なぜ「名もなき育児」が母親を追い詰めるのか~小さな命を守り愛するということ
LIMO / 2019年11月3日 10時45分
なぜ「名もなき育児」が母親を追い詰めるのか~小さな命を守り愛するということ
「名もなき家事」という言葉が、共働き夫婦の家事分担をめぐる議論の中ですっかり浸透してきました。日常的にこなさなくてはいけない膨大な業務量にも関わらず、家族からは「やって当たり前」と思われ、達成感も得にくいために負担感が大きいといった点がたびたび取り上げられています。
この「名もなき家事」同様に、筆者は「名もなき育児」もまた多くの母親を追い詰めていると常々感じています。育児の場合、家事以上に正解やゴールが不透明だからです。筆者の実際の育児経験からお伝えします。
「死なさない」という24時間体制の最大ミッション
「育児」と聞くと、授乳やオムツ替え、離乳食やご飯を作って食べさせる、お風呂に入れる、寝かしつけなどがすぐに思い浮かぶでしょう。しかし、これらは育児の中でも大変でありながらもとてもわかりやすいタスクです。母乳をあげる授乳以外であれば、夫にやり方を教えて「やっておいて」とお願いすることも比較的難しいことではありません。
一方、実際に育児をしてみると、ひとつひとつのタスクは完了しても、常に「子どもを死なさないようにする」という最大のミッションが付きまといます。これがなによりも大変で、多くの母親が追い詰められる要因のひとつとも言えるのではないでしょうか。
たとえば、寝ている時にはちゃんと呼吸をしているかの確認だけでなく、汗をかきすぎないように室温を調整し、風邪をひかないように布団がちゃんとかかっているか、お腹が出ていないかをチェック。体調が悪そうな時には、今すぐ夜間救急に連れて行くか朝まで待つかを、子どもの様子を逐一見て判断しなければいけません。
仕事や他の用事を調整して、毎シーズン、毎月のように打たなければいけない予防接種のスケジュールを確認し、小児科を予約して予防接種を受けさせるのも、大きな仕事。
子どもの月齢にもよりますが、一人で遊んでくれている時間も、油断して昼寝なんて決してできません。オモチャや小物の誤飲や転倒による怪我がないように神経を使わなければいけないので、その時間は育児から解放されるどころか、むしろ育児真っ只中とも言えます。
このように、「死なさない」という育児は細分化するとやるべきことが膨大で24時間体制という大変な労力を必要とするものだと、筆者は実際に育児をしてみて感じています。
「愛着障害」にならないために、やってもやっても足りない愛情表現
昨今、「愛着形成」や「愛着障害」という言葉をよく耳にするようになりました。養育者が深い愛情を持って子どもを大事に育てることが、子どもの脳の発達だけでなく、将来にも大きく影響するという考え方です。
幼少期に愛着形成がうまくなされなかった子どもは、自己肯定感が低いために対人コミュニケーションがうまくできなかったりストレスに過敏な体質になったりするので、社会生活をうまく送れないこともあると言います。
保育園に預けていない間は1歳3カ月の子どものワンオペ育児をしている筆者は、平日の夜や土日にふと苦しくなる時があります。
普段からなるべく、「生まれて来てくれてありがとう」「愛してるよ」と言いながらぎゅっと抱きしめたり両親が仲の良い姿を見せたりするように気をつけています。また、忙しい夫のことを子どもが父親として信頼できるように育てることもワンオペ妻にとっては名もなき育児。平日には子どもと顔を合わせることがほとんどない夫が、なんとかして子どもとたくさんコミュニケーションを取れるように調整して愛着が生まれるように頑張っている筆者のようなワンオペ妻も多いでしょう。
しかし、いくらやっても「これで愛情は十分に伝わっているのだろうか」「愛着障害にならないようにもっとやってあげられることがあるのでは」と自問自答してしまいます。「愛着形成のために」と言っても終わりも正解もないために、常に「やってもやっても足りない」という常に不安な状態になってしまうのです。
授乳やオムツ替えなど名のあるタスクをこなし、「死なせないように」身の安全を確保するだけでは足りない、この愛着形成も名もなき育児の一つではないでしょうか。
育児も家事同様に名前のないやるべきことが多すぎる
家事同様に、わかりやすく名前の付いたことよりも、名前の付いていない見守りや安全確認などがあまりにも多いのが育児。むしろ、名前が付いていないものの方が子どもの命や将来に大きく関わってくるとも言えます。
だからこそ、子どもは絶対的に母親一人だけではなく両親二人で育てることが大事なはず。さらには祖父母や地域、保育園、ベビーシッター、行政サービスなどとともに育てることがスタンダードになることで、今現在子育てで追い詰められている母親が一人でも減っていくのではないかと思います。
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