日本の親が子供に「お金の教育」をできない理由
LIMO / 2019年9月11日 20時15分
日本の親が子供に「お金の教育」をできない理由
筆者はこの9月から一般社団法人日本つみたて投資協会という組織を運営しています。この組織の理念は、個人が無理なく資産形成ができる「つみたて投資」を広く社会に普及・啓発して、家計に活力とゆとりをもたらし、個人・企業・地域が活性化できる日本経済の持続的な発展に寄与するというものですが、いろいろなチャレンジがあります。
日本人はマネーや経済に興味がない?
最初のチャレンジは、つみたて投資うんぬんの前に、マネーや経済に興味を持っている層が思いのほか少ないことです。少額投資非課税制度(運用収益に対する税金を払わなくていい投資口座)であるNISA/つみたてNISAの口座数は、2019年3月末で合計753万口座となっているものの、人口比での口座保有率は6%程度と、ほぼ17人に1人しか保有していない勘定になります。
年齢別の当該口座保有比率を見るともう少しばらつきがあり、20代では2.6%、30代で5.1%、40代・50代ではそれぞれ5.3%、6.4%程度と、口座開設率は各年齢層人口の10分の1以下となっています(図表1)。筆者の感覚では、それでもかなり増えたなという感じです。
ただし、実際の稼働率(取引されている口座)は全体で72%程度ですから、残りの3割弱は口座開設したものの何の金融商品も買っていないと推察されます。
証券口座全体は2433万口座(個人、2019年6月末)ですから、全人口比では約5人に1人が証券口座を保有していることにはなり、口座保有者の4分の1程度はNISA口座も開設しているということになります。ただし、一般の証券口座は複数開設することができますので、実質的に稼働している口座数はもっと少なくなるはずです。
子供に対する「お金の教育」の第一歩は?
このように、証券口座数から考えると、ほとんどの個人は投資に興味がないか必要ないと考えていると判断しても間違いないでしょう。もっとも、証券口座開設手続きが煩雑であったり、NISA/つみたてNISAの認知が進んでなかったりすることも一因という見方もありますが。
本題はここからです。
現代日本では、親が子供に何でもかんでも期待します。やれお受験だ、やれバイリンガルだ、やれ有名企業就職だ…。挙げ句の果てに学校で金融教育をすべしといった議論まで出てきていますが、お金の教育は一朝一夕にできるわけではありません。
筆者の考えでは、家庭における子供への一番のマネー教育は、親がお金の使い方や貯め方にポリシーを持っているかどうかを見せることだと思います。
非課税のメリットが大きいNISA/つみたてNISAが伸び悩んでいるのは、資産形成層である親自体がさほど資産形成に興味を持っておらず、そうした情報を選択できないからだと推察します。もちろん、有価証券投資はリスク資産への投資が基本ですから、元本を絶対割りたくない方は預貯金中心の運用にならざるを得ません。
これが例えば、
「おとうちゃん、預貯金も悪くはないけど、利息がつかへんのでなんとかせなあかん」
「でもなおかあちゃん、年間1万円の利息をもらうには、元本がどれだけ必要かわかるか? 定期預金の金利が年0.01%やとすると、1億2,549万円もいるんやで」
「せやけど、おとうちゃん、この30年でアメリカの株は10倍にふえてるらしいで。トランプ大統領が言っとったわ。なんかせな、あかんのちゃう?」
というような夫婦の会話を子供が聞くと、子供は自然に「いまは“定期預金”では儲からないんだな」と理解します(定期預金が何たるかの理解は別として)。
親が子に教える金融経済教育は、金融リテラシーとか商品知識とか大層なものではなく、こうしたポロッとした会話の中や普段の生活で1円も無駄にしない態度を見せることです。使うところは使い、締めるところは締める。コツコツとつみたて投資を継続する。
残念ながら、時代が豊かになって外食だハワイだという今の子育て世代は、なかなかそうした行動を見せられません。そして家庭内での金融教育もアウトソースせざるをえない時代になってきました。そうした点で、筆者も貢献したいと考える今日このごろです。
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