職場でも大麻OK? 大麻容認の国・オランダの現状と裏事情
LIMO / 2019年12月1日 11時15分

職場でも大麻OK? 大麻容認の国・オランダの現状と裏事情
有名人の麻薬使用による逮捕劇が、世間を騒がせ続けています。「えっ! あのヒトが?」「信じられない!」といった驚愕の声から、「そんな感じは前からあったよね」などなど、一般人による憶測が飛び交う中、一瞬にして地位も名声も失ったセレブたち。
手を出したら最後、麻薬で身を滅ぼす恐ろしさを世間に知らしめ、社会的制裁を受るはめになる一方で、反面教師としての役割を果たしたと言えるのかもしれません。
裏社会撲滅のための容認
筆者が住むオランダは、日本の九州とほぼ同じ面積の国です。世界地図の中から探し出すのに手間取るほど小さいのですが、この国を全世界に知らしめることになった要因のひとつが、大麻の使用を容認したことです。
小国オランダが、大国に負けない存在感を世界にアピールすることになったのは、従来のタブー、つまり「大麻使用は厳禁すべき」という概念を打ち破ったがゆえと言えましょう。ただし、大麻の使用が容認されたというのは、一定量の服用を個人で楽しむことを意味し、合法化されたわけではありません。
大麻を使用しても「罰せられない」法律を、世界で初めて施行したのがオランダだったということなのです。
大麻使用の合法化は、どの国にとっても望ましくないでしょう。しかしその一方で、大麻の使用を厳禁すれば、人びとはひそかに購入するでしょうし、闇市場も増大するに違いありません。
ならば、法で定めた分量を個人で使用する、という条件つきで許可すれば、使用したい人は堂々とできることになりますから、こそこそと違法取引する必要がなくなります。それが結果として裏社会の撲滅を目指すことに通じる、とオランダ政府は結論づけたのです。
違法行為とされるのは?
大麻容認のオランダですが、違法行為は当然ですが罰せられます。それらは以下の4項目です。
大麻を一定量以上、所有すること。一定量とは1人につき5グラム(2019年11月現在)
大麻を取引すること
大麻を生産すること
大麻ではなく、麻薬(合成違法ドラッグなど)を使用、所持、取引、生産すること

ごく普通の住宅で大麻を栽培するのは違法だが、「小遣いかせぎ」のため、ひそかに行う者はあとを絶たない。(画像提供:Flickr)
つまり、友人同士や身内で売り買いするのも、厳密に言えば取引とみなされ、違法になります。ただ、警察が常に見張っているわけではないので、1.と2.は、世間一般でまかり通っているのが現状です。
3.の大麻栽培も違法です。たとえば、老朽化した牛小屋内で大麻を育てたり、自宅のふろ場を器用に改造して温室化し、観葉植物を愛でる感覚で栽培するなど、あの手この手を使って大麻の自給自足を試みるケースは後を絶ちません。しかし、発覚すればもちろん逮捕されます。
最後の4.ですが、麻薬とひとことで言っても、その種類はいろいろあります。オランダでは、健康上のリスク度が高いもの(例:ヘロイン、コカインなど)をハード・ドラッグ、それ以外の大麻やマジック・マッシュルームなどをソフト・ドラッグとして区別しています。
前者のハード・ドラッグは、全面的に使用も所有も禁じられていますが、こちらは闇取引を経て、個人間で普通に売買されることがほとんどです。

”コーヒーショップ”と呼ばれる大麻販売専門店に設置されている自動販売機。火をつけるだけですぐに使える即席マリファナタバコや、幻覚作用を楽しむための乾燥マジック・マッシュルーム(きのこ)、大麻樹脂を練りこんだマリファナ・キャンディなどを購入できる。(画像提供:Flickr)
大麻で「休憩」はOK。では職場では?
以前、筆者が某大学の定期試験場の手伝いをしたときのことです。大学生の約半数が、試験の合間の休憩時間になると、外に出ては大麻を吸っているので、これは認められているのか?と試験官に尋ねたことがあります。
返ってきた言葉は、「私も時折吸ってますからねえ。個人管理が徹底していれば、大目に見ていいんじゃないでしょうか」でした。つまり、大麻を使用するもしないも、中毒になって廃人になろうとも、すべては個人で責任を取れ、ということなのです。
では、職場で麻薬や大麻は容認されているのでしょうか。
たとえば、部下の態度に不審な点があり、休憩時間に大麻でも吸ってきたのでは…?と上司が憶測(確信)しても、これを咎めるのは厳禁です。薬物検査をさせようものなら、それはれっきとしたプライバシー侵害に相当し、逆に上司が罰せられます。
この法は昨年2018年、AVG(一般データ保護規則)により施行されることになりました。その目的は、個人データがより適切に保護されることを意図しています。ただし、航空法、海運法、道路交通法を犯すおそれがある場合はこれに相当せず、薬物検査が行われます。
兵役逃れに大麻が”活躍”
年齢にしてアラ還(暦)のオランダ人男性のほとんどは20代の頃、兵役に就く義務がありました。しかし中には、「人殺し訓練の義務化」だと反発したり、真向から拒絶する若者も多かったと言います。
そんな彼らは、徴兵面接の数日前から大麻を大量に吸い、にわか中毒者を装って、見事(?)に「病人」として兵役不適格の印をもらい受けることができたそうです(ちなみに、こうした若者たちに対しては、全国各地の老人ホームで介護士助手として働く義務が兵役の代わりに課せられていました)。
こうしてみると、大麻とのつき合い方に年季が入っているとも言えるオランダですが、それはこの国の厚生省や文部省をはじめ、政府と民間企業の重鎮らの間で徹底的に交わされた議論が法として施行されたからであり、年月を経た試行錯誤の結果であることを忘れてはならないと思います。
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