グダグダの吉本興業、前近代的体質から脱皮するために上場維持すべきだったのでは?
LIMO / 2019年8月4日 19時45分
グダグダの吉本興業、前近代的体質から脱皮するために上場維持すべきだったのでは?
非上場会社として家族的な経営を行ってきた吉本興業。闇営業や反社会勢力との金銭授受疑惑から岡本昭彦社長の記者会見に至る一連の流れの中で、図らずも同社の家族経営の限界が見えることになりました。
大阪万博にも関与するなど事業意欲旺盛な吉本ですが、同社は2010年に上場廃止したことで近代的なエンタメビジネスの企業に脱皮する芽を自ら摘んでしまったのかもしれません。
記者会見で明るみに出た負の側面
反社会的勢力からの金銭授受疑惑で契約解除となった宮迫博之、そして田村亮両名の記者会見。その後の岡本社長の会見を機に、吉本が抱える負の側面が明るみに出ています。
吉本自体は非上場会社です。しかし同社が関連するプロジェクトには官民ファンドであるクールジャパン支援機構から多額の資金が投入され、また大阪万博にも関与しているため、その経営体質には公正取引委員会などからも物言いがつく事態となっています。
2010年にTOBで上場廃止
吉本興業(正式には吉本興業ホールディングス)はかつて上場していました。しかし、2009年9月に元ソニー会長の出井伸之氏が代表を務める投資会社による株式公開買い付け(TOB)を受け入れ、2010年に上場廃止(大阪証券取引所、東京証券取引所)となっています。
日本の芸能史は裏社会との関わり抜きに語ることができないと言われます。吉本が上場していた間も、そうした論点は所属芸人の不祥事などが発生するたびに浮上していました。そして最終的に同社は上場廃止を決断しています。
また、今回の騒動では吉本興業と民放各局との関係にも注目が集まりました。というのも、上場廃止後に各局が同社の株主となり、株式を通じて持ちつ持たれつの関係を構築するに至っているからです。
上場廃止で経営近代化の芽を自ら摘んだ?
芸能界ではかつてはホリプロも上場していましたが、経営陣による買収(MBO)により2011年に上場廃止となっています。芸能プロダクションの上場については、裏社会との関係断絶や芸能人との契約関係明確化など多くの論点があったものの、最終的にはホリプロも吉本も上場廃止という形でその議論に終止符を打ちました。
しかし総合的なエンタメ企業を志向する吉本にとっては、経営の近代化の芽を非上場化により自ら摘んでしまったと言えなくもありません。上場会社であれば、株式市場を通じたガバナンスが働きます。今回の騒動の場合、仮に吉本が上場していれば株価の暴落が予想され、経営陣は株主や東証などから厳しく責任を問われていることでしょう。
しかし非上場で、しかも取引先のテレビ局が株主であり、持ちつ持たれつの関係にある現在の吉本に対し、外部からガバナンスやコンプライアンス遵守を徹底させる手段は限られます。
今回の件を想定していたわけではないでしょうが、非上場化は見事に作戦が当たった形です。しかし吉本の将来を考えた時、それが本当に吉となるのかどうか…。芸人との契約書がないのに契約解除という非常に不思議な状況は、上場企業であればありえない事態です。契約書の問題一つとっても吉本は、経営の近代化が大きく遅れていると言わざるをえません。
一方、仮に上場を維持していたとしたら、今回の騒動はいわゆる興業からスタートした吉本が、真の意味でのエンタメビジネス企業に脱皮する機会となりえたのではないでしょうか。
今後、徹底的な経営刷新は図れるのか?
大阪の芝居小屋(主に寄席)からスタートした吉本ですが、今や所属芸人をテレビで見ない日はなく、海外進出や国家レベルのプロジェクトにも関与するなど、かつてとは比べものにならないほど事業規模が大きくなっています。
そんな中、今回の騒動では家族的経営のまま置き去りになっていた矛盾点が公の目にさらされました。また吉本が大きくなったのと同時に、世の中もかつてとは変わっています。吉本が上場廃止してから約10年が経過していますが、その10年間でもコンプライアンスの重視等、時代は変化しています。
所属芸人との契約書の締結方針を打ち出す等、吉本側にも経営改善について一定の努力は見られますが、今回の騒動を機に非上場企業のまま近代的な経営に向け舵を切ることができるのでしょうか。それとも大山鳴動して鼠一匹となり結局は何も変わらないまま従来の経営風土が続くのか、今後の同社の行方が注目されます。
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