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東京五輪の謎:「パソナの派遣職員とボランティア、本当のところどう違うんですか!?」

LIMO / 2020年2月23日 20時0分

東京五輪の謎:「パソナの派遣職員とボランティア、本当のところどう違うんですか!?」

東京五輪の謎:「パソナの派遣職員とボランティア、本当のところどう違うんですか!?」

大会ボランティアのライターが組織委員会に突入取材!(1)

東京オリンピックの開催まで半年を切ったというのに、いまだに「同じ仕事なのにパソナは有償で、ボランティアは無償」といったニュースを目にすることが多い。

私(ライター)は、大会ボランティアとして参加する予定だが、評判が悪いまま大会に参加するのは不安だ。組織委員会からの回答も見かけるけれど、なんだか煮え切らないというか。だったらいっそ自分で聞きに行ってみようと取材を申し込んだところ、受けてくれるという。ボランティア目線でかなり突っ込んだ質問もしたところ、意外な事実が見えてきた!

取材に答えてくれた、公益財団法人 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の担当者は以下の通り。

総務局 ボランティア推進部 部長 兼 人事部 担当部長 傳 夏樹氏
総務局 ボランティア推進部 ボランティア推進課長代理 古瀬 浩一氏
総務局 人事部 採用課長 朱 賢太氏

<取材・文/下原一晃 フリーライター。東京五輪・パラリンピックに、大会ボランティア(フィールドキャスト)および、東京都の都市ボランティア(シティキャスト)として参加予定>

準備フェーズからすでに多くの派遣職員が活躍

――まず、皆さんの組織委員会における役割についてお聞かせください。

:私は、総務局の人事部採用課という部署に所属しており、組織委員会(以下、組織委)の職員採用を行っています。組織委はパートナー企業からの出向者も多いため、パートナー企業からの出向調整も含まれています。

:私と古瀬は、朱と同じ総務局ではありますが、その中のボランティア推進部という部署に所属しています。ボランティア推進部は、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、東京2020大会)の大会ボランティア(フィールドキャスト)の募集、面談、研修、さらに実際の活動に向けてボランティアプログラムの運営を行っています。

――早速ですが、パソナグループ(以下、パソナ)が2019年11月、東京2020大会において派遣契約で働くスタッフ約2000人を募集する広告を求人誌「タウンワーク」に掲載しました。

そうしたところ、「同じような仕事なのに、派遣契約によるスタッフは時給1600円と有償で、大会ボランティアは無報報酬で差がある」と注目されました。大会ボランティアの中にも戸惑っている人もいるようです。

:ご説明が足りず申し訳ありません。まず前提として、組織委では直接契約の方も派遣の方も出向の方も「職員」として働いています。その中で大会ボランティアの活動と組織委のスタッフとして働く職員の仕事は同じではなく、実際にはかなり異なります。

たとえば活動する期間です。東京2020大会は、開催に向けた準備をする準備フェーズと、実際の大会運営に関わる大会フェーズに大きく分けることができます。準備フェーズでは文字どおりあらゆる準備が必要です。

大きなところでは競技場の建設もその一つです。実際の建設は建設会社が行いますが、その仕様の決定、工事の進捗管理や資金管理などは組織委の職員が行います。ほかにも、競技用の備品のほか、車両、機材、さらにはサービスの調達も行います。
 
備品などを調達すれば、それに対する支払いをしなければなりません。経理部門もあって一般的な企業と同じように、ExcelやWordなどのスキルが高い派遣職員もたくさんいます。

大会フェーズで、派遣職員はマネジメントなどを担う

――準備フェーズでは確かに、機材や備品の調達などの仕事もあって、大会ボランティアの活動とはかなり違うことはわかりました。そもそも準備フェーズには大会ボランティアはほとんどいませんので、同じ仕事(活動)ではなさそうです。

しかし、大会フェーズになるとどうですか。パソナの広告を見ると、大会ボランティアの活動内容と似ているように思えます。

:これもご説明の仕方がよくなかったと反省しています。大会時職員の仕事をわかりやすく伝えようと、業務の様子をイラストで表現したのですが、同じユニホームを着て一緒に活動している様子を描いたため、派遣職員があたかも大会ボランティアの活動と同じ仕事をするように感じられた方が多かったようです。

実際は、派遣職員が大会ボランティアと同じ場所で仕事をすることはあっても、ボランティアと同じ活動をすることはありません。

組織委員会 総務局 人事部 採用課長 朱 賢太氏

――派遣職員とボランティアが「同じ場所で仕事をすることはあっても、同じ活動をすることはない」とはどういうことですか。

たとえば「トランスポート」という活動があります。大会関係者や観客の輸送に関する活動です。ボランティアはおもに車両の運転(移動サポート)活動を行うことになっています。そこでのボランティアの活動と組織委の派遣職員の仕事の違いは何ですか。

:組織委の派遣職員は原則車両の運転は行いません。輸送に関する管理・運営をするのが仕事です。

具体的には、大会期間中、いつ、どこで、どれだけの移動サポートのニーズがあるのかを関係各所にヒアリングしたり、そのために必要な車両やドライバーとして活動いただくボランティアにお願いをしたりシフトの作成など行ったりします。

さらにボランティアが実車している最中には、GPSで車両の位置のモニタリングを行い、渋滞が発生して会場などに着く時間が遅れそうになれば、各所に連絡をすることもあります。

大会期間中はボランティアが運転する車両だけでなく、バスなども含めてさまざまな車両が運行します。職員万一これらに事故が起こった場合などにはその一次対応を行います。

――派遣職員が車両やカーナビなどのトラブル対応なども行うわけですね。かなり車に詳しくないと、ボランティアから尋ねられても答えられないと思います。

ところがパソナの広告では応募資格として「社会人経験があればOK。アルバイトの場合はリーダー経験ある方」などの表記も見かけました。事故対応などは、未経験だと難しいのではないですか。

:確かにそのとおりです。事故対応のスタッフの場合、職員もかなり経験や専門性が求められます。自動車保険の事故対応コールセンターなどに勤務した経験のある方が望ましいと考えています。

一方で、ドライバーのシフト管理などは、一定のマネジメントの経験があればできると考えられます。これを「社会人経験があればOK」と表現しました。

現在パソナなどで募集している派遣職員の仕事には2000以上のポジションがあり、それぞれに求められるスキルや経験が異なります。ExcelやWordが得意な人が望ましいというポジションもあります。ITや通信機器のテクノロジーの知識や経験が求められるポジションもあります。

組織委員会の派遣職員とボランティアは、指揮命令系統もまったく別

――説明を聞くと、大会フェーズなどの短期の場合でも、派遣職員の仕事はどちらかと言えばかなりマネジメント寄りのように思えます。ボランティアの活動とはだいぶ違うことはわかりました。

ただ、その場合、活動場所でボランティアに指示をするのが派遣職員の役割ということになりますか。

:組織委の職員はボランティアリーダーと緊密にコミュニケーションをとりながら、ボランティアメンバーに協力してもらい、それぞれの活動場所での活動を遂行するのが役割です。したがって、ボランティアとは指示とか指揮命令という関係にはありません。

なお、組織委の派遣社員とボランティアは企画・運営を行う部署が異なります。組織委の派遣社員は私が所属している人事部採用課が運用を行いますし、ボランティアは傳や古瀬が所属しているボランティア推進部が運用を行います。

――「『ボランティアは途中でやめても引き留められないため、雇用関係のあるスタッフを最低限確保しておく必要がある』と組織委が答えた」と報じている新聞もありますが。それも違うということですか。

:取材時にどのような表現でお答えしたのか不明なのですが、組織委の職員がそのような趣旨で話すとは考えにくいのです。

というのも、今お話ししたように、組織委の職員とボランティアは指揮命令関係ではないですし、組織委の職員とボランティアは代替の関係にはありません。

:ボランティアが体調不良などで休んだり、その後、活動そのものを辞退されたりといったこともあるかもしれません。その場合は、私たちが所属するボランティア推進部および大会時であれば各会場の担当者が対応します。

組織委員会 総務局 ボランティア推進部 部長 兼 人事部 担当部長 傳 夏樹氏

パソナによる派遣職員の募集は当初から計画されていた

――なるほど、組織委の派遣職員とボランティアは採用・募集を行う部署が異なるだけでなく、仕事や活動も違うことがわかりました。

ただ、そもそもの話なのですが、私たち大会ボランティアにとっては、昨年11月に唐突にパソナの求人広告が出てきたような印象があり、戸惑いがあります。組織委で派遣職員を募集することは当初から予定していたことなのですか。

:前々回のロンドン大会など、過去の大会でも、派遣業法などの法律は日本とは異なるものの、短期雇用の職員を多数採用しています。

オリンピック・パラリンピックでは、限られた期間に大量の人材を採用しなければなりません。そこで過去大会でも、特定の分野でノウハウや実績のある人材サービスカテゴリーの企業にスポンサーとして入ってもらっていました。東京ではパソナグループがスポンサーとなって、サービスを提供してもらっています。

過去の大会でも、大会が始まる1年前から半年前にかけて多くの短期雇用職員の採用を始めています。ちなみに、組織委は2014年に発足しました。当初は数十人という規模でしたが、2020年1月1日現在で、職員の数は直接雇用・出向・派遣職員を合わせて約3400人にまで増えています。

11月に求人広告を出すかなり前から、パソナグループには派遣職員の派遣を手伝ってもらっています。

つづく:第2回は「ボランティアは不足しているのか」について(2月24日公開予定)

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