”治安のギャップ”が怖い香港情勢、来年も出張・駐在にはリスクあり!?
LIMO / 2019年12月29日 20時15分
”治安のギャップ”が怖い香港情勢、来年も出張・駐在にはリスクあり!?
香港では6月以降、逃亡犯条例改正案に端を発した抗議デモが続いている。香港警察によると、これまでの逮捕者は6000人を超え、うち4割あまりが学生で、警察が市民に向けた使用した催涙弾は1万6000発、ゴム弾は1万発に上るという。
また、警察が至近距離から市民に向けて発砲するなど、国内外から非難の声が強まっている。11月の香港理工大学での立てこもり以降も、警官隊とデモ隊の衝突は断続的に発生しているが、公共交通機関の運行は通常通りに戻っているという。
平日は日常生活に支障はなかったが…
筆者は、今年8月下旬から1週間ほど香港を訪問した。その当時も断続的に衝突や破壊行為が日本でも報道されていたが、いつでもどこでもそれが発生しているわけではなかった。
抗議デモや衝突などが見られるのは主に金曜夜から日曜にかけての週末で、筆者が滞在した平日(月から木)にそういったものを目撃することはほぼなかった。
実際、香港の犯罪率は東京よりも低いと言われるほどで、8月下旬の平日を現地で過ごしても危険は感じられなかった。香港国際空港と香港駅を約25分で結ぶエアポートエクスプレス、香港島を東西に走るトラム、そして地下鉄やバスも通常通りに動いていた。
繁華街の銅鑼湾(コーズウェイベイ)や尖沙咀(チムサーチョイ)、旺角(モンコック)においても、お店は通常通りの営業で、多くの市民が買い物や食事を楽しんでいた。通常の治安がいい分、デモや暴動のシーンを見ると大きなギャップを感じてしまうくらいだった。
事態が次第にエスカレート
しかし、8月28日、警察による女性デモ参加者への暴力が横行していることに抗議する3万人規模のデモが行われ、筆者は地下鉄港島線の車内で帰宅途中のデモ隊と遭遇した。
若者たちは、湾仔(ワンチャイ)駅から車内に乗り込むと、大きな威勢のいい声で叫び始めた。何を言っていたかは分からなかったが、香港警察へ抗議の意思を示す内容だったと思われる。車内にいた一部の乗客からは拍手する音も聞こえた。
また、香港島にある砲台山(Fortress Hill)駅近くを歩いていると、「Democracy for Hong Kong」や「五大訴求」などと書かれた黒い垂れ幕を見つけた。
日常生活では安全な香港だが、香港人としての強いアイデンティティや危機感といったものはあらゆる場所で感じられた。
筆者が帰国した次の日あたりから、エアポートエクスプレスの運行が妨害されるなど、これまでに見られるように事態はエスカレートしていった。現在、暴力の連鎖は止まっているとされるが、香港情勢で怖いのは、こういった“治安のギャップ”かも知れない。
来年もビジネスリスクは続く
イランやイラクでも反政府デモが続いているが、既に犠牲者はそれぞれ数百人以上というレベルで、我々日本人が両国に対して治安がいいと思うことはあまりない。
だが、香港についてはもともとの治安が良いことから、衝突や破壊行為がいったん終息すると、もう大丈夫だろうと思い、出張や駐在、現地工場の操業などを日常のサイクルに戻してしまう場合も少なくないだろう。
香港の若者たちの不満は依然として解消していないし、香港政府や北京も強硬な態度を貫いたままである。来年以降も同様の情勢が続くことから、いつまた大規模な衝突や破壊行為が発生しても不思議ではない。
「衝突や破壊行為が収まったから香港に来たが、再び激しくなり、電車がバスの運行が大幅に遅れていて、無事に日本に帰れるか分からない!」といった事態も十分に考えられる。
また、衝突や破壊行為の現場近くにいたということで、暴力に巻き込まれたり、警察に逮捕されたりすることもあり得る。
香港への出張や駐在、ビジネス展開を考えるにあたっては、市民の動き、そして、いつどこでどのような政治イベントや集会が予定されているかを事前にチェックすることが重要だろう。
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