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つるの剛士の「保育士受験資格なし」は当然? 昭和的すぎる保育士業界の問題点

LIMO / 2020年1月23日 20時15分

つるの剛士の「保育士受験資格なし」は当然? 昭和的すぎる保育士業界の問題点

つるの剛士の「保育士受験資格なし」は当然? 昭和的すぎる保育士業界の問題点

先日、タレントのつるの剛士さんが保育士免許の取得を目指すことをツイッターで発言したものの、受験資格がないことを嘆いて注目を集めました。

保育士の試験は、たとえば大卒であれば保育士と関係のない学部でも受験資格はありますが、専門学校や高卒であれば学校の種類や卒業年などによって制限があります。この現状に、つるのさんは「保育士不足と謳われているこのご時世にあまりにも厳しい」と綴り、ネットではさまざまな意見が寄せられていました。

2019年10月からの幼児教育・保育無償化のスタートによってさまざまな変化が起きている保育園業界。昨今の保育士不足や保育園の抱える問題について、11月に行われた「幼少教育創会議」の内容から紐解いていきます。

2019年3月、突如閉鎖した川崎市「A.L.C.貝塚学院」の今

千代田区にある3331 Arts Chiyodaで行われた「幼少教育創会議」は、教育や保育に携わる代表3社による意見交換会。「幼少教育」とは「幼児教育」と「幼少期」を組み合わせた造語です。

登壇したのは、2019年春に経営破綻した認可外幼児園「A.L.C.貝塚学院」を引き継いで立て直し運営している株式会社サン執行役員・佐野順平さん、国内最大級の保育に特化した求人サイトを運営するキャリアフィールド株式会社代表取締役社長・都築裕一さん、そして司会進行役も務めた一般社団法人STEAM学習振興会理事・事務局長杉浦治さんの三者。

まず、杉浦さんが今回の意見交換会の趣旨について説明。「GoogleやAmazonといったアメリカのビッグ企業と対峙する日本経済を担っていくには、幼少期からの人材育成の重要性が叫ばれている。政府は幼保無償化だけであらゆる問題が解決すると思っているのではないか」と教育の重要性についての疑問を呈します。

話はまず、昨今の保育士不足について。

2019年3月に前経営陣の破産通告によって一時閉鎖となった川崎市の「A.L.C.貝塚学院」は、2019年4月から新しい経営陣で再スタートを果たしました。今では順調な経営をしており、2020年4月入園申し込み者も多いと言います。前経営陣の頃から引き続き働いているスタッフも多く、「新しい経営陣のフォローアップもしてくれてとても優秀」と佐野さんは言います。

また認可外幼児園(幼稚園類似施設)に区別されるので、保育士資格も幼稚園教諭の資格も持っていない人でも雇用できることも大きな強みだそう。保育士資格を要する仕事以外のスタッフも募集しやすく、「いい方であれば、ゆくゆくは保育士資格を取ってほしいというアプローチで人材確保がしやすい」と話しました。

保育士不足は「保育業界はブラックだ」というイメージの弊害?

保育士資格取得スクールや就活バスツアー、保育士養成校との産学連携事業など、保育に特化した事業を手掛ける都築さんは、保育士不足の現状について「保育業界の伸びと保育士の数のバランスが崩れている。養成校だけでは充足せず、保育業界で働きたいけれど資格を持っていない一般の人も必要になっている」と現状を説明しました。

一方で、保育士不足についてはメディアの責任も指摘。「実際には家賃補助が出たり初任給が25万円を超えたりする自治体もあるのに、『保育業界は給料が安い』、『ブラック業界だ』という情報や記事があまりにも氾濫していることで、そのイメージが保育士を目指す人たちのモチベーションを下げている部分もある」と語りました。

また、資格だけを取得する人の多さも特筆すべき点です。都築さんによると、保育士資格取得者が年間約5万5千人いるうち、自分で勉強をして資格を取る人が約1万5千人、養成校出身が約4万人ですが、そのうち2万5千人しか保育士にならないのだとか。この要因としては「就労の意思はないけれども保育士資格は取ろう」とする人がとても多い現状があります。

また、養成校に入って本気で保育士を目指そうとする若い人の中には、実習中に保育士になることを諦めるケースもあるのだとか。

この点について都築さんは「そもそも施設(保育園)側に保育士という教育者を教育する体制が整っていない。今から社会に出る若者に優しく教える雰囲気が足りておらず、『見て覚えな』という職人気質のある施設もある」と保育業界の昭和的な雰囲気の問題を浮き彫りにします。先輩ごとに教えることが違うことなどから、「私は保育士に向いていないんじゃないか」と悩む人も少なくないそう。

一方で保育園側もどんな実習生も受け入れる必要がありますが、真剣に保育士になりたい人ととりあえず資格だけ取りたい人を同じように実習していいのか、戸惑う面があるのでしょう。保育士になるための、実習のやり方も大きな改善の必要性が問われているのかもしれません。

保育士は思っている以上に専門的、だけど学び直しによって挑戦できる

こうした職人気質の保育業界については佐野さんも「先生は自分に教育者として誇りを持っている。それぞれの哲学が強すぎるがゆえに若い人のことも自分の物差しで測ろうとする傾向が拭えない。しかし、彼らの教育哲学を害してしまうと、施設としては質が高い教育を提供するのが難しくなってしまう」と、その難しさを語ります。新人保育士の教育や離職防止には、その施設ごとの教育哲学の統一や、その哲学の見える化が求められているのでしょう。

筆者も保育園勤務経験があるのでわかりますが、保育士という仕事は私たちが思っている以上に専門的です。子どもの命を預かり、起きていることにその都度対応していく。クリエイティブな想像力や瞬時の判断力、そして体力など様々な能力やスキルが必要です。

先のつるのさんのツイートに対し、「育児経験があるからって、保育士の仕事をなめているのか」という批判もありました。しかし、その後つるのさんは今年4月から保育士資格取得を目指して通信制短大に入学することを発表。専門スキルが求められる大変な保育士ですが、学び直しによる資格取得や他の職業からの転職によって挑戦できることを示す、社会にとって存在感のあるロールモデルとなってくれるかもしれません。

そして都築さんが「保育士のいい情報を発信して、おもしろい仕事なんだと伝えたい」と熱を込めて語っていたように、保育士を増やすためにはメディア側も大きな責任を担っていることを改めて感じました。

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