定年なのに住宅ローンが終わらない!老後破産しないためにやるべきこと
LIMO / 2019年11月16日 19時15分
定年なのに住宅ローンが終わらない!老後破産しないためにやるべきこと
「人生で一番高い買い物」といわれるマイホーム。「いつかは欲しい!」と考えている人も少なくありませんよね。一方、「定年が近いのに住宅ローンがまだ残っている」という悩みを抱える人も増えています。定年までに住宅ローンが完済できないと、それが老後の重い負担になってしまう可能性も否定できません。
負債に占める住宅ローンの割合
はじめに、総務省統計局の「家計調査報告[貯蓄・負債編]平成30年(2018年)平均結果の概要(二人以上の世帯)(https://www.stat.go.jp/data/sav/sokuhou/nen/index.html)」をもとに、住宅ローンを抱えた世帯の貯蓄と負債のリアルをみていきましょう。
下記のグラフは、「借金がある」と回答した世帯(負債保有世帯)のみを対象とした貯蓄現在高と負債現在高の平均値を世帯主の年齢階級別に示したものです。(グラフ「世帯主の年齢階級別 貯蓄・負債現在高」を参照)
負債現在高に占める「住宅・土地のための負債」の割合は下記のようになっています。(グラフ「世帯主年齢階級別 負債現在高の内訳」を参照)
貯蓄現在高は年齢が上がるにつれて増加して、70歳代以降が最も高くなっています。一方、負債現在高のピークは30歳代で、2000万円を突破しています。いずれの年齢階級でも負債現在高のほとんどを「住宅や土地のための負債」が占めていることがわかりますね。
負債現在高は年齢が上がるとともに減少して、60歳代では773万円(住宅や土地のための負債は610万円)まで下がっています。しかし、70歳以降の負債現在高は60歳代の数字を上回っています。このうち、「住宅や土地のための負債」は592万円と60歳代とほぼ同程度で、ほとんど減っていません。一方、その他の負債(住宅・土地以外の負債や月賦・年賦)が増えたために負債現在高が830万円にアップしているのです。
住宅ローンは何歳まで申し込めるのか
「住宅ローンは何歳まで申し込めるのか」や「何歳までに完済すればいいのか」は、金融機関やその商品ごとに異なります。たとえば、住宅金融支援機構が民間の金融機関と提携して提供している「フラット35」を見てみましょう。
親子リレー返済を利用しない場合に申込みができる年齢は70歳未満、完済の上限を80歳としています。
とはいえ、実際には50代以降で住宅ローンを利用する人は多くありません。2018年に国土交通省が公表した「平成29年度住宅市場動向調査報告書(https://www.mlit.go.jp/common/001236086.pdf)」によると、注文住宅や分譲戸建住宅、分譲マンションを初めて購入する年齢は「30歳代」が最も多くなっています。注文住宅(建て替え除く)の48.1%、 分譲戸建住宅の55.1%、分譲マンションの48.4%が30歳代の購入者です。次に多いのが「40歳代」で、2~3割弱程度を占めています。
40歳で35年ローンを組んだ場合、繰り上げ返済なしで完済するのは75歳です。65歳まで働いたとしても、10年分のローンが残ってしまう計算です。たとえば、定年の時点で600万円の住宅ローンが残っている場合なら、利息を無視して単純に計算しても1年間で60万円、1カ月に5万円ずつを返済していかなくてはなりません。
住宅ローンは定年までに完済しよう
ここで気になるのは、残ったローンを返していけるのかではないでしょうか。総務省の「2018年度の公的年金額と2017年の高齢者世帯の収支(https://www.meijiyasuda.co.jp/mybizsupport/contents/common/bizinfo/myilw/pdf/report_01.pdf)」は、夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯では、毎月約5.5万円の赤字が出ると指摘しています。65歳で退職して85歳まで生きたとすると、20年間で1320万円の老後資金が必要です。余裕がある生活をしたい場合は、より多くの備えが必要になりますし、住宅ローンの返済が残っていると家計の赤字はさらに膨らんでしまうのです。
住宅ローンを申し込むとき、担当者に「繰り上げ返済していけば、定年までに完済できますよ」「完済できなくても退職金で一括返済すれば大丈夫ですよ」などと言われて、よく考えずに申し込んでしまう人がいます。しかし、子どもの学費がかさむなどして、「思うように繰り上げ返済ができなかった」というケースは決して珍しくありません。
そもそも、退職金の支給は会社の義務ではないため、「その時になってみないと正確な金額がわからない」という人も多いのではないでしょうか。
それに退職金が出た場合は、基本的に老後資金に充当するのが望ましいでしょう。老後資金の不足分は貯蓄で補うことになります。住宅ローンを組んでいるなら、退職金をあてにしないでコツコツと繰り上げ返済を続け、定年までに完済することを目指しましょう。
広がる高齢者の格差
最後に、高齢者世帯には貯蓄がいくらあるのかについて紹介します。先にみた総務省統計局の資料によると、60歳以上の高齢者世帯の貯蓄現在高は、平均2284万円、中央値は1515万円でした。
貯蓄現在高が4000万円を超える世帯が16.6%を占めている一方で、貯蓄現在高が300万円未満の世帯も15.9%存在します。高齢者の間でも貯蓄格差が広がっている様子がうかがえますね。
結婚したらマイホームを持つのが当たり前という時代もありました。しかし、「年齢が上がっても給料が上がらない。住宅ローンを完済できる自信がない」とマイホームの購入に二の足を踏む若者も増えています。人生100年時代に突入した今、「定年までに住宅ローンを完済できるのか」「老後資金はどうするか」を、じっくりと考えてみる必要があるのではないでしょうか。
【参考】
「家計調査報告[貯蓄・負債編]平成30年(2018年)平均結果の概要(二人以上の世帯)」 総務省統計局
ずっと固定金利の安心「フラット35(https://www.flat35.com/index.html)」
「平成29年度住宅市場動向調査報告書」 国土交通省
「2018年度の公的年金額と2017年の高齢者世帯の収支」 総務省
【ご参考】貯蓄とは
総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]によると、貯蓄とは、ゆうちょ銀行、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧郵政公社)、銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金、生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価、債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と、社内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいいます。
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