日本の中小企業が輝くための7つの条件~生き残るための道標
LIMO / 2019年12月15日 20時15分
日本の中小企業が輝くための7つの条件~生き残るための道標
大航海時代に栄華を極めたポルトガルは、18世紀半ばのリスボン大地震をきっかけに250年ほどにわたり長期衰退の道を辿ってきました。そんな中でも、昨今は輝くスタートアップ企業が次々と登場しています※。
一方、日本は平成の「失われた30年」といわれる”大後悔”時代を経験し、今では「衰退途上国」と揶揄されるほど雲行きが怪しい状況です。
2019年も間もなく終わりますが、来年以降、日本がポルトガルのような長期停滞に陥らないよう祈りつつも、もしもの場合に備え、中小企業はどう生きていったら良いのか、考えてみたいと思います。
※『日本人への教訓か〜衰退国家がスタートアップで息を吹き返す ポルトガルにおける劇的な起業環境改善(https://limo.media/articles/-/10495)』)。
「中小企業」のイメージは様々
中小企業の話題になると、人によってイメージが異なるため、議論が噛み合わないことも多々あります。
というのは、人は自分が見たことのある中小企業しかイメージできないからです。仮に勤めている会社が中小企業であれば、そのイメージでしょうし、商店街で個人事業を営んでいる方にとって中小企業とは近所の商店街の社長かもしれません。
法令上、中小企業は中小企業基本法第2条により業種別に定義され、たとえば、製造業では「従業員300人以下又は資本金3億円以下」、サービス業では「従業員100人以下又は資本金5,000万円以下」です。政策的な観点から定義は「○○以下」となりますので、その企業層は幅広くなります。
ちなみに、国際的に統一された定義もないため、国が違えば中小企業のイメージも違ってきます。たとえば、米国では「独立自営で、操業する分野において支配的な影響力を持たない」ことが中小企業の重要な要件です。
また、従業員数や売上高等による定義が業種ごと政策目的ごとに米国中小企業庁(Small Business Administration)等によって細かく規定されていますが、統計上、簡便に「従業員数500人未満」の定義が用いられることもあります。
欧州では、欧州委員会により「従業員数250人未満、かつ、年間売上高5,000万ユーロ以下又は総資産額4,300万ユーロ以下の企業」という定義が設けられています。さらに、ドイツ、英国など各国で独自の中小企業の定義が設けられている場合もあります。
1.「政策や事業環境のせいにしてもムダ」と覚悟を決める
中小企業向けの講演や勉強会などで、時折、国の政策や事業環境が悪いことを議論することがありますが、経営者にとってはあまり意味がありません。
中国などでは、ビジネス環境ランキングは低いですが(世界銀行:ビジネスのしやすさランキング2019年で中国第46位、日本は第39位)、新しい中小企業が続々と勃興し、成長しています。
極端な例を考えれば分かりやすいですが、例えばウガンダ。1人あたりの購買力平価(PPP)ベースのGDPは711米ドル(2018年、IMF)と最貧国ですが、多くの若者は就職先がないので生きるために開業するそうです。最貧国の事情を想像すれば、ビジネス環境のせいにはしてはいられません。
世界的に見て、日本、特に東京はインフラが最も整備された都市だと思いますが、もはや財政難の日本政府に手厚い支援政策は期待できません。将来、たとえ日本という国家が衰退しても、自分の会社だけは自立して生き延びていかねばと覚悟した方が良さそうです。
2. 自社の使命を再定義する
一般に、中小企業は一国の経済・産業の基盤だと言われます。それゆえに、程度の差はあれ、世界中で中小企業政策なるものが存在しているわけです。
しかし、中小企業の生存率はそれほど高くはありません。中小企業白書2017年版によれば、起業して5年後の生存率は8割くらいです。他の先進諸国では4〜5割です。
ただし、この統計の対象企業には小規模事業者は含まれませんので、古今東西、個人事業を含めれば5年後の生存率はおそらく2〜3割程度でしょう。世の中、そんなに甘くはないようです。
それでも生き残っている中小企業というのは、何らかの存在意義があって、社会の中で生かされるべき理由があるからだと私は信じています。
ただ、世の中は大きく変わっています。特に、日本では労働人口が減り、マーケットが縮小し、経営環境は厳しくなる一方です。環境変化に対応して自社の使命を再定義し続けていかなくてはならないでしょう。
3.「志」の前提となる世界観を養う
中小企業経営者にとって、社員と一丸となって愚直に頑張り続けるには、日本的に言えば、やはり共有できる「志」が大切なのではないでしょうか。
ただ、その「志」を決める場合、その前提として世の中の流れをどう捉えるか、世界・日本の全体像をいかに理解するか、と言うことが鍵になります。
優れた経営者は常に世の中の大きな流れを捉えようと必死に勉強しています。正解はありませんが、各自、自分なりの世界観を持つことが大切なのではないでしょうか。
4. 潜在市場規模を見極める
経験則上、社長の能力や「志」がどんなに素晴らしくても、衰退するマーケットに飛び込めば企業の持続的成長は難しいようです。世の中のメガトレンドに比べれば、経営者の能力の差などは誤差の範囲なのかもしれません。
結局、着目したマーケットは成長する分野か、という目のつけ所がポイントになります。そこを間違えば永続的な企業成長は見込めません。
高度成長時代には、飛び込む業界をさほど慎重に選定しなくとも、人口ボーナスと労働者の都市流入等による経済成長に便乗すれば良かったかもしれませんが、今後はそうはいきません。
世間は東京オリンピック(2020年)、万国博覧会(2025年)等で空騒ぎしていますが、自社の経営にはあまり関係なかったり、下手をすれば悪影響すらあるかもしれません。
皆さんの業界の長期展望はいかがでしょうか。もし縮小見通しの業界にいれば、過当競争が激化し、よほどの革新的な製品・サービスを生まない限り、先行き経営はかなり厳しくなるでしょう。
5. 経営力を鍛える
昔から「企業は人なり」と言われます。この「人」とは社長(あるいは経営チーム)です。これは中小企業・小規模事業者から大企業まで、すべての企業に当てはまるように思います。
社長の経営力にはリーダーシップという要素も含まれると思います。結局、優れたリーダーさえいれば、どんな難局も乗り越えられるということでしょう。
一方で、経営力をどうやって鍛えるかは難しい問題です。一つのヒントとして、人は厳しい状況を乗り越えるという経験でしか成長できないと思いますが、おそらく経営者も同様なのではないでしょうか。
スタートアップや中小企業を経営していれば、幾度も「死の谷」を迎えます。「死の谷」とは、一般に、新たな製品開発を進めながらも事業化する段階で資金が不足して企業として成り立たなくなることです。
また、中小企業では取引先の倒産等で資金繰りが急に忙しくなることもあります。そうした危機を乗り越えた体験こそが、後々の困難な状況で効いてくるのかもしれません。
6. 廃業という選択肢も考える
最近、NHKスペシャルで「大廃業時代〜会社を看取る(みとる)おくりびと〜(https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/46/2586196/index.html)」を見ました。廃業も最終的には選択肢の一つです。致命的な傷を負わずに廃業できるのであれば、倒産するよりは人生をやり直す道が残ります。
他の先進諸国と比べ、日本では多くの中小企業は負債過多で、経営者による個人保証・自宅等の担保提供が当たり前のようになっています。そのため、自己破産するまで経営者個人に借金がつきまとい、人生の再建が難しい社会のようです。
7. 理不尽なしわ寄せを跳ねのける
今、多くの中小企業にとって日本は生きにくい国なのかもしれません。
特に、いわゆる「下請企業」と言われる立場の弱い企業へデフレ経済のしわ寄せがきているようです。そうした中小下請企業にとっては「働き方改革」というのは一体どこの国の話をしているのかと疑いたくもなるでしょう。
もちろん中小企業経営者には、大企業からの受注を失うかもしれない、従業員を路頭に迷わせるかもしれないという恐怖感が常にありますが、もう少し自社の存在意義に自信を持ちましょう。そして、日本の経済・雇用・技術を支えてきたという誇りを取り戻しましょう。
ポルトガルの例を思い出してみてください。来年以降、たとえ国家が衰退しても、きっと個々の中小企業は輝いて生きていける道を探し出せるものと信じています。そして、その結果として、国家は息を吹き返すのだと思います。
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