注目される「家族信託」ってどんなもの?親の認知症・詐欺対策をしたい人に選ばれる理由
LIMO / 2019年12月22日 19時15分
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注目される「家族信託」ってどんなもの?親の認知症・詐欺対策をしたい人に選ばれる理由
帰省して久しぶりに親の姿を見たときに、「ずいぶん歳を取ったな」と感じた経験のある人も多いのではないでしょうか。親が高齢になるとケガや病気の心配だけでなく、「お金のトラブルに巻き込まれるのではないか」という不安も出てきますよね。
高齢者が巻き込まれるお金のトラブル
70歳の父を持つTさんも親の金銭トラブルを経験しました。父親は一人暮らしをしていて、賃貸アパートを経営しています。近所に住むTさんは頻繁に父親のもとを訪ねていましたが、「まだまだ元気だと思っていた」といいます。
ところが、あるとき父親から「詐欺にあって大金を失ってしまった」と告白されたのです。「お金の管理について、もっとしっかり話し合っておけばよかった」とTさんは後悔しきりです。
高齢者をねらう詐欺の手口は年々巧妙化しており、凶悪なアポ電強盗の被害にあう人も増えています。認知症を発症している場合は、子どもの想像をはるかに超えた大きな被害にあってしまうこともあります。
「親が認知症になったら実家を売って施設に入ってもらおう」と考えている人もいるかもしれませんが、親名義の家を子どもが勝手に売ることはできませんし、認知症になると名義も変えられません。また、認知症が発覚すると銀行口座が凍結されることがあり、子どもでも親のお金を引き出せなくなってしまいます。
成年後見制度はあるけれど・・・
このようなお金のトラブルから高齢者や認知症の人を守り、法的に支援する制度が「成年後見制度」です。家庭裁判所を介して後見人を立てて、本人の代わりに財産を維持管理できるようにする仕組みだと考えるとわかりやすいでしょう。
父親を心配したTさんも1度は成年後見制度を利用しようと考えました。ところが、手続きが複雑なことや、法律専門家を利用すると毎年少なくない費用がかかってくることなどを考えて諦めたといいます。
成年後見制度には2つの種類があり、認知症を発症するなどして十分な判断能力がないとみなされた場合は、裁判所が後見人を選ぶ「法定後見」が利用できます。判断能力に問題がない場合は自分で後見人を選ぶ「任意後見」が使えますが、家庭裁判所が選任した「任意後見監督人」が「任意後見人」の仕事をチェックする場合もあります。
急速に広まる「家族信託」とは
Tさんがつぎに注目したのが家族信託(民事信託)です。家族信託は2007年に改正信託法が成立して以降利用できるようになった新しい仕組みなので、「聞いたことがない」という人も少なくないでしょう。
※「家族信託」は、一般社団法人家族信託普及協会(https://kazokushintaku.org/)の登録商標
家族信託とは、「家族と信託契約を結んでおけば、契約の範囲内でその人に財産の管理・運用や処分を一任できる」というものです。不動産や預貯金、有価証券や著作権などが信託の対象になります。裁判所が介入しないので手続きが比較的簡単なことや、初期費用はかかるものの法定後見人になった法律専門家や任意後見監督人に支払うようなランニングコストがかからないことがメリットです(ただし信託契約により専門家を選んだ場合はその報酬が発生します)。
Tさんは家族信託で父親と契約を結んだことで、父親の持つ賃貸アパートや預貯金の管理ができるようになりました。また「詐欺の被害にあうのではないか、という心配がなくなってほっとしています」とTさんは話します。
Tさんのように財産を預かる人を「受託者」といいます。一方、Tさんの父親は財産を預ける側なので「委託者」です。賃貸アパートから出る利益や預貯金は父親のために使う契約になっているので、Tさんの父親は「委託者」であると同時に「受益者」にも該当します。
このように、家族信託を利用するときは「委託者」と「受託者」、および「受益者」を明記した「信託契約書」を作成しておく必要があります。それぞれを誰にするのかは自由に決められるので、家族会議をして意思決定をしたうえで法律専門家に相談する流れになるでしょう。
家族信託は詐欺や認知症対策にも
家族信託の契約を結んでおけば、親が認知症を発症しても財産を管理する受託者の権利はなくならないため安心です。ここが、通常の「財産管理委任契約」との大きな違いでしょう。
また、信託契約のなかで本人が自由に財産の相続人を指定できることも見逃せません。単なる相続人だけではなく、その次の相続人やそのまた次の相続人も決められます。委任契約と成年後見制度、遺言書という3つの機能を1つの契約でカバーできるのが、家族信託の最大の特徴です。
家族信託は、認知症対策や詐欺対策をしたい人にうってつけの優れた仕組みといえるでしょう。ただし、親が認知症を発症してしまった後では家族信託は使えないので注意が必要です。
子から親へ話を切り出してみよう
詐欺被害にあった経験や認知症への不安などは、親の側からはなかなか言い出しにくいことかもしれません。「子どもに心配をかけてしまう」とためらってしまう人もいるでしょう。
とはいえ、親が認知症になると身動きが取れなくなってしまう可能性が高まります。そうなる前に、思い切って子どものほうから親に話を切り出してみてはいかがでしょうか。
【参考】
「家族信託®とは?(https://kazokushintaku.org/whats/)」一般社団法人家族信託普及協会
「数年後には高齢者の2割⁉親が認知症になる前に考えるべきポイント(https://limo.media/articles/-/9007)」LIMO
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