「#忘年会スルー」は日本社会への抗議? こんなに共感を集めるのはなぜか
LIMO / 2019年12月13日 11時15分
「#忘年会スルー」は日本社会への抗議? こんなに共感を集めるのはなぜか
SNSで「#忘年会スルー」が人気急上昇ワードに
12月も半ばを迎え、忘年会シーズン真っ盛りです。そのような中、ここ1~2週間の間にSNS等で人気が急上昇しているのがハッシュタグを付けた「#忘年会スルー」です。先日はNHKニュースでも特集として取り上げていましたし、既に様々なネットのニュースサイトでも話題になっています。
もはや、さほど目新しいトピックではありませんが、この「#忘年会スルー」についてもう少し考えてみましょう。
主旨としては“会社の忘年会に行きたくない!”ということだが…
この「#忘年会スルー」がSNSに登場したのがいつ頃、どのようなシチュエーションなのか不明です。しかし、その後のSNSでの反応ぶりを見ると、主旨としては“会社の忘年会に行きたくない!”ということのようです。確かに、会社の忘年会に行きたくない人は少なくないでしょう。
また、最近は子供を保育園に預けて働く女性(主婦)も増えてきたことや、資格取得のために終業後に学校に通う人など、様々な事情もあるのかもしれません。こうした人から見れば、会社の忘年会は迷惑千万と言えそうです。
大きな共感を呼んだ女性社員の一言とは?
ところで、今回の「#忘年会スルー」で最も多くの共感を集め、また様々なコメントを集めたのが、NHKニュースの特集で会社員と思われる若い女性がインタビュー取材に答えた以下の発言のようです。
「自分で4,000~5,000円払って上司の話を聞くのはハードルが高い」
なかなか意味深な発言です。この発言、もう少し掘り下げてその真意を測ると、以下のようにいくつかの推論に辿り着くことができます。
上司の話を聞くのは苦痛だけど、ただで(もっと安い金額で)飲み食いできるなら我慢できる
自分で4,000~5,000円払っても、気の合う友人や恋人となら全然構わない
そもそも、仕事以外で上司とは話をしたくない
会社の忘年会に4,000~5,000円払うなんてバカらしい
この女性社員の本心はどこにあったのでしょうか?
昨年以前にも会社の忘年会に積極的でない人は一定割合いたはずだが…
また、会社の忘年会で(社員から)費用を徴収することにビックリした人も少なくなかったようです。最近の会社の忘年会は、会費制が一般的なのでしょうか。
少し昔ならば、各部署に「会議費」とか「親睦費」などの名目で、事実上、会社から忘年会費が拠出されていたケースも珍しくなかったと思われます。出費を伴わないならともかく、自腹を切ってまで行きたくない飲み会にいくほど苦痛なことはありません。
それにしても、今回の「#忘年会スルー」とは関係なく、元々、会社の忘年会に積極的でなかった人は一定割合いたと考えられます。しかし、ここまであからさまに否定的な意見が注目された、あるいは、共感を集めたのは今回が初めてかもしれません。
もちろん、SNSの急速な普及が一因だったことは間違いありませんが、なぜ「#忘年会スルー」が爆発的な人気となったのでしょうか。
1年前のアンケート調査では、むしろ忘年会に前向きな回答が多かった!
実はちょうど1年前、株式会社リクルートライフスタイルの外食市場に関する調査・研究機関「ホットペッパーグルメ外食総研」が忘年会・新年会(2018年12月~2019年1月)に関するアンケート調査を実施しました。
その調査結果によれば、
忘・新年会への参加回数は「昨年度並み」
1回あたりの予算額は増加
「会社・仕事関係」の忘・新年会の実施予定が過去最高で、20~30代で「積極的に参加したい」が増加
などの傾向が見られました。
グルメ情報誌の発行やグルメサイトの運営を行っている機関のアンケートなので、多少のバイアスがかかっている可能性に注意しなければなりませんが、それを割り引いても、忘年会に対して過度に消極的なスタンスを見出すことはできません。
今年も同様のアンケート調査を実施したのか定かではありませんが、この1年間で忘年会に対する意識が大きく変化したと思うのは筆者だけでしょうか?
この1年間で飲食費に大幅な割高感が生じている
1つ考えられるのは、この1年間で飲食費に大幅な割高感が生じたことです。ここでいう割高感とは、単純な価格だけでなく、実質的な価格上昇も含んでいます。
先ず、社員の収入減少が挙げられましょう。その最大要因は、いわゆる“働き方改革”による残業代の減少です。
日本でも外資系企業を中心に年収ベース(年間固定給に加え、業務成績に応じた賞与支払い)の報酬制度を導入するケースが増えましたが、それでも、まだ残業代によって収入が変動する人が多いと思われます。そして、事実上の大幅な残業規制を強いられ、月々の手取り額が目減りした社員も少なくないでしょう。
そのため、忘年会に限らず、飲み会や外食を控えている人も多いと推察されます。昨年もこの影響はあったと考えられますが、この1年間でそれが拡大したとしても不思議ではありません。
また、全般的に食材が高騰していることに加え、10月からの消費増税(外食は軽減税率適用外)で価格が上昇しています。こうした要因を勘案すると、忘年会を始めとする飲み会代は、思った以上に財布を直撃すると考えられます。
「#忘年会スルー」は日本社会への抗議?
もちろん、収入減や食費値上がり等とは関係なく、会社の忘年会には行きたくないという人も少なくないでしょう。それでも、この1年間における“飲み会代”の実質的な値上がりや割高感の上昇が、少なからず忘年会離れに拍車をかけていると考えられます。
言われてみると、前掲した女性社員の発言にある「4,000~5,000円」は、普通の飲み会の参加費としては高いと感じてしまうのは筆者だけでしょうか。
今回、多方面で共感を得た「#忘年会スルー」は、日々の生活が決して楽ではないこと、そしてムダなお金を使いたくないことを暗示する、日本の社会への抗議だと考えるのは行き過ぎでしょうか。こうした事情を鑑みながら、来年以降も「#忘年会スルー」がより一層大きな反響を呼ぶのか注目したいところです。
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