親が子を自殺に追い込まないために知ってほしいこと~リアル高校生の実感
LIMO / 2019年11月28日 20時15分
親が子を自殺に追い込まないために知ってほしいこと~リアル高校生の実感
今年の7月16日、政府が閣議決定した「自殺対策白書(2019年版)によると、未成年者の自殺死亡率が統計を取り始めた1978年以降、最悪の結果となったそうです。
自殺の原因で目立つものは、小・中学生では「親子関係の不和」や「家庭のしつけ・叱責」、高校生・大学生では「学業不振」や「進路」など。こうした状況は、家族や周囲のサポート次第で改善できるのではないかと感じたのが正直なところです。
そこで、現在高校生である筆者自身や筆者の周辺で実際に起きた出来事を中心に、思春期の少年少女の心を折ってしまう家族の言葉や行動、逆に弱った心をサポートするオアシス的な対応について考えてみたいと思います。
「子供のために」が子供を追い詰めることも
多くの親は「子供のために」と考え、将来、子供が困らないように助言やアドバイスをするものです。それはよくわかっているのですが、そうした行動や言葉が過ぎると、子供のヤル気を削ぎ、プレッシャーを与え、子供を追い詰めることもあるのです。
ここ数年、特に問題視されている「教育虐待」は、親が子供の教育に熱心になりすぎてしまったために、暴言や暴力で子供の精神や身体を傷つけることを言います。また、教育虐待をおこなう親自身も、自分の親から同じように教育虐待をされた経験を持つことが多いとされ、「虐待の連鎖」についても懸念されています。
しかし子供は親のものではありません。自分で考え、行動する力を持っています。また、まだまだ未熟ではあるものの、自分の力に気づいたり興味のあることを伸ばしたいという気持ちが芽生えたりする過程でもあります。
実際、高校生である筆者の立場からすれば、親が「あなたのために」としてくれていることがそもそもプレッシャーになってしまうので、子供のことを信頼して見守ってほしいと感じることが多々あります。
また、「お父さんの小さい頃は…」「お母さんの若い頃は…」など、苦労話から説教に入るパターンだと、子供は面倒臭いと感じて「ハイハイ」と右から左に流してしまうため、効果的とは言えないと思います。
たとえば、将来の進路などについて話すときも、口うるさく説教したり監視したりするようなことはせず、ニュースやインターネットなどを子供と一緒に見ながら、次のように言ってみてはどうでしょうか。
「〇〇は、この人みたいに絵を描くのが得意だから、デザイナーになるっていうのもアリだよね」
「40歳で突然リストラはきついよね。いまの時代、会社もどうなるかわからないし、手に職というか、資格を取っておくことも必要なのかな? ○○は、どう思う?」
こうした自然な会話の流れの中でアドバイスや意見をサラリと伝えると、子供も素直に受け止めやすいでしょう。そして、子供が頼ってきたときには、しっかりと話を聞いてあげてほしいと思います。
学校へ行きたくないという子供への間違った対応
子供が学校に行けなくなるという状況には、いじめや学業不振、進路に関する悩みのほか、友人とのやり取りに気を使い過ぎて疲れてしまうなど、さまざまな原因があります。
すぐに解決しようと焦ってあれこれと聞き出そうとせず、まずは悩んでいることや気持ちの整理がつくまで「学校に行きなさい」と言わずに待つことが、事態を良い方向にもっていくカギになるケースが少なくないと思います。
学校の先生など周囲の大人は、学校や友達と過ごす時間の大切さを説き、学校へ行かないと将来の選択肢が狭くなることばかりを伝え、「だから、学校に行きなさい」という話になるのです。
そこで親も同じように「学校へ行きなさい」と言ってしまうと、子供の心のよりどころや居場所はなくなってしまいます。また、親に対する不信感が芽生え、もう二度と相談したくないという気持ちにもなるでしょう。
こうして学校と親両方が追いつめすぎると、最悪の場合は悩みを抱え込んで自殺をしてしまうかもしれません。
小・中学校は義務教育ですし、親にとっても子供が「学校へ行かない」という選択肢は選びにくいことでしょう。しかし、「学校にいかなくてもいいよ」と言ってもらえると、本人はとても気が楽になるはずです。そして、大人に転職や天職という言葉があるように、子供にもそれぞれ輝ける場所があるということも理解してほしいと思います。
また、「学校に行っていないのだから」と家の中に閉じ込めてしまうと、世間に対して引け目を感じてしまい、ひきこもりの原因になりかねません。
親が「〇〇と一緒に過ごす時間が増えて嬉しい」と胸を張って、買い物や映画、旅行などに連れて行き、子供の心をリフレッシュしてあげてはどうでしょうか。ただし、学校の友達と会うのを嫌がる場合は無理をせず、まずは校区外のショッピングセンターや県外旅行などがいいかもしれません。
もちろん、ただ単に家の中でゴロゴロとさせるのではなく、子供が落ち着いた頃を見計らって、下記のような「学校へ戻る以外の方法」を提示してあげることも大切だと思います。
・適応学級へ通う
・フリースクールへ通う
・フリースクールの認定を受けている塾へ通う
・不登校の子も受け入れている通信制高校へ通う
気をつけなければならないのは、進学や就職といった将来のステップアップの段階で、子供本人が学校に行けなかったことを引け目に感じてしまうことです。そうなると、なかなか次のステップに進めず、長期のひきこもりに発展してしまうこともありえます。
筆者の経験からは、いま通っている小・中学校の名前で卒業証書が出る適応学級や、不登校の子供でも通えるような通信制の高校がいいのではないかと思います。
未来への希望が持てない
子供はネットやテレビ、そして親や周囲の大人たちから情報を得ることが多いため、ネガティブな情報ばかりを受け取ってしまうと、将来への希望が持てず悲観的になるおそれもあります。
いろいろな社会問題や景気の変化で困難なことがあるということは認めつつも、さまざまな扉や道があることを示し、なるべく明るい方向へ話を持っていくと子供の気持ちもやわらぎます。
たとえば、「お前たちの世代は年金ももらえないだろうな」というような突き放した言い方をされると、子供は不安になります。
「〇〇の世代は年金が十分にもらえない可能性があるかもしれないから、民間の個人年金やiDeCo(イデコ)なんかで補っておくと安心が高められるわね」など、不安はあるけれど、不安をやわらげる方法があることも教えてもらえると嬉しいし、希望が持てるものです。
おわりに
思春期は、誰にも悩みを相談できずに抱え込んでしまう傾向があります。ただ、「どうしたの?」「何かあった?」などと頻繁に声をかけられると、逆に言いづらくなってしまうこともあるため、普段から変わった様子がないか常に観察してもらえるのがありがたいと感じます。
そして、変化があったときには、よいタイミングで声をかけてもらえると、こちらも相談しやすくなり、自分の中での限界までの幅が少し広がる感じがするのです。ここまで書いてきたように、助言を押しつけるのではなく、子供の意見も尊重し、子供の力も信じてもらいたいです。
また、親が煮詰まっているとどうしても子供に伝わってしまうので、親自身も悩みを抱え込まずに祖父母や友人、周囲の人たちと連携して子供の悩みを解決してあげてください。
1人でも多くの未成年者が、自殺を考えずにのびのびと生きられる社会になれば嬉しいと思います。
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