発達障害の子どもの「自己肯定感」を高める勉強法とは?
LIMO / 2020年2月22日 8時45分
発達障害の子どもの「自己肯定感」を高める勉強法とは?
「発達障害」という言葉の認知が広まってきたこともあり、子どものちょっと変わったところに気付くと、「自分の子どもは発達障害なのでは?」と不安に思う親御さんが増えたように思います。また、そのような診断をする医師が増えたこともあり、実際に「発達障害」という診断を受け、不安になる親御さんも多いことでしょう。支援が広まってきたのと同時に、不安も広まってしまっているとしたら、とても皮肉な状況です。
では、どうしたらよいのでしょう? 拙著『発達障害の子どもが自己肯定感を高める最強の勉強法(https://amzn.to/39rv18f)』(日本能率協会マネジメントセンター)では、できないことを嘆くのではなく、得意分野を伸ばして自己肯定感を高めてどんどんチャレンジしていくことをお勧めしています。この自己肯定感こそが、全ての礎になるのです。できないことを嘆くのではなく、できることに目を向けて伸ばしていくべきなのです。
発達障害があっても東大理Ⅲに現役合格できる!
私は1960年生まれですが、あと40年なり50年遅く生まれていたら、おそらくは発達障害の診断を受けていたのではないかと思います。
小学生のときは落ち着きがなく、授業中の立ち歩きの常習犯でした。まさにADHD(注意欠陥多動性障害)的な傾向だったと思います。そのことで厳しく叱られましたが、私の母親は「この子は頭がいいから、この学校がつまらないのだろう」と考え、より教育レベルが高いとされている地域の学校に私を転校させました。
母は私にこう言いました。「あんたは変わりもんやから、会社勤めはできんやろ。医者であれ、弁護士であれ、なんか資格を取らへんと、食べていかれへんよ」と。
そう言われてから、変わり者に生まれた以上、変わっていても食べていくためには、勉強をしっかりやるしかないと思い、勉強に励んだのです。このことが、今に繋がる原動力になったと思います。結果的に勉強に没頭することができ、灘中学校に入ることができました。
これには、ASD(自閉スペクトラム症)的な傾向の、「過集中」という部分がプラスに働いたのだと思います。ADHDとASDは相反するイメージが強いのですが、実際には重複していたりしているので、理解がされにくいところでもあります。私はまさに発達障害の特徴が重複していたのでしょう。
ただ、それで以後も順調だったわけではありません。中学校入学後、実は勉強がうまくいかず、落ちこぼれてしまった時期がありました。しかし、そこで自分が天才ではないことに気付き、勉強法の工夫で学業不振を乗り切ったのです。
そして東京大学理科Ⅲ類(医学部進学コース)に合格することができました。発達障害があると、苦手科目もあって受験で不利だから、教科数の多い東大受験は不利だと思っている人が多いのではないでしょうか。
しかし、私は逆だと思います。科目数が多いからこそ、苦手な科目があっても得意科目で逆転できるのです。現に、私は心情読解が苦手で模試などでも国語は壊滅的な成績でしたが、得意な数学と理科で乗り切ることができたのです。
KYが世界を変える!
私が医学部を目指したのは、映画を撮りたかったからです。好きな映画でお金が稼げなくても、資格があれば、趣味にお金をつぎこむことができると思っていたわけです。やはり、変わった子にこそ、資格は武器になると思います。
そして30代で大学を離れてフリーの医師になってから、大学教授、映画監督、著述、精神科医と日々違った仕事をしていて、一カ所に留まっていません。これも、気が散りやすいADHD的特性を活かした働き方だと思っています。
高度成長期からバブルの時代であれば、上司から言われたことだけやっていれば勝手に業績も向上して、評価されていたことでしょう。しかし、今の時代は人と同じことだけやっていても埋没してしまう。人と違う、色々なことが出来る方が有利な時代なのです。
私は常々、時代を変えるのは「KY(空気読めない)」なのだと思っています。発達障害がある人、特にASD的な傾向がある人は行間を読むとか、察するとか、そういうことが苦手です。だからこそ、人に気兼ねすることなく思い切った変革にチャレンジすることができるのです。そういう人材こそ、これからのVUCA(※)時代に求められているのではないでしょうか。
(※)VUCA(ブカ、ブーカ)・・・「Volatility(激動)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(不透明性)」の頭文字をつなげたビジネス用語
和田式勉強法は、発達障害の子どものためにある
そういうわけで、私は発達障害がある人の可能性を信じています。
かつての劣等生から脱出するときの工夫をもとにしたのが和田式勉強法ですが、この方法は発達障害があるかもしれないという子どもにこそ、役立つはずです。私は今まで「緑鐵受験指導ゼミナール(http://www.ryokutetsu.net/)」という受験対策塾を監修していましたが、今後はこの通信教育だけでなく個別指導塾も作って、発達障害がある生徒をより積極的に受け入れていく方針です。
教科によって成績のバラつきが大きくても、集中力が長続きしなくても大丈夫。苦手な教科は本当に基礎の基礎から学習しなおし、得意な教科はどんどん先に進めていく。その子の認知の特性にあわせた学習プランを提供できればと思っています。発達障害があるかもしれない子どもに勉強という「武器」を持たせたいと思われている方は、是非一度、ご相談ください。応援しています!
〈著者プロフィール〉
和田秀樹(わだ・ひでき)
1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローなどを経て、現在、国際医療福祉大学教授、川崎幸病院精神科顧問、和田秀樹こころと体のクリニック院長、「I&Cキッズ スクール」理事長。
27歳のときに執筆した『受験は要領』(ごま書房)がベストセラーとなり、緑鐵受験指導ゼミナールを創業。映画監督としても活躍し、受験指導経験をもとに制作・監督した『受験のシンデレラ』は、モナコ国際映画祭で最優秀作品賞を受賞。
『アドラー流「自分からべんきょうする子」の親の言葉』(大和書房)『受験学力』(集英社)『医学部にとにかく受かるための「要領」がわかる本』(PHP研究所)ほか、著書多数。
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