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英国がEU離脱しても日本経済は大丈夫。むしろ漁夫の利も!?

LIMO / 2019年12月14日 6時0分

英国がEU離脱しても日本経済は大丈夫。むしろ漁夫の利も!?

英国がEU離脱しても日本経済は大丈夫。むしろ漁夫の利も!?

英国のEU離脱が確実な情勢になってきました。離脱で欧州経済は混乱しそうですが、日本経済への悪影響は限定的だろう、と久留米大学商学部の塚崎公義教授は考えています。

失われる「自由貿易のメリット」は限定的

経済学者は、自由貿易のメリットを強調します。両国が得意な物を大量に作って交換すれば、両国ともにメリットがある、というわけです。理屈としては全く正しいのですが、両国の得意分野が異なる場合には大きなメリットがある一方で、両国の得意分野が似通っていて産業構造も似ている場合には、メリットは大きくありません。

欧州大陸と英国は、ともに先進国ですから、得意な物は似通っています。フランスはワイン、英国はスコッチが得意だ、といった程度の話でしょう。

したがって、英国がEUを離脱して自由な貿易が難しくなったとしても、域内経済全体に与える影響は限定的でしょう。

フランスのワインメーカーは「イギリスがワインを輸入しなくなったら大打撃だ」と考えているかもしれませんが、心配無用です。スコッチ好きなフランス人が「スコッチは関税がかかるから、ワインで我慢しよう」と考えるので、ワインの輸出が減った分を国内向け出荷が補ってくれるからです。

イギリスのスコッチメーカーについても、同様ですね。大陸向けの輸出は減るでしょうが、国内向けの出荷は増えるので、プラスマイナスどちらが大きいか、といったところでしょう。

重要なことは、「英国がEUを離脱しても、フランス人と英国人のアルコール摂取量は変化しない」ということです。それなら、ワインとスコッチの合計の売り上げは減りませんから。

短期的には欧州経済が混乱する可能性があります。しかし、欧州の企業は随分前から準備をしてきたはずですから、それほどの大混乱は生じないと考えて良さそうです。

仮に短期的な混乱が生じたとしても、対応できないような問題は少ないでしょう。英国がEUに加盟する前も、特に問題なく経済は廻っていたわけですから。

評論家やマスコミは悲観的な話や問題点の指摘が好きなので、「英国のEU離脱で深刻な影響が懸念される」といった発言も多く聞かれますが、過度な懸念は不要です。

日本経済には漁夫の利も

ドイツ車に乗っている英国人の中には、ドイツ車に関税がかかるようになると、「日本車もドイツ車も関税がかかるなら、日本車を買おう」と考える人がいるかもしれません。英国車に乗っているフランス人の中にも、同様の人がいるかもしれません。

さらに言えば、英国がEUを離脱したあと、日本と自由貿易協定を締結する可能性もあります。英国が「どこかと自由貿易協定を結びたい。EUがダメなら日本だ」と考える可能性もあるからです。そうなれば、英国内のドイツ車の売り上げの多くが日本車に振り替わるかもしれません。

英国進出の日本企業には打撃だろうが

英国に進出している日本企業の子会社は、打撃を受けるでしょう。とくに、大陸に輸出するために英国に工場を建てたという場合には、英国子会社が損失を被ることになるでしょう。

しかし、日本企業の英国子会社は英国企業であって、従業員は英国人ですから、彼らがリストラをすれば、失業するのは英国人であって、日本の失業者が増えるわけではありません。

英国子会社から親会社への配当が減ると、親会社の決算が悪化しますが、それが日本の景気に悪影響を与えることはないでしょう。企業は配当収入があっても、それを設備投資や賃上げに使うわけではありませんから、反対に配当収入が減っても設備投資等が減ることもないでしょう。

親会社の利益が減ると株価が下がるかもしれませんが、日本は個人投資家の持ち株が少ないので、株価が多少下落しても、それが個人消費を下押しして日本経済に影響する、といったことはないでしょう。

英国に追随する国はないはず

「英国が離脱すると、真似をして離脱する国が出てきてEUが崩壊する」と心配している人もいるようですが、その可能性は小さいと思います。英国が離脱を決意したのは、ユーロを使っていないから、という要因も大きいからです。

ユーロ圏の経常収支黒字国は、ユーロ圏から出てしまうと自国通貨高になって輸出産業が打撃を受けますから、ユーロ圏に留まるインセンティブを持っています。

それ以上にインセンティブを持っているのが、経常収支赤字国です。経常収支赤字国がユーロを脱退すると、輸入するたびに外貨であるユーロを購入しなければなりません。そうなると、ユーロは次第に値上がりしていくでしょう。

そうなると、ユーロ建てで借金をしている会社は辛くなります。経常収支が赤字だということは、国全体として過去の赤字分を海外からユーロ建てで借りているということですから、ユーロ建ての借金をしている会社は多いはずなのです。

「次第にユーロが高くなっていくならば、早めに返そう」と考えた会社がユーロ建ての借金を返すとします。そのためにはユーロを買う必要があるので、ユーロが一層高くなります。

それを見た他社が、「先に返さないと、ユーロがどんどん値上がりしてしまう。自分も早く返そう」と考えて返済を急ぐと、ユーロが急激に高くなり。最後の会社はユーロ建ての借金を返済できずに倒産してしまうかもしれません。

そうしたことまで考えると、経常収支赤字国はユーロ圏から抜けるわけに行かず、したがってEUからも抜けられない、というわけですね。

本稿は以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。

<<筆者のこれまでの記事はこちらから(http://www.toushin-1.jp/search/author/%E5%A1%9A%E5%B4%8E%20%E5%85%AC%E7%BE%A9)>>

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