静香・ミポリン・ナンノがプリプリ・米米・ブルハに変わった時代〜'88-'90オリコンチャートから

LIMO / 2019年10月5日 20時25分

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静香・ミポリン・ナンノがプリプリ・米米・ブルハに変わった時代〜'88-'90オリコンチャートから

アイドルからバンドブームへ

時代時代に流行があり、歌があります。それぞれの世代に思い出に残る歌とアイドルが存在することと思います。本稿は、そろそろ40代もおしまいに近づいてきた筆者が学生だった頃に見聞したアイドルとアイドル歌謡の隆盛が、バンドブームへと切り替わる時代を振り返ってみるものです。

「スター」から「アイドル」に変わる頃ー1980年代初頭

「歌う若い人」はもっと以前から存在しました。しかし「アイドル」という呼称が定着し、「歌う若い人」、即ち「デビュー以降の成長過程をファンが共有していくことができる未成熟な歌手」を「アイドル」と称するようになったのは、一時期テレビCMで共演が続き「聖俊(せいしゅん)コンビ」と呼ばれた松田聖子、田原俊彦らがデビューした1980年が始まりだった、と記憶しています。

それ以前にも「アイドル」という言葉は使われていましたがあまりポピュラーではなく、1970年代まではテレビに登場する人たちは「スター」でした。即ち空に輝く星、手の届かない存在だったのです。

1980年は、オーディション番組「スター誕生!」から出た山口百恵が、舞台にマイクを置くというパフォーマンスをもって引退した年でもあります。「スターの時代」が終わり、「アイドルの時代」がはじまった「アイドル元年」と呼んでもいいでしょう。松田、田原をはじめこの年以降にデビューした若手歌手は皆「アイドル」と呼ばれるようになり、それまでよりもずっと身近な存在になりました。

1980年にアイドルの時代の扉が開き、翌々年の1982年は「アイドルの当たり年」と言われるほど多くのアイドル歌手がデビューしました。この年にデビューした小泉今日子、中森明菜、堀ちえみ、早見優、シブがき隊らは「花の82年組」と呼ばれ、その後のアイドルシーンを盛り上げていきます。

アイドル黄金期のオリコンチャート

1980年に萌芽し、1982年に花開いたアイドル黄金期。華やいだアイドルの時代が最盛となるのが1988年です。その年のオリコンCDシングル年間売り上げランキングを見てみましょう。

【1988年1~10位】
1.パラダイス銀河(光GENJI)
2.ガラスの十代(光GENJI)
3.Diamondハリケーン(光GENJI)
4.DayBreak(男闘呼組)
5.乾杯(長渕剛)
6.MUGO・ん…色っぽい(工藤静香)
7.剣の舞(光GENJI)
8.ANGEL(氷室京介)
9.人魚姫 mermaid(中山美穂)
10.You Were Mine(久保田利伸)

1988年は光GENJIのデビューの翌年、彼らの全盛期です。この頃のアイドルは1クール(3カ月)ごとにシングル曲をリリースしていましたから、4曲同時ランクインということは、光GENJIはこの年に出したシングルすべてが10位以内に入っているということです。ほかにアイドルと呼ばれる人で10位以内にランクインしているのは中山美穂、工藤静香の両名のみです。

工藤は30位圏内に『FU-JI-TSU』もランクインしていますが、『MUGO・ん…色っぽい』とこの曲は作詞・中島みゆき、作曲・後藤次利のコンビによるもの。『FU-JI-TSU』から始まった中島による工藤への歌詞提供は長く続き、アルバム曲も合わせて23曲に及びます(2018年末現在)。これは中島がこれまで何人ものアーティストに詞や曲を提供してきた中で、1人のアーティストに対して提供した最多数とのことです。

この年のランキングは光GENJIの異様なまでの人気で様相がわかりづらいので、11位以下も見てみましょう。

【1988年11~20位】
11.吐息でネット。(南野陽子)
12.みんなのうた(サザンオールスターズ)
13.TATTOO(中森明菜)
14.AL-MAUJ(中森明菜)
15.You're My Only Shinin'Star(中山美穂)
16.とんぼ(長渕剛)
17.C-Girl(浅香唯)
18.抱きしめてTONIGHT(田原俊彦)
19.はいからさんが通る(南野陽子)
20.命くれない(瀬川瑛子)

中森明菜、南野陽子がそれぞれ2曲ずつランクインし、浅香唯の名も見えます。南野の『吐息でネット。』は1988年のカネボウ化粧品春のイメージソング、浅香の『C-Girl』は同じく夏のイメージソングとして起用されました。浅香は1985年デビューで、翌年に『スケバン刑事III 少女忍法帖伝奇』に主演して人気が急上昇、ヒットにつながりました。

中山美穂の『You're My Only Shinin'Star』は9位にランクインした次作『人魚姫 mermaid』とともに、中山のアイドルからアーティストへの移行を促した曲です。また『人魚姫 mermaid』は、初めて中山が『ザ・ベストテン』、『ザ・トップテン』両番組で1位を獲得した曲であり、彼女の代表曲だと言えましょう。

1位~20位を見てみると、アイドルが11組、曲数で言えば14曲がランキングに入っています。ランキングの上位のほとんどがアイドルで占められていた、これがアイドル黄金期のピークです。

オリコンチャートに見る時代の変わり目

それでは、前出の1988年に続いて、1989年、1990年のオリコンCDシングル年間売り上げランキングを見てみましょう。まずは1989年から。

【1989年】
1.Diamonds(プリンセス・プリンセス)
2.世界でいちばん熱い夏(プリンセス・プリンセス)
3.とんぼ(長渕剛)
4.太陽がいっぱい(光GENJI)
5.愛が止まらない(Wink)
6.恋一夜(工藤静香)
7.淋しい熱帯魚(Wink)
8.嵐の素顔(工藤静香)
9.黄砂に吹かれて(工藤静香)
10.涙を見せないで(Wink)

この年は工藤静香とWink が3曲同時ランクイン。プリンセス・プリンセスは2曲ランクインしています。プリンセス・プリンセスの『Diamonds』の歌詞には「針がおりる瞬間の胸の鼓動焼きつけろ」という一節がありますが、「針がおりる瞬間」とはいったい何なのか、わからない人も多くなってきたのではないでしょうか。

Winkは鈴木早智子と相田翔子からなるデュオです。アイドルの範疇にいたのですが、従来のアイドルとは異なり、笑顔がない人たちでした。しかし無愛想でも不機嫌そうでもなく、ただ感情を表情に出すことがないのです。それがとても不思議な印象を残す2人でしたが、新旧の音楽を多く取り入れてカバー曲をよく歌い、アイドルにとって厳しい時世にあって健闘しました。

そのほか、30位圏内には『TRAIN-TRAIN』(THE BLUE HEARTS)、『Runner』、『リゾ・ラバ』(BAKUFU-SLUMP)、『GLORIA』(ZIGGY)など、バンドが目立ちはじめています。『TRAIN-TRAIN』は斉藤由貴主演のテレビドラマ『はいすくーる落書』の主題歌として使用されました。

続いて1990年のランキングを見てみます。

【1990年】
1.おどるポンポコリン(B.B.クィーンズ)
2.浪漫飛行(米米CLUB)
3.今すぐKiss Me(LINDBERG)
4.さよなら人類(たま)
5.OH YEAH!(プリンセス・プリンセス)
6.Dear Friend(中森明菜)
7.情熱の薔薇(THE BLUE HEARTS)
8.くちびるから媚薬(工藤静香)
9.真夏の果実(サザンオールスターズ)
10.イフ・ウイ・ホールド・オン・トゥゲザー(ダイアナ・ロス)

前年までとランキングの様相がガラリと変わったのがおわかりでしょうか。10位までに入った10組のうち、7組がバンドです。そのうち、6組が1985年以降デビューの新しいバンド。根強く残っているアイドルは中森明菜と工藤静香の2人だけというこの時期は、流行の表舞台に立つ者がアイドルからロックバンドへと入れ替わった頃です。

1980年半ば頃にデビューしたバンドらが注目を集め、さらに深夜番組『三宅裕司のいかすバンド天国』(通称『イカ天』)の流行、そして現在も活躍しながら「伝説のバンド」と呼ばれるX(現X JAPAN)のデビューと相まって、バンドブームは大きく盛り上がりました。第4位にランクインしている「たま」は、『イカ天』で3代目グランドイカ天キングとなってデビューしたバンドです。

アイドル冬の時代

バンド人気が隆盛していく一方、1989年、1990年辺りで『ザ・ベストテン』、『ザ・トップテン』、『夜のヒットスタジオ』などの主だった歌番組が次々と終了してしまいます。アイドルは何組も新しくデビューしていくものの、歌番組という大衆の目にふれる場、歌を聴かせる場がないためにヒット曲もなかなか出ないという「冬の時代」へと突入していました。

その間にアイドルがいなかった訳ではありませんが、大きなムーブメントを起こせるほどの人気の高まりはしばらくの間、見られませんでした。「誰もが知っているアイドル歌謡」に出会うためにはモーニング娘。の『LOVEマシーン』のヒットを待たなければなりません。『LOVEマシーン』のリリースは1999年、平成も10年を過ごしてからのことです。

まとめ

アイドルの時代の陰りは実はもっと早くから見え隠れしていたようなのですが、多くの人が実際にそれに気づくのは、過ぎてからのことです。

アイドル黄金期が終わるや否や到来したアイドル冬の時代は長く続きましたが、しかし永遠ではありませんでした。時代は、大衆は、いつもアイドルを必要としているのかもしれません。いまやアイドルは群雄割拠。多様なアイドルが陰に日向に歌い、踊り、誰かの青春を支えているのでしょう。

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