「子育て」と「介護」のダブルケアで家庭崩壊? 3つの問題点と対処法
LIMO / 2019年9月23日 20時15分
「子育て」と「介護」のダブルケアで家庭崩壊? 3つの問題点と対処法
最近少しずつ認知度が上がってきている「ダブルケア」という言葉、ご存知ですか。育児と介護が同時にやってくることを言います。最近は、初婚年齢も上がって子どもが生まれる頃に親の介護が必要になってしまうこともあるようです。
そういう事態に陥ると、時間的にも経済的にも大変なことになってしまいますよね。そこで今回は、「ダブルケア」という状況に陥ったときにどうしたらいいかを考えてみましょう。
ダブルケアってどういう状態?
そもそもダブルケアとはどういう状況なのでしょうか。内閣府男女共同参画局が公表している「育児と介護のダブルケアの実態に関する調査報告書」によると、「晩婚化・晩産化等を背景に、育児期にある者(世帯)が、親の介護も同時に担う」状況を指すとされています。
このダブルケア、わたしたちにとってもそれほど遠くない問題。同調査によると、ダブルケアを行っている人は約25万人です。ダブルケアを担う可能性がある30~59歳の人口は約4,912万人なので、この25万人がその年代に集中しているとすれば、約200人に1人はダブルケアに追われている計算になります。
今は200人に1人なのでまだ実感がないかもしれませんが、この先どんどんダブルケア人口は増えていくことが予想されます。200人に1人ではなく、100人に1人、50人に1人、10人に1人と、どんどん自分たちの問題になっていくかもしれません。
ダブルケアを行う人の多くは30~40歳代です。内閣府の「少子化社会対策白書」によると、初婚年齢の平均は2017年時点で夫が31.1歳、妻が29.4歳となっています。1985年と比較すると、夫は2.9歳、妻は3.9歳上昇していて、晩婚化が進んでいることがわかります。
さらに出生時の母親の平均年齢を見てみると、2017年には第1子が30.7歳、第2子が32.6歳、第3子が33.7歳となっており、第1子を30歳で産んだと仮定するとダブルケアが訪れる30~40歳代というのは一番忙しい時期。子どもの学校行事への参加や部活動、受験のサポートが必要となる時期ですよね。
介護の程度にもよりますが、そんな中で介護と子育ての両立を求められるのはかなり大変そうです。
ダブルケアの3つの問題点とは?
ダブルケアの大きな問題は3つあると考えられます。1つ目は子育てと介護を両立させねばならないことによる時間的な問題、2つ目は介護と育児両方への出費で家族が自由に使えるお金が減るという経済的な問題、3つ目は担い手の偏りという問題です。
子育てを経験したことのある人はピンとくると思いますが、子育てというのは1人でも2人でも本当に大変なものです。子どもが小さいうちは緊張感もあるうえに睡眠時間を十分に取れず、精神的にも時間的にもつらいと思います。夫のサポートが得られないと母親である妻は余計に大変で、家事と育児をしていると1日があっという間ですよね。
夫が自立して自分のことは自分でやるという人でなければ、夫と子どもの世話をしながら家事をして、さらにそこに介護、なんていうトリプルケアという状態も起こりえるわけです。働こうと思っても、そんな状態ではとても働く時間はありません。
ここでもう一つの問題点が見えてきます。ダブルケア(もしくはトリプルケア)問題の当事者になりやすいのは女性です。「育児と介護のダブルケアの実態に関する調査報告書」によると、ダブルケアを行う約25万人のうち、女性は17万人、男性8万人と推計されています。
このように担い手が偏ると、子育てを担う母親、親の介護を担う娘、夫の世話と家のことをする妻、そして社会で働く女性としての4つの顔を求められることも起こりうるわけです。
もちろん男性にもそういう側面があります。女性にこのような役割が求められるのと同様に、男性は2つ目の経済的な問題の当事者になりやすい傾向があるのです。妻が家で育児と介護と家事を担うなら、外でお金を獲得して家に持ち帰るのは夫ということになります。
育児にもお金がかかるというのに介護のお金まで必要になったら相当苦しいでしょう。この状況で「お金がないから」と妻も働くとなると、いよいよ家庭が崩壊しそうになることは想像に難くないですね。
ダブルケアに陥ったとき、私たちができること
こうしたダブルケアの状況を、わたしたちはどのように受け止めたらいいのでしょうか。いくつか選択肢があります。1つは育児か介護、もしくは家事をアウトソーシングするという策です。
介護も育児もデイサービスやベビーシッター、家事代行などのアウトソーシングできるサービスがあります。この方法には経済的な問題が絡んできますが、ゆとりがあればケアハウスやデイサービスを利用したりして親の介護の負担を減らしたり、子どもを保育園に入れたりベビーシッターを雇ったりすることもできます。
もう一つの選択肢は兄弟姉妹と介護を分担することです。兄弟姉妹がいない人はほかの親戚を頼ってもいいでしょう。頼れる親戚もいない場合は問題が複雑になりますが、そういう人は意外と多いかもしれません。
となると、子どもは保育園、親はデイサービスを利用し、自分と配偶者は2人で働くという方法がもっとも現実的で自由度が高いような気がします。家事は2人で分担し、どちらかに負担が偏らないようにすることも必要でしょう。
しかし、こう言うのは簡単ですが現実にはそうはいかない場合も多いですよね。介護の程度によって利用できるサービスも違ってきますし、そもそも子どもを保育園に入れられるかどうかもわかりません。待機児童問題はいまだに大きな問題になっています。準備と心構えがないと、私たちの生活はダブルケアという問題に簡単に脅かされてしまいそうです。
私たちが今から始めるべき備えとは
ダブルケアで家庭崩壊しないために、わたしたちができることは何でしょうか。身も蓋もない言い方かもしれませんが、それには丹念に準備をしておくことしかありません。もちろん経済的な面での準備も必須ですが、大事なのは私たちがダブルケアの問題に直面する前に選べる選択肢を増やしておくことです。
子どもが生まれる前にこの先のプランを考えて保活をしたり、妻は自分が戻れる職場をきちんと確保しておいたり、夫は安定した収入を得られるようにスキルアップしたり副業を検討するのもありでしょう。また、育児や介護にかかる補助金・助成金や行政のサポートをしっかり調べて、いつでも使えるように準備しておくのも重要です。
無知でいることはそのまま損することと同じです。とにかく色々な情報を得ること、そしてそれを整理して保管しておくこと。知っていることで使えるサービスもたくさんあります。自治体や行政機関のサポートだけでなく、健康保険組合のサポートや会社の福利厚生もチェックしておきましょう。
子育てに関することだけではなく、まだ早いと思っても介護のことを調べておきましょう。今は介護施設にも様々な種類がありますし、入居費用も施設によって差があります。そうした実態を調べておいて、必要になりそうなお金を早いうちから準備しておくことが重要です。
まとめ
子育てと介護が同時にやってくるなんて想像するだけでも大変ですが、現実としてそういう状況に陥ることも十分考えられるようになってきました。「うちの親はまだまだ大丈夫」と思っていると、いつまでもそのままになってしまうかもしれません。まずは少しずつ情報収集を始めてみましょう。これから結婚するという方は、子どものことやマイホームのことだけではなく、親の介護のことも一緒に考えてみてくださいね。
【参考資料】
「育児と介護のダブルケアの実態に関する調査報告書(http://www.gender.go.jp/research/kenkyu/wcare_research.html)」(内閣府男女共同参画局)
「少子化社会対策白書(https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/index.html)」(内閣府)
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