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トランプ大統領の事情―米中高生をハメた「フルーツ風味の電子タバコ」の中途半端な規制措置の理由とは

LIMO / 2020年1月18日 19時45分

トランプ大統領の事情―米中高生をハメた「フルーツ風味の電子タバコ」の中途半端な規制措置の理由とは

トランプ大統領の事情―米中高生をハメた「フルーツ風味の電子タバコ」の中途半端な規制措置の理由とは

日本では加熱式タバコが大流行していますが、アメリカではニコチン入りの電子タバコが人気を集めています。特にフルーツ風味などに誘われ中高生の常習者が年々増加し、若年性のニコチン中毒、肺疾患などの健康被害や偽造の電子タバコリキッドでは死者を出すという社会問題に

今年に入って米政府は若者が好む一部の風味付き電子タバコの販売を禁止しました。専門家達からは「こんな中途半端な措置では効果はない」という非難の声もあがっていますが、トランプ大統領の頭の中は再選でいっぱいのようです。

自分優先の大統領?

米食品医薬品局(FDA)は1月2日、一部の風味付き電子タバコの販売を禁止することを公表しました

昨年9月、自身も10代の息子を持つトランプ大統領は保護者の立場を理解し電子タバコ販売を全面禁止する方針を打ち出していましたが、結局は一部販売禁止という中途半端な措置を講じました。

中高生に最も人気のJUUL社などが販売するカートリッジ式(ポッド)のフルーツ風味の販売は禁止となりましたが、メンソール風味とタバコ風味は今まで通り販売継続されます

ベイプ・ショップが扱う「オープンタンク式」(好みのe-liquid(イーリキッド) またはe-Juiceという液体をベイピング・デバイスのタンクに充填するモノ)に関しても今まで通りです。

トランプ大統領が全面禁止にしなかったのは、表向きには「成人にとっては紙のタバコの代替となり、禁煙支援にも効果的であるから」としています。

また、ベイプ産業への影響を懸念する産業関係者や保守主義のロビイストからの圧力が高まったことも理由の一つです。

確かに、全面禁止だと市場規模が年間数十億ドルにまで成長した産業に与える影響は大きいでしょう。街角の小さなベイプ・ショップは潰れてしまい、関連企業からも失業者がでてしまうのは想像がつきます。

しかし、何よりもトランプ大統領が優先したいのは「2020年の大統領選挙での再選」です。トランプ大統領が勝たなくてはならないいくつかの州には、ベイピング愛好者が比較的多いようです(※1)。

意味のない禁止措置

当然、公衆衛生関連の専門家達や保護者団体の間では「こんな中途半端なやり方では子供を健康被害から守れない」という批判の声が上がっています。

JUUL社は2018年、既に自主的にいくつかの人気フルーツ風味のポッドを販売中止にしましたが、中高生使用者の多くはすぐに販売継続されているミント風味に乗り換えました。

それを考えれば、ミント風味からメンソールに乗り換えることは簡単なことではないでしょうか。また、前述した「オープンタンク式」に乗り換えることもできます。

中高生から電子タバコを遠ざけるには、こんな隙だらけの措置では効果が期待できないのは明らかです。

更に問題なのは、ブラック・マーケットで出回っている「偽造THCベイプ」です。THCベイプとは大麻に含まれるTHCという化学物質のリキッドを使用したモノです。

偽造THCリキッドには正体不明の不純物が混合されていて、その中でもTHCを増量するために使われている「ビタミンEアセテート」は多数の重篤な肺疾患患者や死者を出した最たる原因だろうといわれていいます。

違法THCベイプはカートリッジ式になっていて、被害者の多くはパーティや友人を通して入手したということです。パッケージは人気正規品に似せたモノもあるそうです。当然、成分などは明示されておりません。いちいち成分など確認せずに使用してしまうのでしょう。

今後、米政府はこのようなブラック・マーケットを取り締まっていけるのかという懸念も残ります。

イギリスとの違い、米政府のやる気は?

このように、アメリカでは若者への被害が深刻な社会問題になっていますが、イギリスでは若者への影響はそれほど問題にはなっていないようです

その違いについて、英公衆衛生局の広報担当者は、「イギリスでは電子タバコの広告規制が厳しい」という点を挙げています。若者に最も影響を与えるSNSやテレビでの広告は禁止されているとのこと。また、ニコチン量は20mg/ml以下。米中高生に最も人気があるJUULポッドの59 mg/mlに比べて遥かに少ないことも指摘しています(※2)。

また、英公衆衛生局は2018年のプレスリリースに、英専門機関の調査結果で、イギリスの電子タバコは紙のタバコよりも健康被害が95%少なく、1年間で2 万人が禁煙に成功したことが明らかになったと公表しています(※3)。

イギリスではバランスよい規制で効果的に利用されているようです。

2019年6月、米FDAは連邦判事に急かされ、電子タバコ販売前承認申請(PMTA)に関する最終ガイダンスを公表しました。電子タバコメーカーやイーリキッドを独自にミックスして販売するベイプ・ショップは、今後販売を継続する製品についてFDAにその身体への影響についての科学的な証拠などを含めた承認申請を提出することになっています。

PMTAの締め切りは2020年5月ということで、規制はようやく厳しくなりつつあるようにはみえますが、実際はどうなることか。今回の中途半端な禁止措置や、今までの取組み姿勢を考えると米政府がどこまで本気なのか、今後の行方が気になるところです。

【参考】
(※1)“FDA to Ban All E-Cigarette Pod Flavors Except Tobacco and Menthol(https://www.wsj.com/articles/fda-to-ban-all-e-cigarette-pod-flavors-except-tobacco-and-menthol-11577833093)”THE WALL STREET JOURNAL.
(※2)“The US and UK see vaping very differently. Here's why(https://www.cnn.com/2019/09/17/health/vaping-us-uk-e-cigarette-differences-intl/index.html)”CNN
(※3)“PHE publishes independent expert e-cigarettes evidence review(https://www.gov.uk/government/news/phe-publishes-independent-expert-e-cigarettes-evidence-review)”Public Health England

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