米・イラン情勢で相場が動揺!? でも地政学リスクにアタフタしすぎる必要はない理由
LIMO / 2020年1月7日 20時40分
![米・イラン情勢で相場が動揺!? でも地政学リスクにアタフタしすぎる必要はない理由](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushin1/toushin1_15239_0-small.jpg)
米・イラン情勢で相場が動揺!? でも地政学リスクにアタフタしすぎる必要はない理由
年明けから中東情勢に緊張が走る
新年から、米国のイランに対する軍事攻撃による緊張が走りました。みなさんは報道でその状況をフォローされていると思いますが、何も年初に攻撃を行わなくても、と思う方がほとんどだと思います。しかも、世界の株式市場が“大発会”直後にもかかわらず、です。
もっとも、こうした軍事的攻撃は相手の間隙を狙って行わないと効果はありませんから、金融市場に与えるショックもそれなりに大きいのです。
2016年来の米中貿易問題に片が付きそうだという矢先に、2020年初頭も再び地政学リスクに苛まれる投資家にとって、この手のイベントは好ましいものではないでしょう。
もっとも、こういうイベントがあると察してあらかじめ原油や金を買っていた投資家はウハウハでしょうが、なかなかそうは読めるものではありません。
では、こうした地政学リスクに端を発する相場変動にどうすれば対処できるのでしょうか。対処するとは、うまくそのリスクを察知して買いポジションを利益確定させるとか、売りポジションを予め作成しておくとか、そういう意味です。
残念ながら、筆者の考えではほとんどの投資家は対処ができないと考えています。これは、プロである機関投資家、個人投資家に関わらず難しいことです。
むしろ投資家の資金を投資しなければならない機関投資家は、かならず何らかの資産クラスに投資しなければならないわけですから、相場が下落した際のダメージは個人投資家の比ではないはずです。
ダウ平均株価の推移と米・イラン関係を重ねると?
さて、タイトルの「地政学リスクにアタフタしすぎる必要はない」というところに戻りましょう。
まず、地政学リスクですが、これは常にどの地域や国にもあるものです。むしろ平和な時代が長く続くことがまれで、国内外問わず人類の歴史は戦争の歴史と言っても過言ではありません。
各国の事細かな事象は歴史書に譲りますが、今世間の耳目を集めている米国とイランの関係も和平と対立を繰り返しているのです。
図表1:ダウ平均株価推移と米・イラン関係の概観
(/mwimgs/d/0/-/img_d0b52bcb3ba13a964d45dcff6945d5bc116773.jpg)拡大する(/mwimgs/d/0/-/img_d0b52bcb3ba13a964d45dcff6945d5bc116773.jpg)
出典:macrotrends(https://www.macrotrends.net/)(期間:1935年末〜2019年末)
上の図表1は、米国のダウ平均株価の推移と、これまでの米国・イラン関係を概観したものです。今では米国とイランは犬猿の仲ですが、両国の国交が始まった1880年代から100年ほどは蜜月の関係が続き、おたがい持ちつ持たれつの関係が続いていました。
ところが、1979年のイラン・イスラム革命により、当時のイラン国王(シャー)は亡命を余儀なくされました。新たにイランを率いることになった宗教指導者アヤトラ・ホメイニ師は米国を敵視。
その後、1979年11月にイランのアメリカ大使館人質事件が発生し、米国はイランに対する国交断絶と経済制裁を実施しました。これが現在にも続き、米国が何かとイランを叩く構図が続いているのです。これだけ聞いていると、いつか世界大戦でも起きるような感じなのは否めません。
ところが、同じ期間のダウ平均の動きを見てください。1935年から85年間の推移となりますが、米国株はそれぞれの不況期を挟みながら上昇を続けています。
加えて、米国・イランの関係を重ねると、米国がイランと蜜月の関係にあった期間より、敵対する期間が始まった1980年代からのほうが米国株は上昇しています。
もっとも、米国は1960年代後半から1980年までスタグフレーション(不況とインフレの同時発生)に苦しめられていました。当時は石油ショックもあったものの、産油国である米国は石油不足の影響をそれほど受けてはいませんでした。
つまり、株価が米国とイランの外交関係とが直接相関するとは考えにくいのです。
市場に対するインパクトは?
次に、「アタフタする必要がない」というところでは、1980年代以降に米国とイランの関係が悪化しても米国株は上昇基調にあるというところです。これまた、短期的な動揺は別にして、両国の外交関係と株価の相関性は低いと考えています。
特に、1980年代以降は急速にグローバル化・IT化が進みましたから、株価の変動に与える影響は国際情勢や外交関係の変化よりも、純粋にビジネス環境の変化の方が大きなインパクトを持っていると考えています。
そういう意味で、年初に米国によるイランへの攻撃がありましたが、株価や経済全体に長期間の影響を及ぼすものではないと思います。
むしろ、短期的に反応して保有している資産を性急に売却したり、ポジションの組み換えをする方が得べかりし利益を失う可能性もあります。まさしく、急いては事を仕損じる、です。
投資は長期的にコツコツ続けていきましょう。
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