ゴーン被告が自己正当化を英語で発信する理由~日本人の英語はどうあるべき?
LIMO / 2020年1月12日 21時10分
ゴーン被告が自己正当化を英語で発信する理由~日本人の英語はどうあるべき?
今回のコラムは、カルロス・ゴーン被告のレバノンからの記者会見が行われる当日の午前中に書いています。
この時点では、記者会見で何が語られるのか不明ですが、ゴーンさんの圧倒的なコミュニケーション力は、今後、日本の司法当局にかなりネガティブな影響をもたらす可能性もあるのではないかと考えています。
コミュニケーション能力が影響力を持つという状況は、日本で逮捕された被疑者が海外逃亡を正当化する発言をし、被疑者に有利に事が運びかねないという特殊事例だけではなく、外国語、特に仕事で英語を使う立場の方々にも日常的に起こり得ることです。
つまり、英語でのコミュニケーションができるだけで給料が上がったり、外資系企業でうまく立ち回れたり、グローバル人脈ができたりすることが多々発生しているのです(英語ができないとその逆)。
今回は、英語でのコミュニケーションができるか否かでグローバルな舞台で大きな差がつくこと前提として、日本人がどのように英語と取り組むべきかを論じたいと思います。
ゴーン被告が育った環境
元日産の会長というキャリアもさることながら、3つの国籍を持ち数カ国語を操れるゴーン被告は、たとえ学がなかったとしても、必ず世に出てくる人物ではなかったかと推察します。
幼少期を過ごした当時のブラジルやレバノンは経済や政治の混乱が続く混沌とした発展途上国で、社会の不公正や格差などをあからさまに見てきたはずです。何事もこじんまりとした事なかれ主義の日本とは異なり、出る杭にならないと食っていけないのが途上国の実態です。
社会で伸していくには学力か腕力か、その両方かが問われるわけです。ゴーン被告はそうした国々の環境で育ち、最終的にフランスのÉcole des Mines de Paris (パリ国立高等鉱業学校)で工学博士を取得したエリートです。
すでにこの時点で”普通の”日本人は太刀打ちできません。その後、ミシュランやルノーのブラジルやアメリカの上級役員を努めた後、日産入りしたのは周知のことです。語学力云々以前に、経験値や体力は並外れていると推察します。
英語ができないと不利になる!?
ゴーン被告は5カ国語を話すと言われていますが、育った環境と本人の努力もあって数カ国語を話せるわけで、日本に住んでいれば5カ国語はおろか英語も不要ですから、日本人がおしなべて英語ができないのは当たり前なのです。
ただし、今回のような“国際紛争”が起きて自分の立場を明確にしなければならない際は、やはり英語でのコミュニケーションは必須で、できないと圧倒的に不利になります。
今回の脱走劇が起こった後に、日本の法務省も英語でプレスリリース(http://www.moj.go.jp/EN/list_info.html)を行っています。ただ、いかんせん紋切り官僚口調ですから、とても日本の立場を強力にアピールできる説明になっているとは言い難い印象です(もっとも捜査状況もあるのでペラペラ喋れないことはわかります)。
また、日本のマスメディアも米国のウォール・ストリート・ジャーナルや英国BBCの英語報道を翻訳して伝えているのは、いかに英語での情報が世界を席巻しているかという証左と言えるのではないでしょうか(こちらも日本のマスメディアには“情報統制”が敷かれている可能性もありますで、その分は割引いてください)。
一方、ゴーン被告側は記者会見を行って、どんどん情報を開示していく攻めの姿勢を見せています。こうなると、どちらが正しいかどうかは別にして、筆者を含め事実を容易に判断できない多数の一般人は「彼の言うことは正しい」と思ってしまうかもしれません。
ことほどさように、特にグローバルなコミュニケーションで相手に自分の立場を伝えようとすると、最も伝わる言語で、わかりやすく、正しいタイミングで伝えるということが重要になってきます。
伝える相手は当事者だけではないですから、わかりやすいというのは結局説得力があるということになります。たとえば、トランプ大統領は平易な言葉(英語)で演説を行っていますので、非常に理解されやすい内容となっています。
そういう意味で、実質的な国際語となっている英語でのコミュニケーションはとても重要だと言えるでしょう。
日本人は英語をどう学ぶべきか
これが一番、難しい問題です。現在では小学生から英語を学ぶようになっていますが、これまでの学校教育では効果が大きく出ているということは、いまだ聞きません。
日本人が英語を使えないのは、日本では日本語しか必要ないのが一番大きな要因です。一方、イギリスが旧宗主国である香港やシンガポールでは英語(現地化した英語を含む)が話せないと日常生活に支障が出ますから、英語は必須となります。
また、日本語は西洋言語と相応の差異がありますから、どうしても自然に身につくというよりも勉強をしないと身につかないということもあります。この点では、西洋言語のネイティブスピーカーは英語に関して利点があることは否めません。
もっとも、日本が西欧列強の植民地にならずに日本語を堅持し、中途半端な外国語を導入しなかったことは誇るべきことです。
筆者の結論ですが、英語は必要な人が一生懸命やればいいものだと思っています。もちろん、海外赴任する日本人ビジネスマンに英語は必須ですし、現地言語も習得する必要があるでしょう。優秀な通訳が常時ついていれば会社の中では不要かもしれませんが、社外では不便を感じると思われます。
英語の身につけ方はいろいろあると思いますが、日本語と同じで毎日英語に触れていないと忘れます。ですので、英語に関わらず外国語を身につけようと思ったら、その学習に終わりはないと自覚するしかありません。
小学校から英語を学ぶにしても、耳と頭に残るようなやり方でないと将来的には全く効果はないでしょう。大学入試の英語の試験も同じです。なにせ、英語ネイティブは生まれてこのかた英語を聞いて喋っているのですから。
ことほどさように、日本人が英語を身につける王道はありません。毎日コツコツしっかりと、ぐらいしかないのが現状です。
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