なのです。また、この「放火」とは別枠で「放火の疑い」という発生原因も概ね4~6位となっており、「放火」と「放火の疑い」を合わせると、全体の約15%に上っています。なお、平成29年の発生原因は「たばこ」が21年ぶりに1位となり、「放火」は2位でした。しかし、「放火+放火の疑い」が「たばこ」を大きく上回っている状況に変わりはありません。

平成29年の火災件数と発生原因(カッコ内は構成比)

■火災件数:39,373件

第1位:たばこ(3,712件、9.4%)

第2位:放火(3,528件、9.0%)

第3位:こんろ(3,032件、7.7%)

第5位:放火の疑い(2,305件、5.9%)

参考:放火+放火の疑い(5,833件、14.8%)

いつ起きても不思議でない放火による火災、それを防ぐ施策には限界も

このように、火災件数は減少傾向にあるものの、少し大げさに言えば、放火による火災はいつ起きても不思議ではないのです。

では、放火を防ぐにはどうしたらいいでしょうか?

これは、防犯パトロールを強化したり、防火装置(監視カメラ含む)を増強させたりするしかありません。しかし、こうした対策には人員面やコスト面で限界があることも事実です。特に、放火が多発する時間帯である深夜にパトロールの人員を増やすことは難しく、そもそも、そのパトロールを(警察以外の)誰がやるのか?という問題があります。

火災保険の多くの場合は放火による火災にも適用される

やはり、放火も含めて、実際に火災が起きた時のこと、具体的には火災保険への加入を考える必要がありそうです。火災保険は損害保険の一種で、火災、落雷や風水害などの事故によって生じた建物や家財の損害を補償する保険です。

ここで補償対象となる「建物」は建屋本体、車庫、物置、塀などを指し、「家財」とは家具、家電製品、衣料などを指します。その火災保険の種類によって、「建物」のみの補償、「家財」のみの補償、両方の補償に分かれますが、当然、保険料が異なってきます。また、「家財」の補償対象には例外対象が多くあるので注意が必要です(例:宝石、貴金属、高価な絵画等)。

そして、ほとんどの火災保険では、重大な過失がない限り、今回のような放火による火災も補償対象になります。なお、ここでいう“重大な過失”とは、長期間にわたって建物を無施錠で空き家として放置していた等が該当しますが(注:過去の判例)、多くの場合はこうした重大過失となることはありません。

仮に、放火犯に損害賠償請求しても、補償能力がなければどうにもならないのが実情です。その時に効果があるのが火災保険ということでしょう。

また、火災保険はその補償範囲が広い事でも有用です。多くの火災保険では、火災以外にも落雷や風水災などの自然災害、あるいは盗難・破損・爆発などによる被害も補償範囲に含まれています。こうした保険の性格により、現在は持ち家の場合、火災保険の加入率は概ね85%程度に達しているようです。

なお、賃貸住宅の場合は、所有者(大家さん)が「建物」補償の火災保険に加入しているケースがほとんどであり、賃借者は「家財」補償の火災保険に加入するかどうか選択することになります。

“もらい火災”の場合、相手に損害賠償請求できないという理不尽さ

火災保険が効果を発揮するケースで代表的なのは、周りの火災に巻き込まれるケース、いわゆる“もらい火災”です。実は、“もらい火災”の場合、出火先(火災を起こした相手)に“重大な過失”がない場合、相手側に損害補償を請求できません。

“まさか、そんな理不尽な!”と思う人が多いかもしれませんが、これは「失火責任法」という法律に基づいています。現実的に、出火相手の“重大な過失”を100%認定するのは困難と言われています。こうした納得し切れない場合でも、自らが火災保険に加入していれば安心です。

一方、心配な点があるとすれば、火災保険では「地震」による損害(地震によって発生した津波・噴火で受けた霜害)は補償の対象外になっていることです。この地震のリスクに備えるための保険としては「地震保険」があります。地震保険は、火災保険とセットでしか加入できないので、火災保険を検討するときに一緒に考えてみるとよいでしょう。

なお、東日本大震災以降、この地震保険への加入が大幅に増加しています。

火災保険への加入は一考の価値あり

いかがでしょうか。筆者は決して火災保険をゴリ押しするつもりはありません。しかし、クルマを運転するほぼ全ての人が自動車保険(注:自賠責保険以外の任意保険)に加入するのと同様に、持ち家・借家を問わず、火災保険への加入を検討することを考えてみてもいいのではないでしょうか。

最後にもう一度、今回のような放火火災は決して他人事ではないのです。

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