60歳代の貯蓄額はどのくらい?ゆとりある老後への2つの方法
LIMO / 2019年12月28日 21時0分
60歳代の貯蓄額はどのくらい?ゆとりある老後への2つの方法
金融庁の「老後資金2000万円」問題で、資産形成への関心が高まっています。その背景にあるのは、厚生労働省が発表したデータによれば、日本人の平均寿命は男性で約81歳、女性においては約87歳と、過去から伸び続け、長寿化が続いていることがあげられます。
しかし、老後資金のための金融資産が十分ではない世帯も多くあります。ここでは定年退職前後である現在の60歳代の貯蓄額と、老後資金を貯めるにはどのようにすればいいのかについてみていきます。
60歳代の金融資産の平均はどのぐらい?
さて、60歳の人のうち、どれくらいの割合の人が何歳まで生きるのでしょうか。
平均寿命を見るだけでは、そうした状況は見えてきません。金融庁により2019年4月12日発表された「人生100年時代における資産形成」(https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/market_wg/siryou/20190412/03.pdf)を参考に見てみましょう。
2015年の推計では、現在60歳の人が85歳まで生きる割合は64.9%、90歳まで生きる割合が46.4%、95歳まで生きる割合は約25%とされています。
つまり、60歳で定年を迎えても、約半分程度の方が90歳まで生きることになります。いくつで定年を迎えるかという議論はありますが、60歳で退職しても約半分の方は30年間老後生活があることになります。
それでは、現在60歳代の人はどの程度の金額を貯蓄しているのでしょうか。金融広報中央委員会(事務局 日本銀行情報サービス局内)2019年(令和元年)の「家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯調査)」で確認してみましょう。
60歳代の金融資産保有額は
平均値2203万円
中央値1200万円
となっています。
2000万円以上の貯蓄をしている世帯は32.1%と4分の1を超えているものの、400万円未満の世帯が19.1%もいます。
もっとも、60歳代のうち、23.7%が「金融資産を保有していない」ということも今回の調査からわかります。
高齢夫婦の貯蓄状況の格差は拡大している
先の金融庁の調査では、1994年、2009年、2014年の時系列でみると、高齢者夫婦(夫65歳以上、妻60歳以上)の金融資産額が少ない世帯(~450万円)の割合が上昇していることがわかります。
一方で、450万円以上900万円未満、900万円以上1200万円未満、1200万円以上1500万円未満、1500万円以上2000万円未満の比率が減少しています。
また、2000万円以上3000万円未満が横ばい、そして3000万円以上が上昇するという、貯蓄の格差が広がっているという状況です。
若い世代の金融資産も低下傾向に
貯蓄額が少ない高齢世帯が増えていますが、現役世代(20~50代)の収入も減少傾向が続いています。
財務省の2018年10月23日の個人所得課税に関する説明資料(https://www.cao.go.jp/zei-cho/gijiroku/zeicho/2018/__icsFiles/afieldfile/2018/10/22/30zen19kai3-1.pdf)からは、30・40代の金融資産総額も年間収入の減少傾向とともに減少しており、資産形成が十分に行われていないという現状があるのです。
老後資金を貯めるために必要なこと
先の財務省の資料を見ていくと、現在の高齢者世帯の収入の65%を公的年金が占めていることが分かります。
また、高齢者の50%強は公的年金のみで生活しています。公的年金のみでは老後に貯蓄を増やしていくことは困難です。
しかし、金融広報中央委員会が11月18日に発表した世論調査では、金融資産の目標残高を2000万円以上3000万円未満とする2人以上の世帯の割合は14.9%と、1973年の調査以降で最高となりました。
金融審議会の報告書、いわゆる「老後2000万円問題」で2000万円という数値が注目されたのでしょう。
それでは、老後の資産が減少するスピードを減らすためにはどのようにすればいいのでしょうか。
(その1)定年後も働く
老後資金が減少するスピードを減らすための方法として、定年後も働くという選択肢があります。以前は60歳が定年退職の企業が多かったのですが、最近は65歳の企業も増えてきました。
そして、日本の高齢者の就業率は諸外国よりも高いという事実もあります。先の金融庁の資料によれば、男性の65~69歳の就業率は52.9%、女性でも33.4%もあります。これは、他の先進国と比べても極めて高い数値です。日本では高齢者といえども仕事をしているのが当たり前という状況になりつつあります。
また、就業理由については、男性の1位が「生活の糧を得るため」となっており、定年退職後も生活のために働き続けている人が多いことがわかります。つまり、することがなくて暇だからとか、必ずしも健康のためとも言い切れないというのが現状です。
(その2)投資を行う
老後資金を貯めるためには、自分で働く以外にお金に働いてもらう、つまり「投資」する必要もあります。
しかし、日本では金融資産の伸びが小さいというのが実際です。先の金融庁の資料によれば、過去20年を見てみると、家計の金融資産は米国では2.7倍、英国では2.3倍に金融資産が伸びていますが、日本はわずか1.4倍です。「投資をしているか否か」が、大きな差となっているのです。
ただ、米国でもIRAや401Kなどの税制優遇のある年金制度が始まったことから、投資信託による資産形成の動きが広がりました。日本でも老後資金や資産形成のための制度として「iDeCo」や「つみたてNISA」があります。
いずれも値上がり益が非課税になるなどのメリットがあります。iDeCoは拠出可能年齢が60歳未満と制限があるので現役世代向けの制度ですが、つみたてNISAに年齢の上限はありません。
ただ現役世代は株式の比率を高めるなど積極的にリスクを取りにいくべきですが、60歳代以降は債券の比率を増やし、安定運用を心がけるようにしましょう。
まとめにかえて
人生100年時代を迎える中で、老後資金への関心が高まっています。
現役世代の年間収入も減少しているので、老後に備えてお金を貯めていくのは簡単ではありません。老後資金が減少するスピードを減らすためには
定年後も働く
投資を行う
の2種類の方法があります。お金に働いてもらう「投資」は若い世代から始めるほうが有効です。若ければ株などのリスク資産を増やせるからです。一方、リタイア世代は債券の比率を増やすなど安定運用するようにしましょう。
米国や欧州との金融資産の伸び率の差は「投資しているか否か」です。つみたてNISAやiDeCoなどの非課税制度をうまく使い、老後への備えをするのはいかがでしょうか。
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