新型肺炎は韓国企業にも大打撃~サムスンやLGの工場にも影響
LIMO / 2020年2月17日 11時20分
新型肺炎は韓国企業にも大打撃~サムスンやLGの工場にも影響
本記事の3つのポイント
新型肺炎の影響で、韓国の半導体・FPD業界での懸念も高まっている。サムスンやLGは中国国内の工場も稼働を中止
サムスンやSKハイニックスの半導体工場は現在も操業を続けているが、今後影響が長期化すれば稼働に支障が出てくる可能性も
韓国は19年ベースで中国に1362億ドルを輸出。これは全輸出額の38%強を占め、中国への依存も浮き彫りになっている
中国発の新型肺炎の感染拡大によって、韓国の半導体・FPD業界でも懸念が高まっている。工場の稼働を中止したり、キャパシティーを調整する工場が増えつつある。素材や部品などに関して中国現地のサプライチェーンが崩れることが憂慮されているためだ。
FPDモジュール工場稼働を中止
中国に液晶と有機ELパネル工場を持つサムスンディスプレー(SDC)とLGディスプレー(LGD)は、すでに生産に支障が出始めている。LGDは、2020年1月に烟台(山東省)の液晶モジュール工場の稼働を中止し、1月末からは南京工場の稼働も中止した。LGDは広州、烟台、南京の3カ所にモジュール工場を持つが、このうち2カ所の稼働が停止したことになる。
また、SDCも東莞(広東省)と天津に運営中のスマートフォン向け中小型有機ELモジュール工場のキャパシティーを調整しているもようだ。したがって、新型肺炎の影響が長期化する場合、両社の液晶・有機ELパネル工場に与える影響は決して小さくない。エレクトロニクス業界のサプライチェーン・マネジメント(SCM)が大きく混乱してしまいかねない不確実性を抱えているのだ。
SCM混乱への懸念高まる
SDCとLGDが運営している液晶パネル工場の稼働中止への懸念も高まっている。FPDパネル工程は半導体工程と構造が似ているだけに、稼働を中止すると再稼働は決して容易ではなく、莫大な損失を被る。
SDCは蘇州に液晶パネル工場を、LGDは広州に液晶と有機ELパネル工場を運営しているが、中国政府は「稼働中止」を継続的に呼び掛けているそうだ。新型肺炎の影響が長期化するなら、稼働中止が避けられなくなるだろう。
実際、一部の中国液晶パネルメーカーの稼働中止が現実化しつつあり、市場調査会社のIHSマークイットは、新型肺炎によって中国全体の液晶パネルの生産キャパシティーが、20年2月中に最大で20%以上減少すると推定している。
SCMが混乱するという懸念もFPD業界における不確実性を高めている。FPDパネルの製造工程には数千種類の素材・部品が使われているが、今後の安定的な確保が難しくなるためだ。現代自動車は、中国産の部品供給が途絶えたため2月5日から稼働中止を余儀なくされた。FPD業界でも今後そうした事態が発生しうる。
韓国企業に2月9日まで稼働中止通知
新型肺炎の感染拡大が長期化すると、中国現地に工場を運営している韓国メーカーの生産性が懸念されている。半導体をはじめ、FPDや石油化学業種などの大半の工場は自動化になっていることから、直近では大きな被害はないものの、影響が長期化かつ広範囲になった場合、操業をストップせざるを得ないだろう。
韓国経済界では、新型肺炎が早期に終息せず、3カ月以上続いた場合、韓国企業が2020年度の生産量や業績の計画を見直すという最悪の事態が発生しうるとみている。
すでにサムスン電子の中国白物家電工場やSKイノベーションのリチウムイオン電池建設工事には支障が出始めている。また、中国に白物家電や電装工場を運営中のLG電子は、春節の連休を延長するという苦肉の策に打って出ている。また、中国に完成車工場を稼働している現代・キア自動車も春節休暇を延ばしている。
韓国の中小・中堅企業の経営にもネガティブな影響を与える可能性が高くなっている。現状では直接的なダメージはないが、中国政府は中国国内に工場を持つ韓国の中小・中堅企業に対して、2月9日まで工場の稼働を中止するよう一括に通知し、製品生産にストップがかかった。
長期化は半導体にも悪影響
生産工程の自動化で春節連休期間中も1日24時間稼働している半導体・FPD工場。新型肺炎の影響で中国IT業界が低迷することによって、サムスン電子やSKハイニックスの主要取引先の生産が滞れば、韓国経済への大打撃は避けられない見通しだ。
中国現地には韓国大手半導体メーカーの工場が稼働している。SKハイニックスは無錫にメモリー半導体工場を運営しており、サムスン電子も西安にメモリー半導体工場を構えている。とりわけ、サムスン電子は、西安工場に80億ドル(約8720億円)を追加投資する。20年上期に稼働予定の西安第2工場フェーズ1に加えて、追加投資を行い、メモリー半導体市場の需要増に対応する狙いだ。
このように韓国半導体・FPDメーカーは中国現地に大規模な工場を擁しており、関連する装置・材料メーカー数百社がともに進出している。
韓国は19年ベースで中国に1362億ドルを輸出した。これは全輸出額の38%強を占めており、中国に頼りすぎている。一方で、韓国の全輸出額の30%強を占める国家大黒柱産業が半導体・FPDなのである。
新型肺炎の感染拡大がさらにエスカレートしてしまえば、中国経済の減速は必至であり、その影響をもろに受ける韓国経済への打撃も大きくなる。1日も早い解決を望むばかりだ。
電子デバイス産業新聞 ソウル支局長 嚴在漢
まとめにかえて
新型コロナウイルスの影響は経済活動に甚大な影響を与えようとしています。製造拠点が数多く集積する中国国内でウイルスの感染拡大に歯止めがかかっていない以上、サプライチェーンの混乱は避けられそうにありません。エレクトロニクス分野を筆頭に、自動車分野でも影響は広がるばかりです。2002~03年にかけて流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)の時と異なり、製造業における中国のプレゼンスは一層高まっています。それだけに、経済面においてSARS以上の深刻なダメージは想定されるところです。
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