値上げで失速の鳥貴族、利益水準の回復が簡単ではない理由
LIMO / 2019年8月31日 21時20分
値上げで失速の鳥貴族、利益水準の回復が簡単ではない理由
新規出店再開で成長を取り戻せるか?
「鳥貴族が来期から出店再開」と一部で報じられています。足元の全店売上高が対前年同月比でマイナス成長となる中、確かに出店の再開は成長に向け必要でしょう。ただし、2019年7月期のQ3(累計)は対前年同期比で販管費が大幅に増加(約+20億円)しており、利益回復には高いハードルが存在するという状況です。
鳥貴族は出店再開で巻き返しを図ることはできるのでしょうか。
今期は新規出店を凍結して既存店の底上げに注力
もともとは大阪の郊外中心に展開する焼き鳥チェーン店であった鳥貴族(3193)は、2014年7月にジャスダックに新規上場※。全品280円均一(2017年10月より298円均一、税別)の価格設定も話題となり一大ブームを巻き起こしました。
※2015年7月に東証2部に市場変更、2016年4月に東証1部に指定替え
しかしブームはいずれ去ります。鳥貴族もその例に漏れず、ブームの一巡に加えて2017年10月の値上げを契機に客離れによる不振に陥り、今期(2019年7月期)は新規出店を凍結し既存店の底上げに注力することに。
その結果、期初に対前年同月比で90%台前半だった客数は、5月以降100%に近い水準にまで回復。既存店の立て直しは一定の成果を得た状態となりました。
再成長には新規出店が必要不可欠
冒頭に記したように、一部報道で鳥貴族は来期(2020年7月期)から新規出店を再開すると伝えられています。出店再開は既存店の底上げに一定の成果が出たためと捉えることもできますが、別の見方をすることもできます。
月次で開示されている全店売上高(新規店+既存店)を見ると、2019年6月及び7月は対前年同月比で99.7%、97.7%とマイナス成長になりました。
新規出店を凍結していたとはいえ、それまでに出店した店舗の増収効果で今期も全店売上高の月次数字は常にプラス成長を維持していました。しかし6月・7月はマイナス成長に転じており、過去の新規出店による増収効果は剥落しています。
また、既存店の客数に改善傾向が見られるとはいえ、既存店売上高がプラス成長に転じるほどの回復ではありません。よって、出店を凍結したままではジリ貧となる可能性が高いでしょう。
参考:『鳥貴族の既存店売上高、今期は全ての月でマイナス成長に(2019年7月)(https://limo.media/articles/-/12695)』
販管費の増加で利益回復へのハードルは高い
鳥貴族の2019年7月期Q3(累計)決算短信によると、売上高は対前年同期比で+7.3%増、営業利益は同▲46%減であり、増収を維持する一方で、大幅な減益となりました。
来期より新規出店が再開されれば、増収を加速させることはできるかもしれません。しかしQ3は対前年同期比で販管費が約20億円増加しており、利益回復は容易ではないでしょう。
新規出店による成長を得意とする同社。新規出店再開により増収幅拡大の可能性は高いと考えられます。しかし新規出店再開をしたとして、増収に加えて利益水準も回復させられるのかという点は、同社復活に向けて注目すべき部分と言えます。
鳥貴族の2020年7月期は再成長に向けた試金石に
鳥貴族の新規出店再開は正式に発表されたわけではありません。しかし既存店の底上げにある程度の成果が出る中、全店売上高の6月以降の落ち込みもあり、成長軌道に戻すためには新規出店の再開が必要不可欠ではないでしょうか。
同社は2021年7月期を最終年度として1,000店舗達成、という野心的な中期経営計画を立案していましたが、現在は取り下げています(2019年7月末の店舗数659店)。
そうした中、2020年7月期は同社の再成長に向けての試金石となります。10月の消費増税を控え、景気の冷え込みも予想される状況でどんなスタートを切るのか。月次売上高、四半期業績などの推移が注目されます。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
「遺体を取り違えて出棺する」ミスも…1兆円産業「葬儀業界」が抱える大きな課題
日刊SPA! / 2024年5月9日 8時53分
-
週刊スーパーマーケットニュース 2ケタ増収のベルク“椅子に座った接客”を実験
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2024年4月22日 20時59分
-
2023年度決算は過去最高業績のしまむら、さらなる成長めざし新中計がスタート!
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2024年4月22日 20時59分
-
良品計画の24年8月期上期決算が増収大幅増益!国内復活のけん引役は
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2024年4月21日 20時59分
-
週刊コンビニエンスストアニュース 大手コンビニ3社の決算、売上高・利益ともに大きく伸長
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2024年4月15日 20時55分
ランキング
-
1初めての上京での住まい、失敗したことは? 3位「間取りが不便」、2位「想像より狭かった」、1位は?
J-CAST会社ウォッチ / 2024年5月12日 21時15分
-
2無味のミネラルウォーターが若年層に好まれる理由 23年過去最高の販売実績を記録した「サントリー天然水」 ブランドの牽引役は天然水本体
食品新聞 / 2024年5月12日 17時1分
-
3中央線「グリーン車導入」の増収効果は?JR東日本が明らかに 投資額は約860億円
乗りものニュース / 2024年5月13日 7時12分
-
4京葉線だけの問題か? 快速の“大幅減”地域に厳しいダイヤ改正が断行される根本原因 議論に欠落した視点
乗りものニュース / 2024年5月13日 9時42分
-
5危険な「第4種踏切」なぜ無くならない? 事故が起きてから重い腰を上げる行政
乗りものニュース / 2024年5月12日 9時42分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください