素直になれないことと、モラハラは違う。「凪のお暇」「偽装不倫」モラハラ男性ふたりから学ぶべきこと
LIMO / 2019年9月6日 6時45分
素直になれないことと、モラハラは違う。「凪のお暇」「偽装不倫」モラハラ男性ふたりから学ぶべきこと
7月から放送中の連続ドラマもいよいよ最終回目前です。結末が気になるところですが、「凪のお暇」では主人公凪の元恋人・我聞慎二(高橋一生さん)が、「偽装不倫」では主人公鐘子の義理の兄・賢治(谷原章介さん)が”モラハラ男性”として特徴的に描かれています。放送時にはSNSなどで毎回トレンドに入るほど注目度の高い登場人物ですが、これが現実になると看過できない問題です。
今回は、ふたりの登場人物から、ドラマでの描かれ方を検証してモラハラの実態を考えてみたいと思います。
素直になれないことと、モラハラは違う
「凪のお暇」の主要人物である我聞慎二は、凪と付き合っていた当初から、また恋人関係を解消してからも凪の容姿や生活スタイルに対して批判的で暴言を吐くことが多々ありました。
ところで、一般的に「モラハラ」と言われる「モラル・ハラスメント」は、暴力など身体的な苦痛を与えるのではなく、モラルのない言葉や態度によって相手を精神的な苦痛に追い込むものです。恋人や夫婦間のほか、職場、家庭などあらゆる人間関係にモラハラは存在します。加害者意識がなくても、受け手が精神的に追い込まれ、非難されていると苦痛を感じたら、それは「モラハラ」です。
「凪のお暇」においてモラハラの問題が複雑なのは、慎二は本当は凪のことが好きだけれど、凪と対面すると素直になれず、口の悪さでごまかしているという側面を持っていることです。さらに慎二は職場では人当たりがよく人気者で、モラハラをしているとは考えにくく、加えて凪に対しての発言を後悔し、涙する場面が何度も描かれています。そのため、第三者目線では「本当はイイ奴なんじゃないか」と思ってしまう部分があります。
一方凪も、慎二の思いやりや配慮のない言葉を聞いて、過呼吸を起こし倒れた過去があるにも関わらず、「(慎二は)そういう人だ」と割り切って受け止めてしまっています。しかしある日を境に、慎二との恋人関係を解消し、別々の道を歩むことを決めました。凪は一度仕事を辞め、住まいを変え、新しい友人や職を得て、前向きに生活しています。
そうして前進する凪を見て、依然として劣等感や後悔からモラルのない発言を繰り返す慎二にも、ドラマ第7話(2019年8月30日放送)で変化がありました。自分の過去がフラッシュバックして、とあるイベント登壇中に倒れてしまうのです。
自分が倒れたことで慎二は初めて、凪が過呼吸を起こし倒れたときの状況や心情を想像することになります。ここで、自分の発言には配慮がなく、思いやりがなかったと気づき、凪に謝罪します。
しかし視聴者として心得ておきたいのは、当然ながら「モラハラ」は最初からないほうが良いに決まっている、ということです。慎二のように、自分の経験によって気づき、過去を謝罪して前に進むことは悪いことではありません。ただ、自分が相手に対して素直になれないことをモラルのない言葉で偽り、攻撃することのないよう、ドラマから学ばなければならないでしょう。
「モラル」とは何なのか、知って考える
「偽装不倫」の賢治は、真面目に働き、妻・葉子の両親との二世帯住宅を快諾し、妻との記念日には毎度お祝いをし、義理の妹である本作の主人公・鐘子にも気配りし、これ以上ない理想の夫です。
けれどもその影で、妻・葉子は妊娠や出産について賢治からの圧力に耐えかねていました。「自分とそっくりな子どもがほしい」と言う賢治は、「二世帯住宅なら子育てが分担しやすい」、「夫婦2人の生活はこの日まで、妊活はこの日から」と綿密な計画を立て、葉子に強要しています。
それに対し葉子は違和感を覚え、戸惑いを隠せません。さらにこの問題を複雑にしているのは、葉子が夫からのモラハラのはけ口として、不倫を始めてしまったことでしょう。自分の訴えに聞く耳を持たなかった夫を見切り、日々の楽しみや生きがいを家庭の外に見出すことで、夫や家族との時間をおろそかにしてしまいます。
もちろん、家庭内でごまかすことすらできない程に不倫相手の男性にのめり込んだ葉子にも、非難されるべき点があります。葉子の不倫は、夫の存在や尊厳を傷つけたと捉えることができ、見方によっては夫に対しての「モラハラではないのか」と問うことができるからです。
こうしてモラハラが新たなモラハラを生み、解決の糸口が見つからないほどに混線してしまうのも、また現実と言えるのかもしれません。
2人の男性、共通点は…
比較してみると、「凪のお暇」の慎二にも、「偽装不倫」の賢治にも共通しているのは、両者とも二面性のある人格を持ち、外からはモラハラに気づきにくいということです。不倫を続ける葉子にも裏表があると言えるでしょう。だからこそ問題が複雑化の一途をたどってしまうのかもしれません。
さらに、自分の言動に無頓着なままでいるならば、自分がモラハラの加害者になる可能性も十分にあると認識させられます。現実において誰かをモラルのない言動で傷つけないためにも、ドラマを見て学び、考えたいものです。
【参考】
金曜ドラマ『凪のお暇(https://www.tbs.co.jp/NAGI_NO_OITOMA/)』(なぎのおいとま)TBSドラマ(金曜よる10時放送)
『偽装不倫(https://www.ntv.co.jp/gisouhurin/)』日本テレビ(水曜よる10時放送)
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