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ベビーカーは「女王の馬車」 邪魔者扱いされないのは子供が国の宝だから

LIMO / 2019年12月26日 11時15分

ベビーカーは「女王の馬車」 邪魔者扱いされないのは子供が国の宝だから

ベビーカーは「女王の馬車」 邪魔者扱いされないのは子供が国の宝だから

ベビーカーのことを、オランダ語でKinderwagen(キンダーワーへン)といいます。キンダーは「子供」、そして「ワーへン」は車を意味します。このベビーカー、実際にはベビーだけではなく、かなり成長した4、5歳の子供が乗っていたり、犬まで仲良くその隣に座っていたりすることもあります。

誰もが道をあける

ひと昔前、ベビーカーは「女王の馬車」と呼ばれていたこともあるそうです。というのは、人も自転車も自動車も、ベビーカーが来たらを道をあけて優先するのが当たり前だからです。

列車やバスなど公共交通機関内ではどうでしょうか。ラッシュアワーの時間帯(午前7時半頃から午前9時頃まで)は別として、ベビーカーは車いすや自転車を乗せる車両(コンパートメント)に、そっくりそのまま載せることができます。

どっこいしょと載せようとすると、ドア付近にいる乗客たちは、我も我もと争うようにして運び入れてくれます。親たちにとっては非常にありがたいことです。

自転車やベビーカーを乗せるための車両(コンパートメント)。ただし、自転車やベビーカーが置かれていない場合は、折り畳み式椅子に乗客は座ることができる。(画像提供:Zover.nl)

親たちはどう思っている?

それでは、ベビーカーの所有者である親たちのマナーはどうでしょうか。特別車両があるほど優遇されているのなら、他人の好意に甘えきっているのでは?と思いきや、親たちはよそ様に迷惑をかけるのではないかと非常に気にかけているのです。

オランダにも、子育て専用のオンライン・フォーラムが星の数ほどありますが、頻繁に取り上げられて盛り上がるトピックのひとつが、ベビーカーを列車やバスへ載せることへの心配や抵抗感に関してです。

いくら他人がベビーカーを最優先してくれても、親たちはお礼を言うより先に「迷惑ではありませんか?」と尋ねることを心得ています。「ベビーカーは女王様の馬車なんだから、優遇されて当たり前でしょ?」という態度は決してとりません。だからこそ誰もが気を遣って、われ先にと手助けしたくなるのではないでしょうか。

仕事帰りに保育園へ我が子を迎えに行き、帰宅する父親。(画像提供:Flickr)

子どもは「国の宝」

特別車両にタンデム(2人乗り)のベビーカーを載せ、数日間通勤した経験がある筆者も、複数の乗客たちに「迷惑ではありませんか?」と質問を投げかけたことがあります。

すると、サラリーマン風の若き男性がこう答えました。

「ぜんぜん! だって僕らは誰もが赤ちゃんだったわけでしょう? ベビーカーの中で泣き叫び、親や他人を手こずらせながら成長してきた者同士じゃないですか。迷惑だと思うとか、他人が意見するなんて、まったくナンセンスだと思いますね」

周りにいた乗客らも、口を揃えて彼の意見に賛同していました。

つまり子育てに関して、他人が苦言を呈する権利などない、ということなのでしょう。オランダには、子供は「国の宝」という考えがあるそうです。

国の将来を担う子供たちこそが、社会の中で最も大切と考えているのです。ベビーカーが目の前に陣取ったとか、赤ちゃんの泣き声がうるさいとか、それこそ子供じみた理由をつけ、国の宝を邪険に扱う理由はどこにもないということなのでしょう。

穿った考え方をすれば、ベビーカーの中でむずがっている赤ちゃんや幼児たちが、20年も経てば社会に出て働き、納税する立場になるわけです。彼らが支払う年金保険を、老いた己が年金として受け取る日も来ることでしょう。そんな青写真が、万人の中に描かれているのかもしれません。

バスや列車内にベビーカーを運び入れたところで、苦情をいうどころか、赤ちゃんを覗き込んで笑いかけるおおらかなオランダ人たち。国の宝を乗せた「女王の馬車」を迎え入れるための車両を設け、未来を見据えた姿をすこし真似してみるのも悪いことではないでしょう。

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