「ダブルケア」を担う女性たち。家庭崩壊を招く「2つの問題」
LIMO / 2019年11月27日 19時15分
![「ダブルケア」を担う女性たち。家庭崩壊を招く「2つの問題」](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushin1/toushin1_14606_0-small.jpg)
「ダブルケア」を担う女性たち。家庭崩壊を招く「2つの問題」
睡眠も十分に取れないまま、育児に日夜奮闘しているママたちも多いことでしょう。そんなときに、急に親の介護がふりかかってきたらどうすれば良いのでしょうか。
「時間的にも経済的にも大変なことになりそうだ」ということは容易に想像できますよね。育児と介護の両方を同時に担うことを「ダブルケア」といいます。
ダブルケアの現状
晩婚化の影響で、育児をする世代が同時に親の介護も担うケースが増えています。たとえば、第1子を出産したのが40歳だという場合、その親が70歳を超えている可能性も十分にあるでしょう。
2016年に内閣府男女共同参画局が実施したWebアンケート(※1)によると、ダブルケアを担う男性の約6割、女性の約7割が30~40歳代です。また、「ダブルケアをメインに担当している」と答えた人は、女性の約半数、男性の約3割でした。
ダブルケアに直面する前に就業していた人のなかで、ダブルケアをきっかけに働き方を変えなくて済んだ人の割合は男性の約半数を占めています。ところが、女性では「仕事を減らした」人が21.2%、「無職になった」人が17.5%存在します。ダブルケアのしわよせが女性に多く及んでいる実態がうかがえますね。
避けて通れない2つの問題
親の介護が必要になったときに考えなくてはならない問題は主に2つあります。「介護にかかるお金はどうするのか」、「だれが介護を担うのか」という問題です。
親に十分な老後資金があるなら、有料老人ホームなどの施設に入ってもらうのも1つの方法でしょう。自宅で介護をする場合でも、ヘルパーや家政婦を利用するなどして、子世帯の日常を大きく変えずに対処できる可能性もあります。
しかし、親に十分な資産がない場合には選べる選択肢が限られてきます。介護にかかる費用や担い手の負担がすべて子世帯にかかってくるために、それまでの生活が一変してしまう可能性も出てきます。「子どもの教育費が削られるのではないか」と不安になる人もいるでしょう。最悪の場合、子世帯の家計が破綻するおそれすらあるのです。
一方、親の資産に関係なく、「親を施設に入れたくない」「世間体があって施設に入れにくい」と感じる人もいるのではないでしょうか。「だれがどこで介護をするのか」という問題が、親戚を巻き込んだ大きなトラブルに発展することもまれではありません。
家庭崩壊に至る可能性
内閣府男女共同参画局の調査結果からは、収入の多い男性が家計を支えて、女性がダブルケアの当事者になるケースが多いことがわかります。
多忙な育児に慣れない介護が加わるために、ダブルケアの当事者には体力的精神的に大きな負担が集中してしまいがちです。一方、家計を支える側にも、「しっかりお金を稼がなくてはならない」というプレッシャーがかかってきます。
ダブルケアのつらさから逃れるために、「介護離婚」を選ぶ人も増えています。たった1人で働きながら介護を続けるのは難しいため、残された側が介護離職に追い込まれることも少なくありません。こうなると、経済的にも非常に厳しい状況に陥ってしまうでしょう。
「親の介護が引き金になって家庭崩壊や介護破綻につながる可能性もあるのだ」という現実を直視する必要があるのではないでしょうか。
家庭崩壊を防ぐために
望まない家庭崩壊を防ぐポイントは、実際にダブルケアに直面する前に十分な準備をしておくことです。お金の問題は無視できないので、帰省したときなどに親の健康状態や資産の状況をチェックしておきましょう。兄弟がいるなら、親の目の前で一緒に資産の話をしておくと後々のトラブルを防ぎやすくなります。
とはいえ、「お金のことはなかなか聞きにくい」と感じる人も多いかもしれませんね。自分で聞き出すのが難しい場合は、ファイナンシャルプランナーや冠婚葬祭互助会などを利用して間に入ってもらうのも1つの方法です。
親が重度の認知症を発症していたり資産が少なかったりすると、施設に入れるのが難しくなることがあります。このような場合に兄弟や親戚の協力が得られると大変心強いので、日頃から良好な人間関係を作っておくことをおすすめします。
とくに、夫婦の関係は非常に重要です。コミュニケーションをこまめに取って、家族にとってベストな方法を探しましょう。
ダブルケアに備えて準備を始めよう
ダブルケアに備えて自分自身で準備できることは2つあります。1つはできるだけ貯蓄をしておくことです。思うように貯蓄ができていない人は、家計の収支をチェックして無駄な支出を見直したり、収入が入ったらその一部を貯蓄用口座に移す「先取り貯金」を取り入れたりする方法を試してみてはいかがでしょうか。
「出産後にできるだけ正社員を辞めない」「出産前から保活をしておく」といったことも、家計の安定のためには有効です。副業や資格取得にも積極的にチャレンジしましょう。
育児や介護で利用できる補助金・助成金や行政サポートのなかには、自分で申請しないと利用できないものも少なくありません。無知でいることは、損をすることと同じです。「うちの親はまだまだ大丈夫」と思っている人でも、時間を見つけて少しずつ情報収集を始めましょう。
【参考】
(※1)『育児と介護のダブルケアの実態に関する調査(http://www.gender.go.jp/research/kenkyu/pdf/ikuji_point.pdf)』(内閣府委託調査:株式会社NTTデータ経営研究所実施)内閣府男女共同参画局
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