警官が多い街には犯罪が多い理由が2つある~統計のウソを見抜く法
LIMO / 2019年9月8日 20時20分
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警官が多い街には犯罪が多い理由が2つある~統計のウソを見抜く法
警官が多い街には犯罪が多いが、その理由は2つある、と久留米大学商学部の塚崎公義教授は説きます。
統計使いは統計で嘘をつく
統計は、時として不正確かもしれませんが、嘘はつきません。嘘をつくのは、統計を使って他人を騙そうとする悪徳統計使いです。場合によっては悪徳でない統計使いが、自分自身で統計の使い方を単に誤っているだけ、という場合もありますが(笑)。
統計使いの嘘については、記したいことが数多くありますが、今回は因果関係について考えてみましょう。原因と結果の関係、というわけですね。
因果関係を判断するのは、実は結構難しい作業なようです。AIがとても奇妙な因果関係を示しているのが散見されますから。おそらく人間の「常識」が重要なのでしょうね。以下、皆様の常識と筆者の常識がズレていないことを祈りつつ(笑)。
因果関係に注意
統計を見る際に、最も注意が必要なのは、因果関係でしょう。AとBが似た動きをする場合、AがBの原因なのか結果なのか、といったことです。2人の人物が似ている場合、AがBの親である場合、AがBの子である場合、親が別にいてAとBが兄弟である場合、他人の空似である場合、の4通りあります。統計の因果関係も同様です。
「警官が多い街は泥棒が多いから、警官を減らそう」と財務省が言い出したら問題ですね。第一に、泥棒が多いから警官が多いので、因果関係が反対です。泥棒が多い街は税金で警官を雇い、泥棒が少ない街が税金で公園を作るから、結果として警官の多い街は泥棒が多いように見えるのですね。
実は、本件には因果関係が今ひとつあるのです。それは、人口が多い街ほど犯罪も警官も多い、ということです。人口が親で犯罪と警官は兄弟なのですね。これについては、人口1000人当たりの犯罪数と警官数を比べる、といったことが必要になるわけです。
親子の場合は、どちらが親かを間違える可能性は大きくありませんが、親が別にいる場合は、それに気づかない場合も多いので、要注意です。
たとえば「アイスクリームが売れる日は水の事故が多いから、アイスクリームの販売を禁止しよう」という意見は、当然ですが見当違いですね。
因果関係については、時間的に先に起きることが原因だとは限らないので、注意が必要です。たとえば株価は景気の先行指標だと言われています。株価が下がると景気も悪化する可能性が高い、というわけですね。
しかし、株価下落が景気悪化の原因というわけではなく、反対に投資家たちが景気の悪化を予想すると株を売るので株価が下がる、というわけです。投資家たちの予想どおりに景気が悪化すれば、結果として株価が景気に先行した形となるわけです。
原因でもあり、結果でもある、という場合もある
賃金上昇率が高い国は物価上昇率も高い傾向にあります。これは、どちらも原因となり、悪循環となるからです。物価が上がると労働組合が賃上げを要求するので賃金が上がります。賃金が上がると、企業はコストを売値に転嫁するので物価が上がります。その繰り返しとなるわけですね。
好循環も、もちろんあります。失業率が下がると、失業していた人が給料をもらって消費をするので景気が良くなります。そうなると企業が多くの人を雇うので、一層失業率が下がる、というわけですね。
こうした場合には、政府は悪循環を断ち切るように、好循環が途絶えないように、と考えて経済政策を策定することになるわけです。
緊縮財政が経済成長率を高める?
ここからは、少し話が難しくなりますが、財務省の新人研修で筆者が毎回話している内容です。
「財政赤字が減っている国ほど経済成長率が高い」という関係があるとします。筆者の常識からすれば、「経済成長率が高い国は、景気がよくて税収が増えるので、財政赤字が減るのだろう」と解釈されるわけです。
ところが、「緊縮財政で財政赤字を減らすと経済成長が高まるから、日本も緊縮財政をしよう」という人がいるのです。
前半については、筆者の「常識」とは異なりますが、理論的には可能です。「財政赤字が減ると、政府が資金調達を減らすから、金融市場で金利が低下し、民間企業の設備投資が促されるから経済成長率が高まる」というわけですね。もしかすると、これが財務省の「常識」に沿った見解なのかもしれませんが(笑)。
もっとも、論者の後半は明らかな誤りですね。日本の金利は現在でも十分低いので、財政赤字が減っても金利は下がりません。他国のデータを使って自国について主張するときは、状況の違いに留意しましょう。
本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。
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