米国で新型ETFが流行中!? 不開示アクティブETFの特徴とは
LIMO / 2020年2月11日 20時40分
米国で新型ETFが流行中!? 不開示アクティブETFの特徴とは
ETFとは上場投資信託(Exchange-traded funds)のことで、ETFは投資信託を証券取引所に上場して、取引時間内であればいつでも売買ができる投資信託です。一般の投資信託が1日に1回計算される基準価額で売買するのと比べ、ETFは時価で売買されるのが大きな違いです。
約30年前にカナダのトロント証券取引所に上場された投資信託が世界初のETFと言われ、以降米国を中心としてETFの設定が相次いでいます(詳しくは拙著※ご参照)。
以前の記事『本格的ETF(上場投信)時代の到来。流れはアクティブからパッシブへ(https://limo.media/articles/-/15402)』でも紹介したとおり、最近では世界的にETFへの資金流入が一般の投資信託を上回っています。
日本でも、日銀が日本株ETFを毎年6兆円購入することになっていますので、日本の契約型投資信託残高約123兆円のうち、ETFの残高は既に約43兆円にもなっています。このペースで行けば、4〜5年以内に国内ETFの残高が追加型株式投資の残高を上回ることになりそうです。
※『ETF投資入門(https://www.amazon.co.jp/gp/product/4822246280/ref=as_li_tl?ie=UTF8&tag=minamiyama04-22&camp=247&creative=1211&linkCode=as2&creativeASIN=4822246280&linkId=a766f96f252bf756dd4b3ce920af3e74)』(日経BP)
新型ETF:不開示アクティブETF(Non-transparent)とは?
さて、ETF先進国である米国で注目されているのが、不開示アクティブETF(Non-transparent)と呼ばれる新しいETFです。
現在取引されているETFのほとんどは、S&P500指数を始めとする主要な株価指数に連動するパッシブETFです。しかし、この不開示アクティブETFは株価指数の運用成果に連動することを目標とせず、市場平均値を上回る運用成果を計上することを目的とするアクティブ型のETFでありながら、従来のETF(含む、アクティブETF)とは異なり、日次で保有銘柄や一株あたりの純資産総額を開示する必要がないETFです。
少々区分けがややこしいのですが、この不開示アクティブETFが登場したことで、米国でもETFの種類が増えてきました。ざっと種類分けをすると以下のようになります。
パッシブETF:SPDR S&P 500 ETF(残高:約34兆円)など
アクティブETF:PIMCO Enhanced Short Maturity Strategy Fund(約1.6兆円)など
不開示アクティブETF:ActiveShares(ETFプラットホーム)など
1と2は従来型のETFと同じカテゴリーとなります。投資手法はパッシブ(指数連動)かアクティブ(指数非連動)になりますが、取引手法や開示方法は同じです。
図表は1〜3までのETFの違いを米国基準で表したものですが、従来のETFと不開示ETFの大きな違いは、“フロントランニング”が可能かどうかと“知的財産権”の保護機能の有無になります。
フロントランニングは競合他社の取引状況を知りながら、その他社に先んじて株式(有価証券)を買い付けることです。すなわち先回りですね。
パッシブETFであれば指数連動のため、先回りして株式を買ったとしてもポ-トフォリオの出来上がりは理論上同じになるはずですから、それほど影響はありません。しかしながら、従来のアクティブETFは日次での売買銘柄を開示しなければなりませんので、競合他社に売買の内容が知られてしまいます。
アクティブ運用は、同業他社と異なった銘柄の売買や運用手法を駆使して超過収益を上げていくのが”売り”ですから、その手の内を明かさなければならないのは致命的です。
知的財産権の保護に関しては、運用手法や戦略自体が知的財産権にもなりますので、売買実績を知られて真似されるということは、知的財産権の侵害とも考えられます。
不開示ETFの登場で流れが変わる?
アクティブETFは運用内容を開示しなければならないことで、米国市場においてもそれほど拡大してきませんでした。ただ今後は、開示に制限がかかる不開示ETFが登場することで、パッシブETFに押されているアクティブ運用全体を下支えする可能性があります。
米国では今のところフィデリティ、Tロウプライス、ゴールドマン・サックス等の運用会社が不開示ETFの設定を表明しています。
もっとも、最大のパッシブETFであるS&P500指数連動ETF(SPDR S&P 500 ETF)のパフォーマンスが2019年は+28.8%となりましたので、これを上回るアクティブ運用のハードルはかなり高いものになるでしょう。
さりながら、米国の有力運用会社は今後のマーケット拡大を俯瞰し、プラットフォーマーとしてこの新しい戦略に楔を打ち込んでおく意味があるのでしょう。
ちなみに要不要は別にして、日本では今のところアクティブETFは認可されておりません。
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