国や企業に頼れる時代は終わった…これからの老後格差は何で決まる?
LIMO / 2019年10月27日 19時45分
国や企業に頼れる時代は終わった…これからの老後格差は何で決まる?
老後2000万円問題を考える
6月に「老後資金2000万円」というフレーズが様々なメディアでも取り上げられました。
これは、6月3日に公表された「高齢社会における資産形成・管理」という報告書※の中で、夫が65歳以上、妻60歳以上の無職世帯が年金で暮らす場合、毎月約5万円赤字となっており、自身の保有する金融資産から補填しているという実態から、30年間生きると仮定すると、約2000万円が不足するという計算を示したものです。
※金融審議会「市場ワーキング・グループ」(金融庁)による
公的年金、退職金、企業年金への不安がいよいよ高まる
そもそも、この報告書で使用しているデータは、2017年の総務省家計調査に記載されているものなので、最近明らかになったものではありません。公的年金についての問題もこれまで様々論じられてきているので、なぜこのタイミングで?と思われた方も多いのではないかと思います。
おそらくは、「2000万円」という数字のインパクトや、多くの方が抱いている社会に対する不安・不満が今回の話題に繋がったのでしょう。しかし、大事なのは、こういった問題を機に、現状の経済や社会情勢の中で、自分自身の将来のためにどういった準備が必要なのかを整理し、考え、実行することです。
2018年の平均寿命は男性81.25歳、女性87.32歳と過去最高を更新しています。現在60歳の人の約4分の1が95歳まで生きるという試算もあり、まさに「人生100年時代」へ向かっているといえるでしょう。
また、ライフスタイルの多様化に伴って、未婚率が上昇し、夫婦のみの世帯の割合が増えてきています。結婚後、子どもを産み、持ち家で親と同居、老後の親の世話は子どもがみてくれるというような、かつては標準的と考えられてきたモデル世帯は今や少数派でしょう。
企業に目を向けても、退職金給付制度がある企業の全体の割合は徐々に低下しており、2018年では、約80%となっています。これの割合は企業規模が小さくなるにつれて小さくなります。
退職給付金額についても、ピーク時から約3~4割減少しているというデータも出ています。企業でも退職金の積み立て及び運用のリスクを取れなくなってきており、確定拠出年金を導入する企業も増えてきています。
このように、まさしく自分の老後は自分で支えるという時代になってきているといえるでしょう。
老後に向けてどのような対策をとればいいのか?
では、その中で個々はどういった資産形成をしていけば良いのでしょうか。
それぞれの人生におけるステージや家族構成・ライフプランによっても異なりますが、「人生100年時代」と叫ばれている中、まずは若い世代のうちから将来への資産形成について高い意識を持つことが重要です。
個人の長期的な資産形成を支援する制度として、税制面で一定の優遇が行われているものに「つみたてNISA」と「iDeCo」があります。
「つみたてNISA」の対象商品は、手数料が低水準で、長期・積立・分散投資に適した投資信託と上場株式投資信託(ETF)に限定されており、投資初心者にも利用しやすい仕組みとなっています。年間40万円までの積立投資について運用益が非課税になり、その資産はいつでも引き出し可能です。
「iDeCo」は、掛金の上限が年間14.4万円~81.6万円であり、掛金は全額所得控除、年金受給時も一定の税優遇があります。加入可能年齢は20歳から60歳となっており、あくまで年金という制度趣旨に沿って、60歳になるまでは中途引き出しは原則不可となっています。
よく、「つみたてNISA」と「iDeCo」のどちらが良いですか?という質問を受けることがありますが、ライフイベントに応じて引き出すことが可能な「つみたてNISA」と年金制度としての「iDeCo」は、ライフプランを立てたうえで、バランスを見ながら両者を併用するべきものだといえます。
両制度ともに、メディア等でも取り上げられ、利用者も増えているものの、どちらも成人人口に占める割合としては、「つみたてNISA」が1.0%、「iDeCo」で1.6%と、まだまだ少数に留まっています。
お勤め先によっては企業型確定拠出年金を導入しているところもあるかと思います。こちらについてもあまり良く理解しておらず、給与として受け取っている、あるいは、制度を利用していても、値動きのある運用商品ではなく定期預金など安定資産を選択している方が多くいます。
将来の退職金を準備するために重要な制度であるにも関わらず、まだまだ多くの方が制度や運用について理解していないというのは、企業による従業員への説明が不足していることに加え、個人の自助努力意識が薄いという面もありそうです。
おわりに
金融教育がなされなかった世代については、自身で金融について学ぶことも大事でしょう。また、信頼できる専門家を探すのも効果的だと思います。色々とニュース等で社会問題について見聞きする際、ぜひ現代の社会で自分自身に何ができるのか、何をするべきかについても考えるきっかけとしてほしいと思います。
国や企業に頼って生きる時代は終焉を迎えています。自助努力の時代へと移行している中、将来について準備している人と、そうでない人との格差は、今以上に広がっていくのではないでしょうか。
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