「日本ワイン」人気が上昇中。「国産ワイン」との違いは何?
LIMO / 2019年11月15日 21時15分
「日本ワイン」人気が上昇中。「国産ワイン」との違いは何?
来週、11月21日(木)は、ボージョレ・ヌーボーの解禁日。ボージョレ・ヌーボーとは、フランス産ワインの新酒で、毎年11月第3木曜日に販売解禁となります。日本では恒例イベントとしてすっかり定着しており、第3木曜日の午前0時になると街のあちこちで初飲イベントが開催されています。
緩やかに拡大中の国内ワイン市場で健闘する国産ワイン
新酒の解禁が恒例イベントになっているくらいですから、日本にはワイン愛好家が多いのでしょうか?
国内のワイン市場は伸びているものの、まだまだ小さい状況にあります。ワイン市場=1とした時の割合は、ビール市場で約7.5(注:新ジャンルを含まない)、発泡酒が約2、チューハイが約3、焼酎が約3という規模ですので、かなり小さいことになります。
ウイスキーよりは大きいと見られますが、消費量と課税出荷量で差異があるようです。こうして見ると、やはり、ワイン愛好家は少数派と言わざるを得ません。
それでも、ワイン市場は緩やかな拡大を続けています。国内の消費数量(単位:キロリットル)の推移を見てみましょう。なお、最新のデータは2017年実績となります。
1980年度: 43,965(輸入ワイン構成比:24.8%)
1985年度: 62,142(同:31.6%)
1990年度:118,186(同:49.6%)
1995年度:144,294(同:54.2%)
2000年度:266,068(同:60.7%)
2005年度:238,207(同:61.7%)
2010年度:262,475(同:67.9%)
2015年度:370,337(同:70.2%)
2016年度:352,492(同:69.3%)
2017年度:363,936(同:68.7%)
2012~2015年は4年連続で最高を更新した後、2016年は8年ぶりの前年割れとなりました。これは、気候変動により南米などでブドウの収穫量が大幅減少になったことが一因とされています。
しかし、2017年は再び増加基調に回帰し、2015年の水準に迫りました。また、直近10年間で約5割増、直近20年間で約2.4倍、30年前比では約6倍にも拡大しています。元々の規模が小さいとは言え、漸減傾向に歯止めがかからないビール市場とは好対照にあります。
ところで、前述した国内ワイン消費量推移の特徴として、輸入ワインの拡大が挙げられます。これは、1985年のプラザ合意以降の円高定着により、輸入ワインの価格が大きく下がったことが主要因ですが、逆に言うと、国産ワインが伸び悩んだとも言えます。
そうは言っても、最近は国産ワインも健闘しています。実際、2年ぶりに増加した2017年は、全体の伸び率+3.2%に対し、国産ワイン+5.3%、輸入ワイン+2.4%となりました。これは、国産ワインの品質が向上したことに加え、いわゆる“ご当地ワイン”を始めとした商品ラインナップ拡充も一因と見られます。
昨年10月から「日本ワイン」と「国産ワイン」が区別された
さて、その国産ワインですが、昨年(2018年)10月から「果実酒等の製法品質表示基準(国税庁告示)」に従って、ワイン産地の表示方法が厳格化されました。
まず、国内で製造されたワインについて「日本ワイン」とその他の「国産ワイン」を明確に区別することになりました。「日本ワイン」というのは、日本国内で栽培されたブドウのみを原料として、日本国内で醸造されたもの。「国産ワイン」は、海外から輸入したブドウや濃縮果汁を使って国内で製造されたものです。
また、「日本ワイン」に限り、条件を満たせば地名を表示することができます。具体的には、〇〇という産地で採れたブドウを85%以上使用していれば「〇〇ワイン」というように産地を表記できます。
つまり、従来は「〇〇ワイン」といったご当地ワインでも、ブドウは✕✕産(例:山梨県産)だったケースが少なくなかったのです。つまり、単に製造しただけの地域をワイン名として表示することが禁止されたと考えていいでしょう。
また、近年は「日本ワイン」の人気が高まりを見せています。その背景にはワイン特区という構造改革特区制度における酒税法の特例措置により、小規模ワイナリーが全国的に増えていることがあります。
こうした新しいワイナリーでは、おいしさを追求する一方で、農薬や亜硫酸(酸化腐敗防止のための食品添加物)を極力使わない努力をしているところが少なくありません。また、小規模であるゆえに人気が出た造り手のワインはあっという間に売り切れ、入手困難なものもある状態です。
実は、上記の規制は海外ではとうの昔に実施済みですが、ようやく日本でも適用されるに至りました。それは、これから日本からワインを輸出していく上で、世界と同じルールにする必要があったためですが、遅過ぎると言えば遅過ぎます。
海外ではワイン産地の正確な表示を厳しく求められます。そして、輸出云々の前に、この産地表示の厳格化が、人気を高めつつある日本ワインの需要動向にどのような影響をもたらすのか注視したいところです。
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