3人に1人の大学生が奨学金利用者?いま大学で何が起きているのか
LIMO / 2019年12月30日 19時15分
3人に1人の大学生が奨学金利用者?いま大学で何が起きているのか
日本の少子化に歯止めがかかりませんが、その一方で大学生の数が増加していることをご存じでしょうか。
文部科学省が2018年12月に公表した『平成30年度学校基本調査(確定値)(https://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2018/12/25/1407449_1.pdf)』によると、大学・短大進学率は57.9%となり、過去最高を記録しました。進学先にこだわらなければ、2人に1人は大学で学べる時代だといえるでしょう。
大卒の学歴だけでは勝負できない?
大学生の数が増えたのは喜ぶべきことですが、問題もあります。ひと口に大卒といっても、その質は玉石混交。就職面接の現場では、学歴ではなく学生本人の能力を見極めようとする企業の動きが加速しています。
「大学に進学すれば生涯年収が高くなる」とはいえない状況も生まれています。上述の文部科学省の調査によると、卒業者のうち正社員や自営業主など雇用期間に定めのない職に就いた割合は74.1%。大学を卒業しても4人に1人は非正規雇用やパート・アルバイト、または無職です。
そもそも、子どもの数は減っているのに大学数が増えているので、定員割れして経営難に陥る大学も少なくない状況です。今後は大学の淘汰が進むことも予想されるため、大学進学率にも影響が出てくる可能性もあります。
3人に1人が利用する奨学金制度
経済的な困難を抱える学生を支援する仕組みが奨学金制度です。最も認知度が高いのが、文部科学省管轄の日本学生支援機構(JASSO)が運営する奨学金制度でしょう。
JASSOが2019年3月に公表した『日本学生支援機構について(https://www.jasso.go.jp/about/ir/minkari/__icsFiles/afieldfile/2019/03/25/31minkari_ir_2.pdf)』によると、2017年度における大学・短大生(通信制を除く)に対する貸与割合は37.5%でした。実に大学生の2.7人に1人が本制度を利用していることになります。
これだけ多くの学生が奨学金制度を利用している背景には、主に2つの理由があります。1つ目は、親の年収が下がっているために頼れないこと、2つ目は学費の高騰です。
国立大学の授業料の基準額は入学料28万2,000円、授業料53万5,800円と決められています。この費用だけでも4年間で242万円となり、ほかに教材費などがかかってきます。自宅外から通学する場合は住居費や生活費も必要になるでしょう。私立大学なら、さらに高額の学費を用意しなくてはなりません。
奨学金制度が原因の自己破産も
JASSOの奨学金制度には給付型と貸与型があり、給付型なら返済義務がありません。しかし、貸与型はズバリ借金です。大学を卒業したら、すぐに返済がスタートします。
たとえば、国立大学に自宅外から通学する場合に1カ月あたり5万1,000円の支援を受けると、4年間の貸与総額は244万8,000円です。これを、毎月1万3,600円ずつ返済すると完済までに15年かかります。
卒業後の月収が18万円で、税金や社会保険料を差し引いた手取り額が14~15万円だという人にとって、1万3,600円の奨学金返済は非常に重い負担だと言わざるを得ないでしょう。
事実、「就職はできたが十分な給与がもらえない」「非正規雇用なので年収が上がらない」などの理由で、返済がとどこおってしまう滞ってしまう人は後を絶ちません。中途退学者ではさらに事態は深刻です。大卒という学歴はなくなっても、借金はなくなりません。奨学金が原因で自己破産に追い込まれる人が急増して、大きな社会問題となっています。
高等教育の無償化がスタート
政府は2020年4月から、授業料等免除と給与型奨学金を柱とした『高等教育の修学支援新制度(https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/hutankeigen/index.htm)』をスタートさせます。この制度を活用すれば、奨学金に頼らずに大学で学べる学生が増えるでしょう。
制度の対象となる世帯は、原則として住民税非課税世帯とそれに準ずる世帯で、家族構成や世帯年収などの条件で支援内容が異なります。対象となる大学のリストは文部科学省の特設サイトに掲載されているので、チェックしてみてはいかがでしょうか。(『学びたい気持ちを応援します 高等教育の修学支援新制度(https://www.mext.go.jp/kyufu/)』文部科学省)
制度内容をわかりやすくするために、「本人と両親、中学生の兄弟がいる世帯」を例にとって、具体的な数字をご紹介します。
世帯年収が約270万円以下で、本人が国立大学に進学する場合は、入学金約28万円、授業料約54万円が免除になります。また、JASSOが生活費として、自宅生に年額約35万円、自宅外生に約80万円を支給します。このお金は返金する必要がありません。
一方、私立大学に進学する場合は入学金約26万円、授業料約70万円が免除されます。日本学生支援機構の支給金は、自宅生で年額約46万円、自宅外生で約91万円です。
同じ家族構成で世帯年収約300万円なら上記の3分の2が支援され、世帯年収約380万円では3分の1の支援が受けられます。
子どものために親ができること
子どもが産まれたら、できるだけ早い時期から計画的に貯金をしておくことをおすすめします。大学進学までに学費を貯める時間が18年間あるので、毎月1万円ずつ貯めたとしても、12カ月×18年=216万円は貯まる計算です。毎月2万円ずつ貯めると432万円となり、私立大学の文系ならば4年間分をカバーできそうな金額になります。
大学に行くことだけが人生の選択肢ではありませんが、子どもに学びたい気持ちがあるなら、親のできる範囲でしっかり応援したいものですよね。日頃から、子どもの将来について気軽に話し合える親子関係を作っておくことが大切なのではないでしょうか。
【参考】
『平成30年度学校基本調査(確定値)』文部科学省
『私立大学等の復興に関する検討会議 議論のまとめ(https://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2017/06/26/1386852_0.pdf)』文部科学省
『日本学生支援機構について』JASSO
『国立大学等の授業料その他の費用に関する省令(http://www.kyoto-u.ac.jp/uni_int/kitei/reiki_honbun/w002RG00000953.html)』文部科学省
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