小売業には先がない? 二重構造で生き残る丸井グループ
LIMO / 2020年2月11日 8時20分
小売業には先がない? 二重構造で生き残る丸井グループ
「小売業には未来がない」と、多くの経済誌などで言われています。
私自身もここ2、3年の流れを見て、そうなることには確信に近いものがありました。AmazonなどのECの台頭に加えて、消費者がモノを欲しがらなくなっている。モノからコトへのシフトは今や常識です。
もしあなたが小売業の経営者なら、この難局をどうしますか? 今回は丸井グループの事例から、生き残りの経営手法を考えます。
丸井グループの変貌
丸井グループは、いつの間にかまるで違う会社に転換していました。かつてはファッション(アパレル)というモノを売り若者の人気を集めていたのですが、今では「貸す」という事業が主体になっています。
具体的には、従来の仕入契約に基づく百貨店型のビジネスモデルから、不動産契約によるSC型・定期借家(定借)型のビジネスモデルに転換しつつあります。
さらに、店舗ではその場で売るのではないウェブとリアルの融合型に移行してもいます。
その一例が、女性向け靴の体験ストア「ラクチンきれいシューズ Fit Studio」です。ここでは、無料で足の計測、靴選び、試着、靴の調整ができますが、サイズが19.5~27㎝までと幅広く対応していることが特長です。そして、店舗には販売用の靴はなく、店頭のタブレットか顧客のスマホで購入する仕組みです。
最近は百貨店なども改革を始めていますが、少子高齢化、ECの台頭、即日配達の普及など世の中の変化はさらにその先を行き、小売り業態の凋落に歯止めがかかっていません。その中で丸井グループは自社の強みを活かしながら消費の新しい形に対応しているのです。
たとえば、丸井グループが発行しているエポスカードによる「家賃保証サービス」、アニメ事業部を立ち上げてアニメ・漫画などの製作委員会に出資する形で行っているコンテンツビジネスはその代表例です。
経営の中核は「共創」
同社はまた、2018年にグループ会社として「tsumiki証券」を設立。これまで証券投資から対象とされることが少なかった若者に向けに月3,000円から手軽に始められる積立投資信託のサービスを始めています。
さらに、定期借地化、ショッピングセンター化による完全固定の収益構造への変更、あるいは売上げに連動しにくい固定比率の割合を高くしたことで、モノを売ることが目的でない売り場ができる環境をつくりました。
丸井グループの青井浩社長は、経営の中核を「共創」と考えています。この考え方は創業者の「信用は私たちがお客様に与えるものではなく、お客様と共に創っていくもの」という言葉に由来しています。
すべての事業の方向性は「小売店舗を持っている金融業者」ともいえる自社の強みがより強くなるようになっているのです。
独自路線で企業価値を高めていけるのはなぜなのか?
今回、丸井グループの事例研究で気づいたのは、自分の強みを徹底的に分析して独自のポジションを取りに行く競争戦略の原点です。特に、市場が激変するなかで生き残るため、ストックビジネスに構造転換するという意味でのヒントがたくさんありました。
今でこそ信用価値という言い方が広がりましたが、早くにそこに視点を定めていたという代々の経営方針は「信用を作る部分(小売というフロー)」と「稼ぐ部分(金融というストック)」を別に作るという形で時代を先取りしていたと思います。
同社はこの二重構造の強みを活かしながら、ストックである金融をベースに安定利益を確保しつつ、小売業態の凋落に果敢に対応しています。
今回は、ストックビジネスの研究機関であるストックビジネスアカデミーが毎月配信するレポートの一つ「事例解読レポート第17号」からほんのさわりをご紹介しました。気になった方は、ぜひ実店舗に行って丸井グループの取り組みを肌で感じることをお勧めします。
筆者が携わるストックビジネスアカデミー(http://otaketakahiro.com/jissen)は、ストックビジネスの仕組みを研究しています。そこでは会員に思考のヒントを送り届けるために、毎月ストック思考をフル活用して事例解読をしています。ご興味のある方は一度覗いてみてください。
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