老後は年金だけで大丈夫…?老後の収入と生活費を試算してみよう
LIMO / 2020年2月25日 19時15分
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老後は年金だけで大丈夫…?老後の収入と生活費を試算してみよう
2019年に大きな話題となった金融庁の『老後2,000万円問題』ですが、老後生活の主な柱は、やはり「年金」です。年金の「見込み額」については誕生月に届く「ねんきん定期便(※1)」で確認できますが、わたしたちは公的年金で生活していけるのでしょうか。
「老後2,000万円問題」を振り返ろう
昨年、金融庁のレポート(金融審議会市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」(https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603/01.pdf))で話題となったポイントを振り返ってみましょう。
・平均的な無職の高齢夫婦世帯で月5万円の赤字が見込まれる
・その場合、老後の20年間(20年×12カ月)で算出すると、不足額は約1,300万円
・老後30年間と仮定して算出すると、不足額は約2,000万円にのぼる
年金支給額は加入内容や実績により金額が異なってきます。老後の生活費や資金準備について改めて考えてみましょう。
【参考】
(※1)『「ねんきん定期便」とは(https://www.nenkin.go.jp/n_net/n_net/nenkinteikibin_2018.html)』日本年金機構
「高齢社会における資産形成・管理(https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603/01.pdf)」金融庁
国民年金・厚生年金の受給額は?
日本国内に住んでいる20歳以上60歳までの人が加入しているのが「国民年金」で、会社員・公務員(旧・共済年金)の場合は「厚生年金」です。厚生年金の金額は、給与や納付月数が反映されるため、条件の違いにより大きな差が出てきます。厚労省の年金額データ(※2)によると、国民年金・厚生年金の支給額は以下の通りです。
・国民年金(満額)受給額…1人あたり月額6万5,141円
・国民年金の平均年金月額…5万6,000円(2017年度末現在)
・厚生年金(第1号受給者)の平均年金月額…14万7,051円(2017年度末現在)
・厚生年金「モデル世帯(二人世帯)」の受給額…22万724円(金融庁レポート)
厚生年金の「モデル世帯」とは、夫は平均的な収入(賞与を含む月額換算43.9万円)で40年間勤務(第1号被保険者)、その妻・専業主婦(第3号被保険者)という世帯が想定されています。夫の収入「月額換算43.9万円」とは、年収に換算すると約526万円となります。
給与実績や就労年数などにより、年金額にも違いがあります。そこで次に、老後の生活費のデータから必要となる資金を計算してみましょう。
【参考】
(※2)「平成31年度の年金額改定についてお知らせします(https://www.mhlw.go.jp/content/12502000/000468259.pdf)」(2019年)厚生労働省
「平成29年度厚生年金保険・国民年金事業の概況(https://www.mhlw.go.jp/content/000453010.pdf)」(2017年度)厚生労働省
老後の生活費はいくら必要?
老後の就労機会は減少傾向となりますし、現役世代と同等の収入を得るのも難しくなるはずです。生活費として、どの程度を想定すべきなのでしょうか。
生命保険文化センターの「令和元年度 生活保障に関する調査(https://www.jili.or.jp/press/2019/nwl4.html)」(2019年度)によると、最低限の生活費、ゆとりある生活費の平均額はそれぞれ以下の通りです。
・「最低日常生活費」の平均額…22万1,000円
・「ゆとりある老後の生活費」の平均額…36万1,000円
また、総務省統計局の調査(※3)によると、平均的な老後の生活費としては
・60~69歳の年齢層(二人以上世帯)…29万1,019円
・70歳以上…23万7,034円
このような金額が分かりました。
【参考】
(※3)「家計調査報告(家計収支編)2018年(平成30年)平均結果の概要(https://www.stat.go.jp/data/kakei/2018np/gaikyo/index.html)」総務省統計局
平均的な生活費で老後の必要資金を計算
平均的な生活費がかかるものと仮定して、老後の生活費について計算をしてみましょう。65歳で定年退職をしたあと、平均的な生活費で暮らした場合、
・60~69歳の1年あたり… 約29万円×12カ月=年間348万円
・70歳以上の1年あたり… 約23.5万円×12カ月=年間282万円
・65歳以降、老後生活20年間で(348万円×5年)+(282万円×15年)=5,970万円
・30年間の場合、(348万円×5年)+(282万円×25年)=8,790万円
一方、「ゆとりある老後生活(夫婦で月額36万1,000円の支出)」の場合は、
・20年間で約36万円×12カ月×20年=8,640万円
・30年間の場合、約36万円×12カ月×30年=1億2,960万円
このような金額が必要となることが分かります。同時に、ゆとりある老後の生活20年分は、平均的な老後の生活費30年分に近い金額になるということも分かりました。
年金支給額は加入者ごとに差がありますし、支給額が将来改定される可能性もあります。老後の健康面や介護費、住居費などを想定すると、老後に向けて早めに資金準備に取り掛かり、資金計画を意識していくことが重要となりそうです。
老後に向けた資金の準備
「老後の生活費を準備できるのだろうか…」と悩んでしまう方もいるかもしれません。それでも、資産の運用であれば退職後も継続して取り組むことができます。個人型確定拠出年金のiDeCoや少額投資非課税制度のNISA、つみたてNISAなどのように、節税対策にもなる資産運用の制度も登場しているので賢く利用しましょう。
iDeCoは年間上限額以内の掛け金が全額所得控除となり、利息や運用益も本来約20%の課税部分が非課税扱いとなります。また、資金を受け取る際、一時金として受け取る場合は「退職所得控除」、年金形式で受け取る場合は「公的年金等控除」が適用されるなど、税制面の優遇がメリットです。
NISAも同様に投資信託の運用益が非課税になる制度で、「一般」と「つみたて」のどちらかを選択します。資金使途は自由で、いつでも引き出し可能な制度です。年間一定枠内までが非課税対象となります。
・「一般NISA」…年間120万円限度×5年間(最大600万円まで)
・「つみたてNISA」…年間40万円限度×20年間(800万円まで)
また、勤務している方が退職する際には退職金が受け取れる場合があります。平均的な退職給付額が年々減少しているという面もあるため決して楽観はできませんが、退職金や社内預金等を老後資金に算入することは可能です。退職金で住宅ローンを清算する予定がある場合は、できるだけローンの繰り上げ返済を行うなど、老後を見据えた行動を起こしておきましょう。
さいごに
数十年にわたる老後に備えていくには相応の時間をかけて準備していく必要があります。現在の資産やローン等の負債を見直したり、住居費等の大きな必要経費を想定して、老後に向けた計画も進めておきましょう。
生前に身辺を整えておくことも、十分、老後生活の準備になります。資金の面と暮らしやすさの両方を改善していくことで、安定した老後を目指していきましょう。
【ご参考】貯蓄とは
総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]によると、貯蓄とは、ゆうちょ銀行、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧日本郵政公社)、銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金、生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価、債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と、社内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいいます。
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