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「高学歴フリーター」増加の背景。正社員にもなれず、転職しても収入はあがらない…

LIMO / 2019年10月1日 19時15分

「高学歴フリーター」増加の背景。正社員にもなれず、転職しても収入はあがらない…

「高学歴フリーター」増加の背景。正社員にもなれず、転職しても収入はあがらない…

今、少子高齢化などを背景に人手不足となっており、就職・転職においては「売り手市場」といわれています。しかし一方で、売り手市場にもかかわらず、高学歴者のフリーター化が進んでいるといいます。

なぜ、売り手市場で高学歴の人がフリーターになってしまうのか、その背景には何があるのでしょうか。

近年、高学歴フリーターが急増

フリーターというと、定職についていない人や非正規雇用に甘んじている人というマイナスのイメージが付きまといます。しかし大学卒や大学院卒であるにもかかわらず、フリーターを選択する人も多いという現実があるのです。

独立行政法人 労働政策研究・研修機構(以下、労働政研)から「フリーター経験者(※1)の高学歴化と正社員化減少―「第4回 若者のワークスタイル調査」―(https://www.jil.go.jp/press/documents/20171020.pdf)」(調査は2001年、2006年、2011年、2016年の計4回。都内の25~34歳の男女を対象)が2017年10月に公開されました。

その中で目を引くのが、大学・大学院卒者のフリーター割合の急増にあります。

2001年にはフリーター経験者中の高卒者の割合が最多で43%、大学・大学院卒は11%でした。その後、高卒者の割合は低下し、大学・大学院卒者は増加の一途をたどっています。両者の比率が逆転し、2016年には高卒者が19%に対して、大卒・大学院卒者が41%を占めるように変化しています。

※1本調査での「フリーター経験者」は、パート・アルバイト経験者(学生時代のアルバイトを除く)と定義されています。

[15年前との比較]労働時間の問題

今回の2016年の調査では、離職理由についても調べられています。学校を卒業してから就職し、その後、離職した人の理由を見てみると、男女の25-29歳層いずれでも「労働時間(残業を含む)が長い」が理由の1位でした。

一方、第1回目の2001年の調査当時は、離職理由が「賃金や労働時間」などの労働条件が、男性で2位、女性では4位という結果だったのです。ちなみに1位は、男性が「仕事が自分に合わない、つまらない」、女性は「健康上、家庭の事情・結婚・出産」となっていました。

これは労働環境が悪化している様相を示しているのか、それとも働き手の受け止め方に変化が出てきたものなのか。

若い世代の忍耐力不足では、という意見もあるかもしれませんが、高学歴者が「フリーター化」した理由として「やむを得ず」が最も多くなっているのです。採用する側と働き手の間のミスマッチに理由がありそうです。

“やむを得ずフリーター化”が最も多い

労働政研はフリーター化した要因によってフリーターを4つに分類しています。

・夢追求型…明確な目標を持っている人
・モラトリアム型…フリーターになった当初に明確な職業展望を持っていなかった人
・やむを得ず型…本人の意欲とは別の、環境要因によるフリーター化した人
・ステップアップ型…資格取得などのため一時的にアルバイトなどで生計を立てる人

2011年と2016年の調査結果によると、男性は「やむを得ず型」が最も高い割合となり、女性は2011年は「モラトリアム型」がもっとも高かったのが、2016年には「やむを得ず型」がもっとも高くなっています。

《25-29歳層の2011年と2016年データの比較》
・男性「やむを得ず型」(30.1%→34.6%)
・女性「やむを得ず型」(31.5%→34.7%)

転職すれば収入は上がる?

このような環境の中で転職を検討する人も多いと思うのですが、正社員化を希望していてもそれを実現することが難しくなっています。「フリーターから正社員化」の厳しい状況について見てみましょう。

「フリーターから正社員化」は減少

労働総研の同データの「フリーターから正社員化への状況」表(2016年)によると、25-29歳層で正社員になろうとしたものの、実際に正社員になれた割合は、2001年との比較で男女とも低下しています。

《男性》2001年:76%→2016年:61.9%
《女性》2001年:51%→2016年:40.8%

とくに女性の場合は正社員化を希望していても実現できた人は4割程度という厳しさです。

転職で収入は上がる?変わらない?

加えて、転職による収入の変化について、厚生労働省の「平成30年雇用動向調査結果の概要(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/19-2/index.html)」データを見てみましょう。

常用労働者数4970万人(2018年1月1日時点)のうち転職による「入職者」は495万5000人で約10%です。この入職者の転職前後の収入を年齢別で比較すると以下のようになります。(表「転職入職者の年齢別収入変動割合」を参照)

(/mwimgs/f/5/-/img_f540bb751e950d6cad7f59539876d85125048.png)

拡大する(/mwimgs/f/5/-/img_f540bb751e950d6cad7f59539876d85125048.png)

転職入職者の年齢別収入変動割合(厚生労働省の資料をもとに編集部作成)

転職後の収入アップにもっとも成功しているのは、「19歳以下」や「20~24歳」とかなり若い世代ですが、割合としては半分にも至りません。しかも年齢の上昇とともに「収入増加」項目は減少の一途です。

比較的若い世代であれば人生をやり直せる可能性があるものの、とくに大学院卒者など、社会に出る年齢がもともと遅い場合、年齢面の影響を受けやすくなるのではないでしょうか。抜け出せない現実が数字に表れているといえるでしょう。

おわりに

高学歴であってもやむを得ずフリーター化している理由や、転職をしても年齢的に正社員化や収入の増加が難しいという現状があるようです。能力を発揮できる機会を失うことは労働意欲に直結しますし、収入の不安定さのため結婚が難しくなるなど人生を左右します。

フリーターなどの非正規雇用を選択すると、そこから脱出することが非常に難しいのが日本の社会です。人生の岐路に立った時には慎重に考え、できる限り選択肢を広げる方向で進んでいくことが重要となるでしょう。

【参考】
「フリーター経験者の高学歴化と正社員化減少-「第4回 若者のワークスタイル調査」-」独立行政法人 労働政策研究・研修機構
「平成30年雇用動向調査結果の概要」厚生労働省

 

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