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消費税でなく相続税を増税すべき理由。”おひとりさま”の遺産には高率の課税を

LIMO / 2019年10月6日 20時15分

消費税でなく相続税を増税すべき理由。”おひとりさま”の遺産には高率の課税を

消費税でなく相続税を増税すべき理由。”おひとりさま”の遺産には高率の課税を

消費増税より相続税、特に配偶者も子も親もいない被相続人の遺産への課税を強化すべきだ、と久留米大学商学部の塚崎公義教授は主張します。

消費税はデメリットが大

消費税は、貧しい人にも豊かな人と同率でかかるので、貧しい人の負担感が重い税です。「逆進的だ」という人さえいるほどです。

買い物のたびに税金を意識させられ、痛税感が大きいのみならず、買い物をする気力を奪いますから、景気にマイナスに働くでしょう。増税前には駆け込み需要が、増税後には反動減があるので、景気に対する不必要な変動要因にもなります。

さらには、所得税等と異なり、ビルトイン・スタビライザーの役割を果たしません。ビルトイン・スタビライザーというのは、たとえば所得税が累進課税であることによって、景気が悪くなると税収が大幅減となり、結果的に手取りの減少をマイルドにして個人消費の落ち込みを和らげる効果です。景気過熱時に手取りの増加をマイルドにして景気の過熱を和らげる効果も、当然あるわけです。

そこで筆者は、消費税は減税ないし廃止が望ましいと考えていますが、その際の代替財源としては、相続税と固定資産税が良いと考えます。固定資産税については別の機会に論じるとして、本稿は相続税についてです。

相続税は公平で痛税感も小

所得税は働いた人に課税するものですが、相続税は自分が働いた対価ではなく遺産を相続した人に課税するものです。たまたま富裕層の家に生まれた幸運な人に課税する、といった性格が強いでしょう。それならば、努力をした人より幸運な人に課税する方が公平です。

ちなみに本稿では、配偶者の遺産相続に関しては論じません。配偶者は相続税において優遇される合理的な理由を持っている場合も多いからです。子の遺産を親が相続する場合についても、例外的でしょうから、議論の対象から外しましょう。

所得税は、一生懸命に働いて得た所得に課税するもので、がっかりさせられます。消費税は、消費をするたびに税金を課せられ、否が応でも税の痛みを味わうことになります。

その点、相続税は「棚からぼた餅が落ちてきたが、相続税のせいで、思ったより小さなぼた餅だった」という程度ですから、痛税感は小さいでしょう。

相続税は、経済や景気への影響も小

所得税は「働いたら罰金」、消費税は「使ったら罰金」といった性格があり、労働や消費に抑制的な効果をもたらしかねませんが、相続税にはそうした性格はありません。

所得税は今期の手取り収入に直結しますし、消費税は今期の消費額を直撃しますから、景気への悪影響は大きなものがあります。

一方で、相続した遺産は、老後のために蓄えておく人も多く、そうでなくとも長期間に少しずつ使っていく人が多いでしょうから、相続税を課しても今期の消費や景気への悪影響は限定的です。

子のいない被相続人の相続税は高率で

特に筆者が高率の課税を主張しているのが、配偶者も子も親もいない被相続人の遺産の相続についてです。この場合には、兄弟姉妹が相続するのですが、これこそ「棚からぼた餅」以外の何物でもありません。

被相続人としても、配偶者や子に相続させるために財産を遺す人は多いでしょうが、兄弟姉妹のために財産を遺す人は例外的でしょう。そうした人は、生前贈与などを活用していただくことにしましょう。

今ひとつは、公平の観点です。子のいない高齢者が生前に受け取っていた公的年金は、他人の子が払った年金保険料が原資となっています。公的年金は賦課方式なので、子の世代が親の世代を支える仕組みになっているからです。

そうであれば、高齢者が使い遺した分は、国に返して次世代の人々のために使ってもらうべきでしょう。兄弟姉妹に相続させるのは筋が通りません。

上記を総合的に考えれば、兄弟姉妹が相続する分の相続税率は高くて構わないでしょう。100%でも構わないと筆者は考えています。もっとも、相続人が財産目録の作成などに協力するインセンティブが必要ですから、少しは相続人の取り分も残しておくことが実務上は有効なのかもしれませんが。

数十年で巨額の税収に

最近は、結婚しない人が増えていますし、結婚しても子供のいない夫婦も増えています。そうした人が他界する時に、遺産が国庫に入るとすれば、今後数十年の間には巨額の相続税が国庫に入ることでしょう。

仮に家計金融資産1800兆円の1%が毎年国庫に入るとすると、概ね消費税と同額になりますから、消費税を廃止しても代替財源として十分でしょう。もちろん、消費税を廃止せずに相続税を増税して財政を再建する、という選択肢も景気動向等々によっては可能でしょうが。

本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。

<<筆者のこれまでの記事はこちらから(http://www.toushin-1.jp/search/author/%E5%A1%9A%E5%B4%8E%20%E5%85%AC%E7%BE%A9)>>

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