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介護と仕事をこなす「自営業おひとりさま」の暮らしぶりは質素が信条

LIMO / 2020年2月27日 20時45分

介護と仕事をこなす「自営業おひとりさま」の暮らしぶりは質素が信条

介護と仕事をこなす「自営業おひとりさま」の暮らしぶりは質素が信条

「おひとりさま」という言葉を聞いたとき、みなさんはどのようなイメージを思い描くでしょうか。

人生をどのように生きていくかを決めるのは、たとえ不本意であっても最終的には各個人の選択によるところが大きいでしょう。気がついたら、いつの間にか「おひとりさま」になっていたという人もいれば、自らそうなろうと決断した人もいると思います。

今回ご紹介する乙部なるみさんも「おひとりさま」。国内外でグラフィックデザイナーとして活躍する乙部さんはどのような生活を送っているのでしょうか。

デザイナーになるまで

日本の大学を卒業後、医療機器メーカーに入社した乙部さん。病院回りの営業を3年間務め、その後マーケティング部に異動してからは、カタログやリーフレットの制作と管理を主に行っていました。

日々、印刷業者やデザイナーと一緒に企画を進めているうち、デザインに興味を持ち、自分でもやってみたいと思うように。しかし、コンピューターで制作するデザインではなく、自分の感性から生まれる、誰にも真似できないユニークな色彩を生かしたデザインを実現するにはどうしたらいいか試行錯誤するようになります。

パターン化したデザインの版画を南仏で制作する。(画像提供:Narumi Otobe©)

結果として、本格的にデザインを学ぶ道を選択した乙部さん。19世紀英国の詩人でデザイナーでもあるウィリアム・モリスの展覧会をロンドン旅行中に見学し、ユニークな作風に深い感銘を受けたことから、留学先は英国と決めました。

そして、約4年間にわたりデザイン全般を徹底的に学び、キングストン大学の「HNDグラフィックデザイン学科」にて学位を取得、帰国します。

国内外で活躍中

デザインを考案し、そのデザインに命を与えるかの如く完成へと導くのに重要なのは徹底的なリサーチだと乙部さんは考えています。プロとして活動する現在も、その姿勢は変わっていません。たとえば、デザインに取り入れたい花を見つけたら、花弁の繊細さや葉脈の美しさなど細部までしっかり観察してスケッチに残し、ひたすら研究します。

デザインのモチーフは植物が多いため自然の中でアイデアを探すことも多いそうですが、美術館や展覧会も定期的に訪れ、そこで見た作品からインスピレーションを得て、それが新たなデザイン・パターンを生み出すきっかけになることもあるといいます。

デザインはいろいろなところでインスピレーションを受けるため、スケッチが欠かせない。(画像提供:Narumi Otobe©)


現在、国内で展覧会を年に3回行いつつ、デザインのモチーフを充実させるべく毎夏、英国と南仏に滞在し、版画工房で制作にいそしむこともライフワークのひとつになっています。

また、彼女独自のデザインを美しくあしらったオリジナル・グッズの制作と販売にも力を入れています。日本はもちろん、英国でも販売されており、そのユニークな作風は、イギリス人からも好評を博しています。

英国・ロンドンにあるショップで販売されているオリジナル・カード。(画像提供:Narumi Otobe©)

仕事と両親の介護に勤しむ日々

国内外で活躍中の乙部さんですが、それでは「おひとりさま」としてどのような生活を送っているのでしょうか。

デザイン制作に加え、ここ数年は特許図面レイアウトの仕事を在宅で請け負い、得た収入は生活費として自分の食事代や日用雑貨購入、通信費や光熱費に当てています。また、英国の店や作品展の場で販売されるグッズの収益は、絵の具などの材料購入および渡英費用の一部にしています。

デザイン制作とグッズ販売、そしてレイアウトの仕事と二足も三足もわらじを履いているのだから高収入なのでは?と思われがちなのが悩みで、「残念ながら現実は厳しく、おそらく皆さんが想像している額の10分の1くらいしか稼いでいません」とのこと。

こうして、実はつましく生活する中、趣味のギター演奏で息抜きをしながら仕事に精を出すことで生活にメリハリを持たせるようにしているといいます。

国内のカフェで販売されているカードやお財布、しおりなどのオリジナル・グッズ。(画像提供:Narumi Otobe©)

彼女には、実はもうひとつの仕事があります。それはご両親の介護。現在、足腰にはほぼ問題がないそうですが、すでにお2人とも80代後半で、乙部さんのヘルプが欠かせません。

買い物、病院への送り迎えと付き添い、食事の用意などはすべて乙部さんの役目。特にお母様は糖尿病を患っておられ、かつては両足の股関節脱臼で歩くことができませんでしたが、手術を受けて現在は杖をついてなら歩行も可能に。しかし長距離の歩行は無理なため、乙部さんが毎日、しっかりと介護役を果たしています。

作品展を訪れたご両親と。お母様を誘導するのは乙部さんの役目。(画像提供:Narumi Otobe©)

おわりに

「おひとりさま」でデザイナーという職業なら稼ぎが良いだろう、という世間の見方とはギャップがあるという乙部さん。老いた両親の世話と自営業をバランスよく両立させるためには、質素を心がけて日々「がんばらずに、どこかでがんばる」ことが大切だとか。

アーティストとして、両親にとって頼りがいのあるヘルパーとして、日々努力している乙部さんに心から拍手を送りたいと思います。

【参考】
「ペアデザインPearDesign(http://www.peardesign.jp/)」(乙部なるみさんのサイト)
「Jardin Nostalgique(http://www.jarnos.jp/)」(展覧会会場および国内取扱店情報)
「Louis Farouk(https://www.louisfarouk.co.uk/)」(英国販売店)

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