「子どもができたのに変わらない夫」には理由があった? その本音と幻想
LIMO / 2019年10月10日 10時15分
「子どもができたのに変わらない夫」には理由があった? その本音と幻想
結婚して子どもが産まれても、なお家事育児に非協力的だったり当事者意識に欠けていたりする男性。巷では、こうした夫に対する妻たちの怒りの声が常に爆発していますが、一体なぜ彼らはライフスタイルや考え方を変えず、家事育児に積極的に参加しないのでしょうか。筆者の夫や周囲の男性などの例をもとに考えてみました。
「妻がなんでもできるから」という幻想?
今や専業主婦よりも多い働く主婦。パート、自営業、会社員など雇用形態に関わらず、何かしらの仕事をしながら家事育児もこなしている女性は珍しくありません。そうした女性が世の中に増えていくにつれて、多くの男性の中にはこのような認識が生まれているのではないでしょうか。「妻(女性)はなんでもできる」と。つまり、妻のスーパーウーマン化です。
もちろん、家事も育児も仕事もと、さまざまな役割をこなしているという意味では「なんでもできる」と言えるのかもしれません。しかし、スキルとして「できる」のと、時間や体力などを削ればなんとか「できる」は大きく違います。そして多くの妻が後者の「できる」になっているのに対し、多くの夫は妻に対して前者の「できる」を幻想として抱いているのではないでしょうか。
よく夫婦の家事育児分担においては「できる方がやる」というルールを耳にします。しかし、このルールは上記においてどちらの「できる」なのかが不明瞭なパターンが多いもの。15分間のスキマ時間を「家事ができる」と捉える妻と、2時間空いたことで「家事ができる」と捉える夫。仕事の調整や自由時間をやり繰りをして育児が「できる」状態を作る妻と、仕事や遊びの予定がなければ育児が「できる」状態になる夫。
「うちは妻がなんでもできるから」と妻を讃えているように見えて、実は単に家事育児を丸投げしてしまう夫は少なくありません。そしてそこには、夫婦それぞれが無意識に定義する「できる」に大きな違いがあるように思われます。
「自分を変えること」に積極的になれない理由
自分の子どもが産まれたのに家庭にコミットしない夫の多くは、環境の変化や自分を変えることを好まない傾向があります。その背景には、もちろん「面倒くさい」といった理由もあるでしょう。しかし、変化に対する恐怖や不安、相手への配慮も実はあるのではないでしょうか。
筆者の夫は毎朝、同じ朝食を摂ります。メニューはバナナとヨーグルトと牛乳のみ。一緒に住み始めてから筆者が何度も朝食を作ろうとしましたが、「もう何年もずっとこの朝食だから変えなくていい」と言われました。理由について深く聞くと、「忙しい朝に君にご飯を用意してもらうのは申し訳ないから自分で朝食くらい用意しようと思うと、ずっと続けてるこのラクなメニューになっちゃう」とのこと。
また1歳の子どもをワンオペで育てている筆者の友人A子にもまた、「自分を変えたくない夫」がいます。A子の夫は40代前半で中小企業の中間管理職。朝早くから深夜まで忙しく働く平日は仕事モードのスイッチを切らず、土日のどちらかは1日中ジムやランニング、読書など「自分を整える時間」としてめいっぱい使う。せめて土日のもう1日には家事育児を手伝ってくれるかと思いきや、寝ているか仕事の付き合いのゴルフに行くか美容院や買い物などで出かけることが多いそうです。
A子の話によると、A子の旦那さんは結婚前から続けてきた“仕事中心”のライフスタイルを崩してしまうことで、仕事のパフォーマンスが落ちる不安があるとのこと。仕事のパフォーマンスが落ちれば今の収入が難しくなる可能性もあり、結果として家庭生活も上手くいかなくなってしまう。そこは大企業ではない中小企業の、上司と部下の間で板挟みにあっている中間管理職という、会社や立場ならではの悩みなのかもしれません。
変化を恐れる夫の中には、実は家族のことや仕事のことを考えているからこそ家庭にうまくコミットできない葛藤があるようにも感じます。
「夫が家事育児をしない!」と怒るほど見えにくくなることも
筆者の夫もA子の旦那さん同様にとても仕事が忙しく毎日遅くまで働いています。昨年、子どもが産まれたのに家事育児をまったくやってくれないことに対して夫婦げんかをした際に、夫から「他の旦那さんと違って、家にいる時間が短くて申し訳ない。僕としては一生懸命働いて、君たちに経済的に苦労させないようにするのも家事育児を間接的に担っている意識だった。そして僕のその意識を理解してくれているものだと勝手に思っていた」と言われたことがありました。
その言葉を言われた時、世の中にはもしかしたら筆者の夫のような考え方を持っている男性はとても多いのではないかとハッとしました。「夫が家事育児をしない!」という妻の怒りの声が大きすぎるあまり、見えなくなっている夫の考えや夫婦間の意識の違いは確実にあるでしょう。そうしたことに耳を傾けることで、もう少し今の日本の家事育児分担に関する問題が解決する方向に向かうこともあるかもしれません。
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