私の失敗:滞納保証事業で学んだ新規ビジネス立ち上げの鉄則
LIMO / 2019年11月2日 20時45分
私の失敗:滞納保証事業で学んだ新規ビジネス立ち上げの鉄則
成長し続けるビジネスの仕組みである「ストックビジネス」についてお伝えしていく本シリーズ。今回は、過去の失敗経験から、新規事業立ち上げのタイミングについて考えます。
「テナント安心保証」で経験した大失敗
私には大きな失敗経験があります。10年ほど前、今の会社のメイン事業が仲介業でフロービジネスだったころの話です。「テナント安心保証」という商品を開発して大々的に販売しました。
今では賃貸で住宅を借りる場合に連帯保証人よりも保証会社を付けるのは当たり前ですが、当時、住宅の滞納保証が広まってきたころで、オフィスにも同様の商品があってもいいのではないかというニーズが感じられたのです。
そこでオフィスの賃宅契約専門の滞納保証サービスを作ったのですが、結果、私の”しくじり先生ネタ”になりました。
1年で60件が目標でしたが、1年半必死で営業をして30件くらいの契約までで、あえなく撤退です。実際の損失は3千万円くらいだったと思います。そこに賭けた時間とエネルギーを考えればもっと大きな損失でしょう。
当時はまだ売上が2〜3億円程度だったのでこの痛手は大きかった。そのときの体験は今でも忘れられません。
事業が立ち上がるまでの期間を甘く見るな
当時、競合商品は1つ2つあったのですが、競合他社の商品には法的な弱点のような部分が見受けられ、そこを改善すれば後発の私たちでも行けるのではないかと考えたうえでの決断でした。
日本でもトップクラスである友人の弁護士がそばにいるというのも過信の原因だったのかもしれませんが、連日徹夜をしながらも半年で素晴らしい商品が完成。しかし、売れなかったのです。
保険商品のようなものは大数の法則という確率でリスクを計算したならば、損益分岐点となる多くの契約件数まで一気に増やしていくか、もしくは再保険ををかけてリスクをなくしてじっくり売っていくかの2つのやり方があります。
当時、このようなサービスの再保険を扱ってくれる保険会社は2社しかなく、そのうち1社がこの再保険に見切りをつけて撤退するということで結局は1社だけ。それもあって再保険コストが高くなってしまい、のんびり売るわけにはいかない事業計画となったのです。
また、実際に事故の実務経験はこれから蓄積する状態でしたので、審査基準を高くしたことも売れない要因だったと思います。
結果的に失敗から学んだことがあります。自社を取り巻くリソース(ヒト・モノ・カネ)の分析をする際、自分勝手に期待値を割増ししてしまったということです。今考えれば、そこには自分の願望も入っての割り増しがあったと思うのです。
そしてもう一つの判断ミスは、「時」つまり「タイミング」です。オフィス不動産業界にいるので、オフィスビルオーナーに売りやすい立場にはあったのですが、その時点で一気に加速するタイミングではなかった。
それならば立ち上がる期間を長めに見てそれを想定する体力で挑むか、それを前提にした商品設計にすればよかったわけですが、半年で立ち上がるという読みは間違いでした。
つまり、自分たちの体力に見合わない設計をしてしまい、ストックビジネスを構築する際の最小ユニットの設計が悪かったというのが私の結論です。2007年の時点では、冷静に考えれば立ち上げに2年はかかります。「これはまずいかもしれない」と気づいたのは、販売を開始して4カ月目くらいでした。
基本設計は大事です。どんなにいい商品、アイデアでも自社のリソースを考慮した商品設計にしなければリスクが高まります。私の焦りから、「機は熟しているから短期で行ける」と判断を誤ったわけです。
とても高い勉強代を払いましたが、その時に全身全霊で商品開発に当たったおかげで、かろうじて「賃料保証を合法で仕組化できるノウハウ」は残りました。
おわりに
当時、全力でやったことが唯一の財産になりましたが、神は見捨てなかったというか、今頃になってこのノウハウを使うことになりました。そして、「ストックビジネスの構築法」×「賃料保証のノウハウ」を組み合わせることで、オフィスから駐車場という分野に変えて、今は強力なストックビジネスが完成しています。
ストックビジネスは時間を味方にする仕組みです。商品サービスをストックビジネスで設計しておけば時が味方して立ち上げに不安がありません。あの時以来、私はあらゆる場面で「立ち上げの期間」と「自社のリソース」と「将来ストックビジネスになるのか?」を加味して判断しています。
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