芸能人を「さん付け」する”変な子”。今になって子育ての参考になると思う理由
LIMO / 2019年12月1日 10時45分
芸能人を「さん付け」する”変な子”。今になって子育ての参考になると思う理由
年末年始の帰省で多くなるのが同窓会。数十年ぶりに同級生と会うと昔の記憶が蘇りますよね。同級生と言うと、筆者には今でも鮮明に思い出す一人の女の子がいます。
小学校1年生で同じクラスになったAちゃん。進路がバラバラになった高校以降は疎遠になってしまいましたが、他の同級生と比べても小学生の時のAちゃんは忘れることができません。それは、彼女の家庭における教育方針が、小学生だった筆者には「え? なにそれ?」と驚くことばかりだったからです。
Aちゃんが「タモリさん」と言い出したのはなぜか
Aちゃんを最初に「変わった子だなあ」と感じたのは、小学校2年生の時に友達数人でテレビ番組の話をしていた時でした。
「昨日の〇〇面白かったよねー」「××って格好いいよね」ととりとめもない話で盛り上がっていた時のこと。当時放送されていた「笑っていいとも!」の話になり、Aちゃんが「タモリさんってさー…」とさん付けで呼んだのです。
筆者たちが「え? タモリと知り合いなの?」と驚いていたところ、Aちゃんは「ううん。親に『目上の人には必ずさん付けをしなさい」と言われているから』と返答。身近な人だけでなく自分よりも年齢が上の人には、さん付けを徹底するというのがAちゃんの親御さんの教育だったのです。
恥ずかしながら当時の筆者は、この時のAちゃんとの会話で初めて「目上」という言葉を知りました。
きっと小学校2年生の時点でAちゃんはすでに「目上の人にはなぜ敬語を使うのか」「さん付けとちゃん付けの違い」といったことをしっかり親御さんから教えられていたのでしょう。もっともこれはAちゃんが、自分よりも年上の人がいない4人きょうだいの長女だったということも影響しているかもしれません。
「会ったこともない人、しかもみんなが呼び捨てしてる芸能人にまでさん付けするなんて変だ」と思っていた筆者。テレビに出ている芸能人とは、自分とは関係のないまるでマスコットみたいに特別な生き物のように見えていたので、芸能人を学校の先生や親せきのおじさんのように普通の人間として捉えていたAちゃんのさん付けに違和感を覚えたのです。
しかし、Aちゃんの親御さんは「どんな人でも礼を尽くしなさい」としつけていたのだと思います。なぜ芸能人にもさん付けしなければいけないのか。昨今のSNSやネットを中心とした芸能人に対する誹謗中傷などを見ていると、20年前のAちゃんの親御さんのしつけには先見の明があったと思わざるを得ません。
名前を大切にすることは名づけの親を大切にすること
またAちゃんは友達のことをあだ名で呼びたがらない子でした。筆者の名前が「ゆき」なので何人かの友達が「ゆっきー」と呼んでいた中、Aちゃんは頑なにあだ名呼びを拒否。「ゆきちゃん」とちゃん付けで呼び続けていました。
クラス全員が「りょっぺ」と呼んでいたりょうへい君のことも、「りょうへい君」と呼ぶAちゃん。そこには「親や祖父母が付けてくれた名前を、省略したり変えたりするべきではない。それにあだ名は本人が呼ばれたくない場合もある」と親から教えられているというのが理由でした。
小学生くらいだと、省略したり別の言葉でもじったりしてあだ名呼びすることはしばしばあります。Aちゃんの親御さんは、勝手に付けられたあだ名ひとつだけでも、エスカレートしていじめにも繋がってしまうことをどこかで心配していたのかもしれません。
そしてなによりも「人の名前を大切にする意味」についてしっかりと教えていたのではないかと思います。人の名前を大切にすることは、本人だけでなくその人の名前を名付けた人たちへの敬意でもある、と。
それは単純に「親を大切にしなさい」と言葉で説教されよりも、はるかに小学生でもわかりやすく親の大切さが実感できる教えなのではないでしょうか。Aちゃんの親御さんは、「人の名前を呼ぶ」という身近な行為がいかに重要なことかをしっかりと教えていたのでしょう。
年間読書100冊、そして小学校の先生へ
またAちゃんは小学生の時から本が大好きで、毎日のように学校の図書室で本を借りていたのが印象的でした。
本の裏表紙に貼ってあった「この本を今まで借りた人」の欄には、どの本を見てもAちゃんの名前が。学期が変わる直前の3月に行われていた、図書室の本を1年間で100冊以上借りた児童を讃える「年間読書100冊賞」も毎年もらっていたほどでした。
そんなAちゃんに筆者は「どうしていつもそんなに本を読むの?」と質問したことがありました。するとAちゃんは、「親が『本はたくさん読んだ方がいい』って言うから」と一言。
当時、私たちは小学校3年生でした。勉強よりもマンガやアニメ、ファッションやメイク、恋愛などを楽しむ女の子が増えてきていた中で、Aちゃんは当たり前のように親の助言を実行していたのでした。
テレビやネットといった誘惑が山ほどある現代、親が「読書は大事。本を読みなさい」と言って「はい、わかりました」と素直に聞く子どもの方がもはや少ないでしょう。
しかし当時のAちゃんが親の教えを守っていたことの背景には、上記のさん付けや名前のように「なぜこれが大切なのか」といった教育がしっかりなされていたからではないかと思うのです。
気になるAちゃんのその後ですが、地元の県立大学を卒業後、地元で小学校の先生になりました。今ではすっかり会う機会はなくなりましたが、Aちゃんの言動や親御さんの教育方針は筆者の心に今でも刻まれています。
あの時「Aちゃんって変な子だな」と思っていたことも、自分が子育てをする今ではとても参考にしたいことばかりです。
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