EUVリソ、マスク周辺インフラの整備が着々
LIMO / 2019年9月4日 20時20分
EUVリソ、マスク周辺インフラの整備が着々
パターン付きマスク検査技術が確立、ペリクルも三井化学が商業化
半導体製造の最先端プロセスに用いられるEUV(Extreme Ultra Violet、極端紫外線)リソグラフィーは2019年が「量産元年」となって、本格離陸を迎えようとしている。先陣を切った台湾TSMCに続き、韓国サムスン電子もこれを追う。ただ、現状は数レイヤーへの適用にとどめる「試運転」の要素が強く、適用レイヤーが一気に増える5nm世代でその価値を大きく問われることになりそうだ。これに伴い、露光装置はもとより、フォトマスク分野ではパターン付きマスクの検査技術やEUV専用ペリクルの実用化などが急ピッチで進んでおり、インフラ整備が着々と進んでいる。
EUVの量産適用が始まる
TSMCがEUVリソを初めて導入する「N7+」プロセスは、すでに量産がスタートしており、同プロセスのチップを搭載した最終製品が7~9月期から市場に投入される見通し。サムスン電子も7nmでEUVを採用し、19年末から20年初頭にかけて量産を開始する予定だ。
これら顧客にEUV露光装置を供給するASMLの足元の受注・出荷状況も好調だ。19年は通年ベースで計30台の出荷を見込んでいるほか、直近の4~6月期には10台の大量受注を獲得した。EUVはまず先端ロジックを当面のアプリケーションとするものの、将来的にはDRAMも有力候補と位置づけられており、関連する材料・装置業界からの期待も高まっている。
リソグラフィープロセスにおいて、露光装置同様に欠かせないのがフォトマスクだ。EUVは従来の光リソと異なり、反射光学系を用いるため、マスクやブランクス、さらには検査装置に至るまで、これまでと全く異なるものが求められている。見方を変えれば、参入する材料・装置各社にとっては大きな付加価値向上のチャンスと捉えられており、事業拡大に意欲を見せる企業が多い。
HOYAはEUV向け売上高が2倍に
日系メーカーが強いマスクブランクスがその好例だろう。有力メーカーの一角を担うHOYAは、4~6月のEUVマスクブランクスの売上高が前年同期比で2倍に拡大。マスクブランクス売上高に占めるEUVの構成比も29%まで達している。国内の長坂事業所(山梨県北杜市)に加えて、シンガポール工場でもEUVブランクスの新ライン建設を進めており、20年初頭の生産開始を予定している。
さらに同市場にはAGCも新規参入を表明。20年までにEUVブランクスの生産能力を18年比で3倍に拡張するなど、積極的な動きを見せている。
大型受注の正体は「APMI」
ブランクスに関しては、すでにEUV光を使ったアクティニック検査(ABI=Actinic Blanks Inspection)が確立されている。一方、パターン付きマスクは現状ではDUV光を使った検査技術が採用されていたが、EUVマスクにもペリクル(防塵カバー)を装着する方式が今後主流になるとみられ、ブランクス同様にアクティニック検査が必須となってきていた。
これまでは、露光装置のEUV光源の出力が不十分で光の減衰を招くペリクルに関する議論が十分にされず、現在TSMCなどでもペリクルレスによるマスクの運用が実際の生産現場で行われている。しかし、今後は5nm以降を見据えて生産性改善が大きな課題となってくることから、ペリクルの装着が必要との声が多く、光源出力のめども立ってきたことから、ASML主導のもと、ここ数年で流れが変わってきた。
こうしたなかで、マスク/ブランクス検査装置大手のレーザーテックがABIに続き、8月にパターン付きマスクの検査をEUV光で行えるAPMI(Actinic Patterned Mask Inspection)装置について初めて言及した。同社は17年9月に半導体関連の新製品で約160億円の大型受注を獲得したと公表していたが、これまで詳細については公表してこなかった。今回、顧客から情報開示に関する許可が取れたことで、この大型受注がAPMIであることを初めて公表した。
ペリクルは三井化学がASMLとの間でEUVペリクルの生産技術に関するライセンス契約を締結。今後生産設備を導入して、2021年以降に商業生産を開始する。当面はフルサイズのポリシリコン膜で対応することになりそうだが、透過性や耐熱性のさらなる向上のため、将来的にはカーボンナノチューブのように強度や耐熱性が優れた材料にシフトしていくことが想定されている。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
プロセスノードに加えて新技術も売り込む! Intelが半導体の「受託生産」で使う“武器”【後編】
ITmedia PC USER / 2024年4月26日 17時5分
-
Intelが語った高NA EUV露光装置導入による4つのメリット、2025年には量産モデルの導入も計画
マイナビニュース / 2024年4月22日 12時34分
-
Intelに納入された高NA EUV露光装置の組み立てが完了、Intel 18A以降で活用へ
マイナビニュース / 2024年4月19日 20時38分
-
Intel Foundry、高NA EUVでチップ製造の新境地を開拓
PR TIMES / 2024年4月19日 12時45分
-
日本の半導体株10選、米中摩擦や生成AI拡大で日本メーカーに脚光!
トウシル / 2024年4月11日 16時30分
ランキング
-
1箱根にフロントもない「無人ホテル」開業 〝不便さ〟感じる? 記者が体験してみた
カナロコ by 神奈川新聞 / 2024年5月4日 18時38分
-
2周りの人にどう思われているか気になります…他人の評価に「一喜一憂」しないためにはどうしたらいいですか?【現役住職の“天晴れ”な答え】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年5月4日 13時0分
-
3日銀がこれほどまで円安を「無視」する3つの理由 「為替は管轄外」では、結局うまくいかない?
東洋経済オンライン / 2024年5月4日 9時30分
-
424年度の企業倒産、1万件超か 原材料高、人手不足が収支圧迫
共同通信 / 2024年5月4日 15時30分
-
5相鉄線「屈指の閑散駅」ついに一新へ! 大幅イメチェン&新改札も 完成時期は?
乗りものニュース / 2024年5月4日 8時42分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください