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「ガスト」運営すかいらーくも深夜営業時間縮小に。本当の狙いとは何か

LIMO / 2020年1月28日 19時0分

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「ガスト」運営すかいらーくも深夜営業時間縮小に。本当の狙いとは何か

人件費抑制で利益率改善なるか

多くの業界で「働き方改革」が掲げられ、各企業が多様な施策を打ち出す中、ファミリーレストラン業界でも大きな動きが出てきた。ファミレス国内最大手で、「ガスト」や「ジョナサン」などを運営するすかいらーくは深夜の営業時間を縮小すると発表。働き方改革の一環としての取り組みだが、今回はすかいらーくの業績と結び付けて考察し、最後に今後の注目点を解説する。

深夜帯の営業時間短縮へ

すかいらーくは1月20日、566店舗で深夜の営業時間を短縮するほか、うち155店舗で24時間営業を全て廃止すると発表した。消費者のライフスタイルや従業員の働き方の変化に対応することが主な目的としている。

同社の店舗は2019年12月31日時点で国内外合わせて3258店あり、今回深夜の営業時間が短縮される店舗は全体の約17%、24時間営業廃止の店舗は全体の約5%。

直近3年の売上収益成長率が年間1~2%にとどまり、2019年12月期も1%の成長を予想するなどトップラインの伸びが鈍い中で、今回の営業時間短縮が売上収益に与えるマイナスの影響は決して小さくなさそうだ。

人件費高騰で採算悪化続く

ただ、今回のポイントはやはり採算への影響だろう。リリース内では働き方改革が大きな目的として掲げられているが、そこには人件費抑制という目的もあるとみえる。

一般的に、深夜帯での営業を行うには、深夜手当てを加えた賃金を従業員に支払わなければならない。

しかし、昨今、働き方改革の普及に伴う労働者の意識変化や人手不足に伴う人件費高騰を背景に労働力の確保が難しくなってきており、深夜営業のハードルが高まっているのは多くの方も感じていることであろう。

ファミレスにおいては日中の方が深夜よりも店舗稼働率が高いと考えるのが自然であり、ただでさえ低収入な深夜帯に高い人件費を払って営業を続ける経済的メリットは年々薄れているとみている。

こうした状況はすかいらーくの利益に悪影響を及ぼしてきた。2014年の再上場以降、売上収益は店舗拡大を通じて増加を続けているものの、人件費率が上昇を続ける中で営業利益は2016年12月期の312億円をピークに以降は減益が継続。こうした背景により、今回の深夜営業に関する施策が出てきたと考えられる。

収益率についても芳しくない。営業利益率は2016年12月期の9%から、2018年12月期の6%まで低下した。よりキャッシュベースの利益指標である調整後EBITDAも2016年12月期の479億円から2018年12月期に393億円まで落ち込んでおり、対売上高比率も14%から11%へと低下した。

深夜営業縮小で利益率改善なるか

採算悪化の状況に対して同社は高付加価値メニューの拡充などを通じて客単価上昇・利幅拡大を図っているものの、売上総利益率は約70%のまま横ばいが続いており、目立った改善は見えない。

また、人材育成やセルフレジの導入によって業務効率化も進めているが、店舗当たり臨時雇用者数は13人前後のまま長らく不変で、所要人員の削減にも至っていない。こうした中、不採算とされる深夜営業の廃止や営業時間の縮小は、利益率改善につながる有効打のひとつだと考える。

株式市場でのバリュエーションは絶対値で高い水準

こうした苦境にあるすかいらーくだが、株式のバリュエーションは高い。近年、米中貿易摩擦に関連して海外情勢の影響を受けづらい内需・ディフェンシブ業種がリスク回避の中で買われ、小売業の平均PERは1月下旬時点で25倍と、東証全体の17倍を上回っている。

そしてすかいらーくのPERは2019年12月期会社予想純利益ベースで40倍近くとなっており、小売業の中でもさらに高い水準にある。

高いバリュエーションの背景には

米中貿易摩擦への懸念を背景とした内需偏重相場

個人投資家好みの優待銘柄

過去のMBO時に計上された巨額なのれんに対する警戒感の後退(自己資本が積み上がったことで減損時に債務超過に陥る危険性が低下)

こういった要素があると考えられ、投資家が純粋に利益の高成長を期待してPER40倍を付けているわけではないとみる。

しかし、いずれにせよバリュエーションの絶対値の水準が高くみえることに変わりなく、それゆえ現状の株価水準を維持するには少なくとも目先で利益率低下に歯止めをかける必要がありそうだ。

営業利益率"9%"とEBITDA比率"14%"の回復が目先の注目点か

冒頭にも述べた通り、深夜営業を短縮することで売上収益が減少する可能性がある。この点は投資家としても当然想定するシナリオだ。ただ、今回の取り組みを受けて投資家の注目が向かうのはやはり「利益率の変化」だろう。

現在のバリュエーションが高くみえるので、長期的な視野で見れば、どのような利益成長シナリオのもと市場の期待に応えていくのかという点は今後長らく意識される点だと思われる。

一方、短・中期的な視野で見るならば、ひとまず利益率の低下を食い止め、以前の水準に戻せるかが大きな分岐点となりそうだ。ベンチマークの利益率については、減益が始まる直前の2016年12月期の営業利益率9%と対売上調整後EBITDA比率14%が目安として意識される可能性が高いとみる。

この水準を回復できるか、できるとしたらどれだけ早期に実現できるかを占うためのヒントとして、今後は人件費率の推移はもちろん、改善が不十分な売上総利益率や店舗当たり所要人数などにも着目しながら決算を追うことが重要だ。

参考資料

24時間営業廃止のリリース(https://www.skylark.co.jp/company/news/press_release/pk637h000002h24j-att/200120final.pdf)

2019年12月31日時点での店舗数(https://www.skylark.co.jp/company/news/press_release/pk637h000002h24j-att/200120final.pdf)

業績ハイライト(https://ir.skylark.co.jp/highlight.html)

高付加価値メニューの拡充施策(https://ssl4.eir-parts.net/doc/3197/tdnet/1770988/00.pdf)

各業務効率化施策(https://ssl4.eir-parts.net/doc/3197/tdnet/1557282/00.pdf)

2014年(従業員の状況のページ)(https://disclosure.edinet-fsa.go.jp/E01EW/BLMainController.jsp?uji.verb=W00Z1010initialize&uji.bean=ek.bean.EKW00Z1010Bean&TID=W00Z1010&PID=W1E63011&SESSIONKEY=1579738688285&lgKbn=2&pkbn=0&skbn=1&dskb=&askb=&dflg=0&iflg=0&preId=1&mul=%E3%81%99%E3%81%8B%E3%81%84%E3%82%89%E3%83%BC%E3%81%8F&fls=on&cal=1&era=R&yer=&mon=&pfs=5&row=100&idx=0&str=&kbn=1&flg=&syoruiKanriNo=S1004FEF)

2015年(従業員の状況のページ)(https://disclosure.edinet-fsa.go.jp/E01EW/BLMainController.jsp?uji.verb=W00Z1010initialize&uji.bean=ek.bean.EKW00Z1010Bean&TID=W00Z1010&PID=W1E63011&SESSIONKEY=1579738688285&lgKbn=2&pkbn=0&skbn=1&dskb=&askb=&dflg=0&iflg=0&preId=1&mul=%E3%81%99%E3%81%8B%E3%81%84%E3%82%89%E3%83%BC%E3%81%8F&fls=on&cal=1&era=R&yer=&mon=&pfs=5&row=100&idx=0&str=&kbn=1&flg=&syoruiKanriNo=S1007A5H)

2016年(従業員の状況のページ)(https://disclosure.edinet-fsa.go.jp/E01EW/BLMainController.jsp?uji.verb=W00Z1010initialize&uji.bean=ek.bean.EKW00Z1010Bean&TID=W00Z1010&PID=W1E63011&SESSIONKEY=1579738688285&lgKbn=2&pkbn=0&skbn=1&dskb=&askb=&dflg=0&iflg=0&preId=1&mul=%E3%81%99%E3%81%8B%E3%81%84%E3%82%89%E3%83%BC%E3%81%8F&fls=on&cal=1&era=R&yer=&mon=&pfs=5&row=100&idx=0&str=&kbn=1&flg=&syoruiKanriNo=S1009ZWK)

2017年(従業員の状況のページ)(https://disclosure.edinet-fsa.go.jp/E01EW/BLMainController.jsp?uji.verb=W00Z1010initialize&uji.bean=ek.bean.EKW00Z1010Bean&TID=W00Z1010&PID=W1E63011&SESSIONKEY=1579738688285&lgKbn=2&pkbn=0&skbn=1&dskb=&askb=&dflg=0&iflg=0&preId=1&mul=%E3%81%99%E3%81%8B%E3%81%84%E3%82%89%E3%83%BC%E3%81%8F&fls=on&cal=1&era=R&yer=&mon=&pfs=5&row=100&idx=0&str=&kbn=1&flg=&syoruiKanriNo=S100CON2)

2018年(従業員の状況のページ)(https://disclosure.edinet-fsa.go.jp/E01EW/BLMainController.jsp?uji.verb=W00Z1010initialize&uji.bean=ek.bean.EKW00Z1010Bean&TID=W00Z1010&PID=W1E63011&SESSIONKEY=1579738688285&lgKbn=2&pkbn=0&skbn=1&dskb=&askb=&dflg=0&iflg=0&preId=1&mul=%E3%81%99%E3%81%8B%E3%81%84%E3%82%89%E3%83%BC%E3%81%8F&fls=on&cal=1&era=R&yer=&mon=&pfs=5&row=100&idx=0&str=&kbn=1&flg=&syoruiKanriNo=S100FI4D)

小売業・東証の平均PER(https://kabuyoho.ifis.co.jp/index.php?action=tp1&sa=ranking&ex=per)

すかいらーくのPER(https://stocks.finance.yahoo.co.jp/stocks/detail/?code=3197.T)

2014年再上場時ののれん(https://ssl4.eir-parts.net/doc/3197/tdnet/1216278/00.pdf)

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