JR北海道はどうなる? 決算に見る赤字からの復活ストーリー
LIMO / 2019年8月26日 19時0分
JR北海道はどうなる? 決算に見る赤字からの復活ストーリー
平成28年度、29年度の続き、2019年4月に発表された平成30年度決算も当期純損失であった北海道旅客鉄道(JR北海道)。過去は北海道胆振東部地震の影響等があるとは言え、平成30年度も連結で当期純損失となり、3期連続100億円を超える赤字となりました。
また、2018年7月、国土交通省はJR会社法に基づきJR北海道への「監督命令」を発出。2年間で400億円近い支援行うことになりました。
JR北海道は年間90億円近い営業赤字の北海道新幹線を抱えながらも、地域の足としての役割も果たさざるを得ません。このまま常態化した赤字経営が続くのか、今後の行方が注目されます。決算をもとにJR北海道について見ていきましょう。
JR北海道の19年3月期は179億円の赤字
JR北海道の平成30年度(2019年3月期)の決算は、営業収益が1710億円、営業損失が418億円、経常損失が111億円、親会社株主に属する当期純損失が179億円となりました。
台風21号や震災により鉄道運輸収入の17億円減収、また連結全体では25億円の減収となりました。小売業での店舗の休業やホテル業での宿泊予約キャンセルなど、様々な影響によるものです。
またJR北海道単体の当期純損失は213億円、連結で179億円の赤字というのは先に見たとおりです。
一般的には、「3期連続の赤字会社は上場企業としては失格」とも言われます。もっとも、JR北海道は未上場企業ではありますが、道民や旅行者などの移動を担うインフラ企業という側面も有しています。
JR北海道は平成30年度の決算で当期純利益ベースで3期連続赤字となりました。地震などの天災で追い打ちをかけた格好ではあるものの、JR北海道は経営的に非常に厳しい立場に置かれていることが過去の決算から分かります。
北海道新幹線の巨額赤字も見過ごせない
既に人口減少社会はよく話題に上りますが、北海道は特にその影響を強く受けています。JR北海道の業績悪化もまた、沿線人口の減少の影響を抜きに語ることはできません。
しかしながら公的な交通手段としての役割も有するJRですから、人口減少で不採算路線となったからと言って簡単に廃線はできません。
更にJR北海道として重いのが、北海道新幹線の赤字です。JR北海道が開示している「線区別の収支」によれば、18年3月期の北海道新幹線は99億円の営業損失。17年3月期の54億円の赤字が拡大しています。
また北海道新幹線の並行在来線の赤字も2018年3月期には86億円発生しており、このようにJR北海道は北海道新幹線関連で150億円近い赤字を計上しています。
2018年3月期の数字だけ見れば、JR北海道の赤字は北海道新幹線の赤字がなければ少し「マシ」な状況とはいえるでしょう。平成29年度(2018年3月期)のJR北海道の単体の営業損失は525億円、また連結では416億円となっており、北海道新幹線を除いても収益の状況は厳しいですが、北海道新幹線は収益の足を引っ張っているといわれるのも仕方がないといえるでしょう。
こうしたJR北海道ですが、事実上の補助制度である「経営安定基金」により支えられています。JR北海道にとって新幹線の開業は悲願ではあったものの、民営化以降は収益においても厳しい現実も浮き彫りとなっています。
JR北海道のバランスシートは危機的なのか
では、ここでは改めて、JR北海の貸借対照表を見ていきましょう。平成30年度の決算では、総資産が1兆4300億円。その内訳として、経営安定基金が7685億円、固定資産が3631億円、機構特別債券が2200億円、流動資産が783億円となっています。
また、バランスシートの右側に目をやると、純資産は9208億円、1年以内返済長期借入金は71億円、長期借入金は1345億円となっています。借入金はあるものの、純資産の金額としては小さいものではありません。
冒頭に見たように、当期純損失の状況ではありますが、バランスシートは、経営安定基金などもあるものの、脆弱というわけではないといえるでしょう。
資金の投入も始まっているJR北海道
18年7月に国土交通省により発出された「監督命令」では、北海道新幹線の札幌延伸の効果が発現する2031年度(資料では平成43年度)に経営自立を目指して、19〜20年度の2年間で400億円超の財政支援をします。
JR北海道は地域の足としての役割がありながらも、株式会社としては非常に厳しい状況にあります。また北海道新幹線は華々しく開業したものの、新たに巨額の赤字を抱える結果となった現実も存在します。
国も支援を開始しているものの、JR北海道の今後の着地点を見出すに至っていません。北海道新幹線の札幌延伸による黒字化というウルトラCのシナリオも存在しますが、札幌延伸は2031年春であり12年以上先です。
減りゆく沿線人口を前にJR北海道は今後どのような変遷をたどるのか、興味深く見守りたいと思います。
参考資料
北海道旅客鉄道株式会社「平成30年度第2四半期決算 社長談話」
北海道旅客鉄道株式会社「平成28年3月期決算公告」
北海道旅客鉄道株式会社「平成29年3月期決算公告」
北海道旅客鉄道株式会社「平成30年3月期決算公告」
北海道旅客鉄道株式会社「JR北海道グループ 平成30年度決算」
北海道旅客鉄道株式会社「平成29年度 線区別の収支とご利用状況について」
国土交通省 鉄道局「JR北海道およびJR四国の安全対策に対する追加的支援措置について」
北海道旅客鉄道株式会社「JR北海道の経営改善について」(http://www.mlit.go.jp/common/001247327.pdf)
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