”残業を減らせ”圧力の中で残業する人たちの言い分。働き方改革が多様性を奪う?
LIMO / 2020年2月17日 20時15分
”残業を減らせ”圧力の中で残業する人たちの言い分。働き方改革が多様性を奪う?
最近は、働き方改革によって定時に帰宅できるようになったという会社もあると思います。その一方で、残業削減の掛け声の中でも、残業をし続ける人たちがいるようです。それは何が目的なのでしょうか。
今回は残業を減らす気がないという4人に話を聞いてみました。
残業をしないとそもそも生活できない
ある人材会社で働くAさん。彼女は現在契約社員として営業の部署で働いていますが、残業を減らす気はないと言います。
「そもそも、残業を減らしたら生活していけない。営業として働いているのに毎月のお給料はとんでもなく低い。基本給は18万円。営業手当てや住宅手当てもないし、成績が良くてもインセンティブがない。残業代をもらわないと生活できないのに働き方改革なんてムリ…」と嘆きます。
Aさんが言うには、「残業代が入れば額面24万円くらいまではいくけれど、それでも手取りは20万円を切ることが多い。転職しようと思っても忙しくて時間も取れないし、面接のための休みも取れない」そう。
「職場は常に人手不足で、誰かが休むと職場にギスギスした雰囲気が流れるし、休んだ人の仕事をカバーするのは大変だというのがわかっているから休めない。休んだら悪口を言われるような気がする」とのこと。職場自体に余裕がなく、互いにフォローする余裕もない状況がうかがえます。
「会社でも”働き方改革で残業を減らそう”という全社員向けのメールは飛んでくるし、朝礼でも上司から『残業が多い!』と言われることもあるけれど、いまのところウチの部署の人たちには何も響いてない」とのこと。
ほかにもAさんと同じように残業を継続している人がいると話してくれました。
人は増えない、仕事は減らないのに残業を減らせとは…
IT企業で働くBさん。「うちの部署は人が少なくて、残業が月に80~100時間レベル。なのに、どんどん新規の受注が入るので、リソース不足で納期に遅れが出るのが当たり前になってきた」とため息。
「このままでは、提供しているサービスの品質に支障が出るのも時間の問題。会社の信用問題にかかわることだから、みんな残業時間なんて気にせず働いている」と話します。Bさんの言う通り、会社のサービス品質に問題が生じれば、経営自体が傾きかねません。
さらにBさんは続けます。「それなのに、人事部から『残業を減らせ』と指示がきて、社長も4月から『従業員の残業が月平均40時間を超えている部署を社内掲示板に貼り出す』と言っている。それで部長は残業を減らすのに躍起。社長に媚びを売って昇進してきた部長にとって、そんなものを貼り出されてはたまらないんだろう」とため息交じりに話してくれました。
Bさんは何度か部長に、人員を増やすよう要求したり、新規の受注をいったん停止するよう求めたと言います。それでも、「ふざけたことを言うな」「人なんてそんなにすぐに採用できるものじゃない」と一蹴されてしまったのだそう。
受注の調整や採用活動に関する判断がすぐに下せるわけではないのはBさんもよくわかっているそうですが、何も変えないのに残業だけ減らせという姿勢に納得ができないと話してくれました。
仕事が好きなのに残業できないのは多様性を認めないこと?
証券会社勤務のCさんは、「仕事が好きでもっと働きたいのに、一律で残業を規制するなんていうのは多様性を認めないことなのではないか」と異議を唱えます。
「仕事が好きで、仕事が生きがい。家族のためにももっと働いて昇格したいし、認められたい。働くことは自己実現の一つだと思っている。そういう働く意欲や働き方に対する価値観を認めずに残業を減らせというのは納得できない」と話します。
「人によって異なる働き方への価値観を、『残業を減らすこと』が万能の正義かのように押さえつけるのはどうなのか。性別や国籍、文化などの多様性を認めるというのであれば、働き方に対する考え方の多様性も認めてほしい」とのこと。
確かに働き方の理想や働くことへの価値観は人それぞれですから、Cさんの意見にも一理あるように思えます。
日中は電話や会議などでつぶれるのでやむをえず残業を
マスコミ関連企業で働くDさんは、「日中は会議や取引先との打ち合わせ、電話対応も多いし現場に取材に行くことだってある。そのためにデスク作業の時間が作れない。でも、デスク作業をしないと打ち合わせや取材にも影響が出るし、会議に使う資料を作れなくなってしまう」と残業の理由を語ります。
「周囲が帰って誰も話しかけてくる人がいなくなって、電話も鳴らなくなってからようやく自分の仕事に集中できる」とDさん。同じことを思って残業をしている人も少なくないのではないでしょうか。
おわりに
残業を減らすために生産性を上げろだとか、効率よく仕事をするべき、と言われることも多いのですが、やはり仕事量が減らないまま残業を減らすのは容易ではありません。会社側も業務全体の見直しをする必要性を認識してほしいものです。
今回とりあげた4人の話に思わず共感した人も多いのではないでしょうか。働き方改革が思うように進まないと頭を悩ませる経営者の人たちも、その理由に目を向けてもっと工夫をする必要がありそうですね。
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