こんな子育て支援が理想的? 親子の健康と暮らしを支える「プランケット」とは

LIMO / 2019年8月19日 20時15分

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こんな子育て支援が理想的? 親子の健康と暮らしを支える「プランケット」とは

ニュージーランド子育て事情

無事学校を卒業し、仕事に就き、人生の伴侶も得て…と、さまざまな経験を経た一人前の大人とはいえ、ひとたび親になってみれば、わからないことだらけ。子育てには自分が積んできた社会経験が通用しないことに愕然とすることも多々あります。

インターネット上にはあふれるほどの情報がありますが、その中から自分が必要なものだけを探し当てるのは大変です。子育てをしていれば、急に「これでいいのかしら?」と不安になることもあります。

そんな時、医学的にも社会的にも赤ちゃんと親のことを理解している相談先があれば、と思うのは自然なこと。ニュージーランドには母子のこうしたニーズにこたえたサービスを行う「プランケット」という組織があります。生後1カ月から5歳までの子どもと家族の健康と幸せをサポートしています。

子どものいる家族全体が支援の対象

プランケットは、「人生最初の1,000日間が、人の生涯を左右する」というビジョンのもと、全国規模で運営されています。創立は1907年。以後現在に至るまで、ニュージーランドの子どもたちの面倒を見ています。

プランケットのサービスを受けて育った赤ちゃんのことを「プランケット・ベビー」と呼びます。国内で生まれた新生児のうち、プランケット・ベビーが占める割合は90%超にも上ります。見かける子はどの子もプランケットの支援を受けたといっても過言ではありません。

他の親子と交流ができる「プレイグループ」の主催や、保護者のための教育、チャイルドシートに関する安全教育など、さまざまなサポートが用意されていますが、核となっているのは、「プランケット・ナース」による健診・相談サービスです。

このナースは、看護師の資格を持ち、プランケット独自の訓練を受けています。子どもが小学校にあがり、サービスが終了になるまでずっと同じナースが担当してくれます。健診・相談サービスを受ける際には、ナースに自宅に来てもらうことも、各所にあるセンターに行ってナースに会うこともできます。体重や頭囲、身長などの計測、各月齢・年齢に応じた成長をしているか、異常はないかなどを確認してくれます。

同時にナースは母親の身体的・精神的健康にも留意し、子どもが育つ環境や家族についても気を配ってくれます。同サービスは生後15カ月になるまでに約5回、その後は1年に1回行われます。面会と面会の間に相談したいことが出てきたら、担当のナースに連絡を取るか、年中無休で24時間受け付けているフリーダイヤルに電話します。

新しい町での「根っこ」を作ってくれたナース

筆者の娘もご多分にもれず、プランケット・ベビーです。娘が生後約2カ月の時に、新しい町に引っ越してきたこともあり、プランケットはとても頼りになる存在でした。

担当してくれたナースはクリスさんです。彼女は定期的に娘の成長を確認してくれただけではありません。歩くのが遅いのを心配した筆者を安心させてくれたのも、言葉が出るのが遅かった時に、言語療法士を手配してくれたのも彼女です。幼児になっても夜、通しで眠ってくれない時には、プランケット内に在籍する睡眠の専門家を紹介してもらいました。

それだけではありません。筆者家族が右も左もわからない新しい町に落ち着くのにずいぶん手を貸してくれました。クリスさんは、自分が担当する中で同じぐらいの年齢の子がいる親と連絡を取って筆者に引き合わせてくれたり、親のおしゃべり会ともいえるコーヒー・グループにも紹介してくれました。そして、クリスさんを通して知り合ったママ友がさらにママ友をよび、お互いの家を行き来したり、一緒に遊びに出かけたりするようになったのです。

クリスさんの話によれば、産後、うつ気味のお母さんがいれば話を聞いてあげたり、余計に時間を割いて、母親に赤ちゃんから離れ、リフレッシュする時間をあげたりするとのことでした。少しの間でも赤ちゃんを信頼できる人に任せ、距離を置くことで、気持ちの切り替えがつくことがあります。クリスさんのちょっとした気配りで、きっと多くの母親が助かっているだろうことは想像に難くありません。

筆者の目にはだんだんクリスさんが、家族を守ってくれる「スーパーウーマン」に見えてきたものでした。

ほかの組織との連携プレーで、安心できる育児環境を

筆者は引っ越す前、仕事でプランケット・ナースの取材をしたことがあります。その時感心したのは、プランケット・ナースが面倒を見るのは、子どもだけはないということ。ナースは子どもも親も含む家族全体に目を行き届かせているのです。

たとえば、家族の誰かがアルコールや薬物依存症だったり、家庭内暴力が日常化していたりしたら、子どもは健康で幸せな生活を送ることはできません。取材したナースは、プランケット・ナースはこうした家庭問題を解決する手助けをすることも少なくないと話してくれました。社会福祉関係の組織などと連携を取り、子どものいる家庭を支援するそうです。温かで思いやりにあふれる家族あってこそ、子どもは健康で幸せに育つことができるのです。

徹底して面倒を見てくれるプランケットのサービスを受けるための料金はというと、ほぼすべてにおいて無料です。慈善団体として、政府、民間、一般人の寄付で運営されているのです。

自分の子がプランケット・ベビーだった家族にとり、プランケットは世話になった愛着がある組織といえます。街角募金などを通じて、恩返しの寄付をする人も少なくありません。プランケットに支えられた家族が、今度はプランケットを支えるというわけです。こうやって、今までもそうだったようにプランケットの伝統は未来に引き継がれていくのです。

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