個人型確定拠出年金「iDeCo」で定期預金に運用してはいけない理由
LIMO / 2019年10月29日 20時45分
個人型確定拠出年金「iDeCo」で定期預金に運用してはいけない理由
年金のことを普段から意識しているという人は多くないと思いますが、例の「老後資金2000万円」問題でにわかに世間の関心が高まっています。
まずは年金の全体像を見てみる
年金というとなんとなく仕組みが分かりづらいイメージがありますが、全体像は意外とシンプルです。
図表1をご覧ください。年金には以下の3種類あることがわかります。
(1)20歳以上の日本人の誰もが加入しなければならない国民年金
(2)会社員となった場合の厚生年金
(3)企業が年金保険料を負担する確定拠出年金(企業型DC)、確定給付企業年金(DB)、厚生年金基金、退職等年金給付(公務員)
自営業者は(1)のみの加入、サラリーマンは(1)(2)もしくは(1)(2)(3)の組み合わせで年金に加入することになります。
つまり、ご自身の雇用状況で加入している年金や、将来もらえる年金額が変わってくるのです(相対的に、サラリーマンや公務員の方が自営業者よりも年金受給額は多い)。
やっぱり「元本確保型」がいいのか?
ここまでは全体像ということでシンプルですが、実際には企業によって(3)の部分では確定拠出年金と確定給付年金が混じっています。これが社員にとって年金が複雑に思える理由の一つなのですが、年金は企業がほぼ自動的に用意した社員の福利厚生の一環ですから、社員はその中身についてあまり気にしてこなかったという実態もあるのではないでしょうか。
加えて、最近は企業型DC似たiDeCo(個人型確定拠出年金)制度も導入されています。こうした状況では、加入者によっては自身が何の年金に加入しているか認識されていない場合もあります。事実、筆者の長男は企業型DCの申込書を自宅に持ってきて、「親父、このカクテイキョシュツネンキンって何?」と聞いてきたぐらいですから。
年金制度の趨勢としては、確定給付型から確定拠出型に変わってきています。ですので、加入者はこの内容をよく理解しないと不利益を被る場合があります。
確定給付型の場合は会社が運用責任を負いますが、確定拠出型の場合は加入者たる社員自らが運用内容を決めなければなりません。愚息の質問ではありませんが、何に運用するかを自分で決めないとならないのです。
残念ながら、確定拠出年金を取りまとめている人事部は、その中身については運用対象資産が多数のためしっかりした説明はできていないはずです。そういう意味では社員は放ったらかしにされています。結局、社員もあれこれ考えるのが面倒くさいので、企業確定拠出年金の運用対象資産の6割程度が預貯金等の元本確保金融商品になっているのです。
預貯金が悪いというつもりはありませんが、非課税メリットがあったとしても実質的に金利がつかない預金で運用しても元本以上には増えません。加入者は大事な年金の運用でリスクを取りたくないと思っているかもしれませんが、確定拠出年金は数十年の運用期間を生かしてより高いリターンを求めたほうが合理的なのです。
運用リターンがマイナスになるケースも
さらに年金システムをわかりにくくしているのが、iDeCo(個人型確定拠出年金)です。企業型確定拠出年金の口座管理料は原則企業負担ですが、iDeCoの場合は個人負担です。これが以外とバカにならず、金融機関により月あたり200円〜600円程度かかります(積立を行う場合)。
たとえば、iDeCoの資産がすべて預貯金の積立で100万円あるとします。定期預金金利は年0.01%程度ですから。年間100円の利息が得られます。一方で、年間2400円〜7200円程度の口座管理料が運営管理機関(確定拠出年金を運営する金融機関)によって徴求されます。つまり、その手数料を差し引くと運用リターンがマイナス0.23%〜0.71%になるわけです。
政府は勤労者の資産形成のため様々な仕組みを用意していますが、あくまでも使い手である年金加入者がしっかりその仕組みと運用方法を決めないと絵に描いた餅になりかねません。
今回は少々堅苦しい話題となりましたが、みなさんの老後資金を左右するのは年金です。今一度、ご自身のねんきん定期便を確認したり、iDeCo加入を検討したりされてはいかがでしょう。
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