絵の嘆願書に首相宛ての手紙…。レジ袋撤廃を推進した子どもたちのパワー
LIMO / 2020年1月15日 21時15分
絵の嘆願書に首相宛ての手紙…。レジ袋撤廃を推進した子どもたちのパワー
ニュージーランドで起きたこと
ニュージーランドでは2019年7月、使い捨てレジ袋が法的に禁止になりました。混乱が起きるかと思いきや、そんなことはまったくなく、人々は当初から当然のように「マイバッグ」持参で買い物に出かけています。
それもそのはず。プラスチックごみ撤廃政策の第一段階ともいえる使い捨てレジ袋からの脱却は、民間の取り組みのほうが2018年末と一歩先だったからです。一般の人々が、使い捨てレジ袋を大量に使用していたスーパーマーケットに呼びかけたのがきっかけです。
この動きに貢献した一般人の中でも、特筆すべきは子どもたち。ニュージーランドの子どもたちのパワーを紹介します。
首相に手紙を出す子どもたち
昨年12月、プラスチックごみ撤廃政策の第二段階が政府から発表になりました。
ジャシンダ・アーダーン首相は「私たちにとってプラスチックごみ問題は長期にわたる課題ですが、使い捨てレジ袋の撤廃は問題解決の第一歩として重要な役割を果たしました」と前置きした上で、こうコメントしています。
「大人だけでなく、たくさんの子どもたちが、大量のプラスチックごみが海に流れ出すことを心配し、私に手紙をくれました」と、同政策のきっかけを作ってくれたのは子どもたちでもあるということに触れたのです。
実際、首相宛に子どもたちから送られてくる手紙の中で最も多いのはプラスチックごみ問題についてなのだそうです。
アーダーン首相は1歳半になった二―ヴちゃんの母親でもあります。一国の首相として、ここで生まれ育っている子どもたちは、自分の子どもも同じという気持ちがあるに違いありません。
首相にとって、母親にとって、子どもたちの求めが正しいものであるなら、聞き入れるのは自然なことなのでしょう。
園児からは「絵の嘆願書」
国内最大の都市、オークランドの西部にあるラングホルム幼稚園では、2017年に園内でのビニール袋の使用禁止を決めました。
子どもたちにはビニール袋だけでなく、ごみがもたらす自然環境への害と、その対応策として、リサイクル、再利用、堆肥作りについて教えているそうです。1年に一度、海岸でのごみ拾いも行っています。
そんな園児たちが、地元のデボラ・ラッセル議員を通し、議会に嘆願書を提出しました。
幼稚園児ですから、まだ自分の考えを字では表現できません。でも、絵を描くことはできます。病気になったカメや鳥、魚などの絵を描き、「絵の嘆願書」を同議員に託したのです。その数は400枚を超えたそうです。
園児に負けじと立ち上がる小中高生
小中高校生も園児同様、使い捨てレジ袋の廃止を求めて立ち上がっています。南島の街、ダニーデンの小学校、カリスブルック・スクールは4,000通近い嘆願書を議会に届けました。
その際には首都ウェリントンのパレマタ・スクールの6~10歳の生徒たち50人が手作りのプラカードを持って、カリスブルックの生徒をサポート。共通の目標を持つ子どもたち同士の連携は素晴らしいものです。
一方、ウェリントンの小中高一貫校、サミュエル・マーズデン・カレジエイト・スクールは、使い捨てレジ袋1枚につき10NZセント(約7円)の課金を求めて、約1万8,000人分の署名を集め、提出しました。
議会宛に手紙を書く生徒もいます。タウランガの小中学校、ファカマラマ・スクールの11人の生徒は、なぜプラスチックごみ問題を解決することは重要なのかを書き送りました。
また、南島のネルソン近郊の小中高一貫校のコリングウッド・エリア・スクールの生徒は、中国、台湾、バングラデシュ、ルワンダ、ケニア、マケドニアといった国々がすでに使い捨てレジ袋を撤廃しているのに、なぜニュージーランドはまだなのかを尋ねる手紙を書き、送っています。
同じ件で、グリーンピース・ニュージーランドも6万5,000以上の署名を議会に提出しています。その際、署名と共に届けられたのは、「この問題は緊急に解決すべき」という考えを伝える、全国各地の子どもたちによるアート作品でした。
侮れない、子どもたちのパワー
ラングホルム幼稚園のジャニス・ドーソン園長は、プラスチックごみ問題の深刻さを子どもたちは敏感に感じ取っていると、国内全国紙『ニュージーランド・ヘラルド』に話しています。
園児は「ビニール袋はいらない! カメを助けよう!」というスローガンを自作し、皆で唱えているそうです。自分たちを取り巻く自然環境で何が起きているか、子どもたちはよく知っているというのです。
ドーソン園長は、政府が使い捨てレジ袋の使用禁止に踏み切ったことは、子どもたちにとってうれしいニュースだったといいます。自分たちが「絵の嘆願書」を提出したことで、国全体に前向きな変化をもたらすことができたことを、子どもながら喜んでいるそうです。
子どもたちのパワー、恐るべし! 腰が重い大人の私たちは恥ずかしいと思うべきなのではないでしょうか。
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