宝くじを買う人は確率を錯覚している? それとも合理的な判断?
LIMO / 2019年12月8日 20時20分
宝くじを買う人は確率を錯覚している? それとも合理的な判断?
宝くじが人気なのは、「小さな確率は大きく感じる」という錯覚と、「夢を買う」という合理的な判断によるものだ、と久留米大学商学部の塚崎公義教授は考えています。
人は小さな確率を大きく感じる
宝くじは、期待値的には(当たる確率を考えれば)損な取引のはずです。客が払った購入代金から諸コスト等々を差し引いた残りが当選の賞金となるのですから。
それでも、宝くじは人気があります。現在発売中の年末ジャンボ宝くじも、売れ行き好調なようです。その一因は、人間の錯覚にあるのだと思います。
人間は、非常に小さな確率は実際より大きく感じるもののようです。下の図のようなイメージでしょう。したがって、宝くじについても「絶対に当たらない」と考えるよりも「当たるかもしれない」と考える傾向にあるわけです。
しかも、当たった人のことは報道されますが、外れた人のことは報道されませんから、ますます「自分も当たるかも」と感じるわけですね。
同様のことは、飛行機事故に関しても言えるでしょう。非常に小さな確率なのですが、結構な確率で起きそうな感じがして、「飛行機に乗るのは怖い」と感じている人は多いようです。
事故が大きく報道されて、無事に到着した飛行機のことは報道されないので、それも影響しているのでしょうね。
あなたの命の値段の1万分の1は何円?
「あなたに危険な仕事を頼みたい。死ぬ可能性が0.01%あるが、何円払えば引き受けてくれるか?」と聞かれたら、何円と答えますか?
「あなたは、50%の確率で死ぬ危険な仕事をしている。あなたに、さらに危険な仕事を頼みたい。50.01%の可能性で死ぬことになるが、何円払えば引き受けてくれるか?」と聞かれたら、何円と答えますか?
答えは同じでしたか? 多分、二問目の方が小さな金額を答えた人が多いのではないでしょうか。「50と50.01は誤差の範囲だが、0と0.01には大きな違いがある」と感じた人は多いはずです。
ここからは余談です。「あなたは、0.01%の確率で死ぬ病気にかかっている。療す薬を持っているが、何円で買うか?」と聞かれたら、第一問と同じ金額を答えるでしょうか? 多分、第一問より小さい金額を答える人が多いと思います。
それは、人間は「事態の悪化は極端に嫌がるが、事態の好転はそれほど喜ばない」からなのです。
「あなたは、50.01%の確率で死ぬ病気にかかっている。確率を50%に下げる薬を持っているが、何円で買うか?」と聞かれたら、多分今までで最も小さな金額を答える人が多いでしょう。
では、「あなたは、100%の確率で死ぬ病気にかかっている。確率を99.99%に下げる薬を持っているが、何円で買うか?」と聞かれたら、どうでしょうか。
私としては、「すべての質問が、命の値段の1万分の1を問うているのだから、同じ金額を答えるべきなのに、人間というものは・・・」と考えて、そういう講演をしていました。しかし、ある時鋭いご指摘をいただいたのです。
「最後は全財産が正しいです。死んだら財産を持っている意味がありませんから」というのです。完璧に納得しました(笑)。
錯覚だけではない、合理的な理由も
金儲けのことだけを考えたら、宝くじの購入は「期待値から考えて不合理だが、人間の錯覚によって売れている」という否定的な評価を受けそうですが、別の面から考えれば、結構合理的なのだ、と筆者は考えています。それは、「夢を買う」ということです。
宝くじは、1枚100円から300円程度で買えます。たったそれだけで、「当たるかもしれない。当たったら、何をしようか」と考えてワクワクすることができるのです。安いものではありませんか。
W杯やオリンピックなどで日本選手を応援する人は多いですね。テレビの前で「頑張れ」と応援したからと言って、日本チームの勝率が上がるとも思われませんし、勝ったからと言って何も儲かるわけではありませんが、それでも応援したくなるのが人間というものなのでしょう。
応援すること自体が楽しいから応援しているのであれば、何も否定的に考えることはありません。金のことだけを考えれば、「応援している時間があるなら、アルバイトでもすれば良いのに」ということになりますが、人生は金のためにあるわけではありませんから。
それとの比較で言えば、宝くじの方が「当たったら儲かる」ので、当たれと念じることが合理的に感じられるかもしれませんね。念じたから当たる確率が上がるとは限りませんが(笑)。
カジノのルーレットで「当たれ」と念じるのと同じですね。株の短期売買で「値上がりしろ」と念じるのも、概ね同じことですね。いずれも、人生を楽しむための行為と考えれば、合理的だと言えそうです。
本稿は以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織、過去に属した組織、その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。
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